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 あの後そろそろ帰ろうという兵長をあたしは振り切り、やけくそで線香花火から始まって打ち上げ花火を打ち上げまくって披露していたら、辺りはすっかり薄暗くなっていた。

「楽しかったです~~!」

「ミナヅキのいた世界って凄いね。あんなのが普通にある世界なんて素敵だ」

 興奮冷めやらぬあたし達だけれどそろそろ帰らないと遅くなりそうだね。

「ミナヅキは花火とやらの魔法の才能に溢れておるのぅ」

「また、兵長はそんな事言ってからかってばっかり……そんな才能こっちはお断りなんですよ!」


「ふぉふぉふぉ……では帰るぞ」

「はぁーい♪」


 何かがふわっと目前を横切る。

「ん? こんな季節に……蛍?」


「ミナヅキ、蛍って何?」



 あたし達の掌にまで光の粒が集まっていた。

「シドさん……これって何ですか?」


「いつの間にこんなに……!?」

「すごい数ですね!」

 辺り一面、小さな光かふよふよしている。立派なイルミネーションみたい。



『……けて』

『……みし……の』


『おかあさ……ん』



「しゃべるの? ん? なぁに?」

 ミナヅキにだけ聞こえる切ない声で呟かれる。

『……おとうさんくるしい!』

 ひゅ!

 はっきり聞こえた声に粟立ち伸ばした指を咄嗟に引き戻す。

「……この声はなんなの?」


「ん? なんの声だ? ミナヅキこっちへ!」


 シドさんは危険からあたしを守るように腕の中に抱き締めてくれて……とてもあたたかい。少し落ち着いた心で目の前に広がる光の粒を見つめる。彼らは口々に何かを呟いている。

『ひかりきれい……』


「これは思いを残して死んだ……かつて人だった者達であろう。この地は、元はパゴラーンという国でな、ここにいる民も動物も全て十年以上前に国王によって無惨に失われておるのだ」



『おかあさ……』


「普段は、光になることもなくどこにいるとも我々では姿を知る事もないが、ミナヅキの先ほど花火の魔力にあてられてこうやって集まって来たのだろう……」

 あたし達に光の粒がすり寄っている。

『おまえは……なにものだ……』


『……わたしたちを……もうゆるして……』


 たどり着いたたくさんの光の粒達に心が震える。これみんなが過去は生きていた人達だとか……。あたしの目に一瞬、幻の様に過去の情景、人々の姿がよぎる。それぞれに命があった。みんな一日一日を生きていたのだ。どんな気持ちで今ここに……で。



『おなかすいた……』


 気がついたらシドさんの袖を強く握りしめていた。

「こっ……この人たちはずっとこのままなのですか?」


『たすてけ……だれか』


「……先ほどの様にこやつらの気を紛らわせることは出来ても、我々ではどうもしてやれないだろう……。ミナヅキよ……わしにもどうもできなんだのだ」

 悔しそうに俯く兵長。こちらからその表情はうがい知ることは出来ない。

「どうにも出来ないならば、このままここで静かに置いておいてやるのがせめてもの情けではないのか?ミナヅキ……帰るのだ」

『もう解放して……』

 兵長は光を見つめ掌を握りしめている。



「そんなのって……放置されたってだれ一人喜ばないじゃないですか!今だってこの人達ちっとも幸せそうじゃないんですよ」

『おねえちゃんだぁれ?』


 あたしは、光の粒を指先で撫でる。色々考えてしまう。

『くすぐったいよぉ』


 目の前に浮遊している光の正体は無くなった国の人で、十年以上漂いつづけている、そんなのあたし見過ごせない……。

「大人も子供も不幸な事故があっていきなり死ぬ事はあっても、亡くなった人達には安らかに眠って欲しいですよ、あたしはこの人達を置いては帰りたくないです!」

「ミナヅキ……」

 抱き締めてくれる手に力が籠る。

「シドさん、あたしちょっと無理するかもしれません」

「何をする気なんだ?ミナヅキ……? 俺はどうしたら!」


 小声で呟くとシドさんの頬にキスした。


「大丈夫……ここで待ってて……。シドさんが側に居てくれたらあたしは多分死なないです。ちゃんと出来たらたくさん誉めて下さい。」


 彼の懐を出て兵長の方に駆け寄る。

「兵長! そんな辛そうな顔して心にも無い事を言う位なら、諦めたフリをして見過ごしてんじゃないですよ! あたし達でなんとかしますよ!?」


「ミナヅキ、それは……」

 兵長は少し目が赤くなってた。あたしもきっとそうだね。

「あたしも、バカ強い兵長も! こんな時の為のチートなんじゃないですかね?」


『あの時みたいに……たすけ……て、おじちゃん……』


 兵長めがけて弱々しく近寄っていく幼い光。

 知り合いなのか兵長が今まで以上に動揺している。

「これはあたしのエゴかもしれないけど、ギリギリでもなんとかでなるのなら目の前の命を見捨てたくありません! 少し力を、貸してください」

「……ミナヅキ……」




 気持ちが決まった……回りをみまわすと光の粒があたしを包みこむ。

「この人たちが迷わないでいいように……一つ一つの光を掬い上げるように……天使みたいに慈愛の心で、皆に癒しと……救済を! 心安らかに眠る為に鎮魂の歌を……! レ ク イ エ ム !」



「ミナヅキ!」


 魔力の光が溢れてあたしの辺りを包むとそれが破けてポロポロ弾けるとあたしの背中に羽根が生えていた。この人達を救いたい! 全てを包み込んで見送ってあげるの! 背中の羽根にガンガン魔力が吸い上げられる気がする。

光が円を描き広がっていく……、倒れそう。

「……いや、まだ駄目まだもう少し……」

 ぞわぞわと、魔力が吸われて意識が朦朧としてくる。心なしか髪の色まで薄くなってきた。

「ミナヅキ俺がなんとか!」


「シドニール、そこにおれ……。元々魔力を受け渡しが出来ないお前では無理というものだ。それにお前にはちゃんと仕事が残っているだろう?わしが手を貸す」

 倒れそうなあたしの肩に大きな手が触れる。兵長の魔力が流れ込んで抜け出ていく……。


「わしは、お前さんが言う様に、きっとこの時の為に無駄に魔力を溜め込んでいたのだろう」


「……皆に、安息を……もう、逝くがいいよ」





 島全体を覆うほどの光の柱が立ち、全てを掬い上げると空へと駆け抜けていく。遥か遠くへと……一人として見失わないように。





チート的能力の持ち主達の魔力ごっそり抜け落ち案件でした。

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