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「マーヤさん、ハレルヤをよろしくお願いします」

「ええ、雛のお世話をすればいいのね。それなら任せて」

『マーヤ! オレ偉い!』

「はいはい、いい子ね」

 マーヤさんに撫でられてご機嫌そうだ。


「……基本何でも食べすぎるので変なものを誤飲しないようにだけ注意よろしくお願いします」

「はぁーい」

『メシー! メシー!』


「いってきます」

 パタン。





「おはようございます! 今日は魔法合宿(といっても兵長の都合がついたのは午後からで日帰り……)の訓練の日ですね♪」

 異世界からの手荷物にあったジャージとスニーカーに身を包んだあたしは何か朝からやる気だった。


「なんでミナヅキはそんなに楽しそうなんだ?」

 シドさんは、合宿にわくわくするイメージないみたいだね。

「えっ、なんとなく?だって部活みたいなイメージでいけそうかなーって……」

「待たせたな」


「兵長、お疲れ様です! 今日はありがとうございます!」

「楽しそうで何よりだのぅ」


「今日のあたしはいつもみたいにふざけたりしないの。そう、真剣よ! あたしは、極めて華麗な魔法を、巻きでぶっぱなしてやる予定なの!」


「ミナヅキ、そういえば、今日はどこに行く予定になってるんだった?」

 あっ……そういえば、目的地を設定してなかった!


「時間もない事だし参るぞ……」

「えっ! どこに?」


 兵長があたしとシドさんの肩に手を置くと頭が揺れ……



「ついたぞ……」



「気持ち悪っ!」

「うっ……」



「……ここは?」

 目をあけるとそこは、人気(ひとけ)の無い、見た事がない海岸だった。


「へー! あたしが見た事がある海岸とは少し違う……カモメとかもいないしカニもいない。全体的に静か過ぎない?」


「兵長……ここは!?」

「ここはエクスペリエの最寄りの誰も近寄らぬ無人島での。ここなら貸し切りみたいなものだから大概の爆音にも人的被害もゼロ、第三者目線で見ると非常に安全なのだよ」



「よいしょっと、わしはここで見学しておるので好きに、どかぼかどっかーんとやらをするといいぞ」

 いつの間にかテーブルセットを取り出して寛く気が満々ですね、あなた?


「マジですか! こんなに広いのにプライベートビーチ状態なんですか!? 凄いです!」

 テンションガンガンあがってきたよぉ! あたしの無駄なやる気と反比例する様にシドさんが真剣そうな顔をしはじめてきた。

「ミナヅキの、そのやる気が俺は少し怖いんだがな。今度はどんなハチャメチャな魔法を創る気なんだ?」


「あー、取り敢えず異世界と言えば、魔法とか派手に兎に角アクション過多なんですよ。イメージでしょうか?」

「なんだか分からないけど俺はミナヅキ自身の派手な魔法から君を守ればいいんだな?」

 シドさんがおかしな事を言い始めた。

「え? 守るのはあたしですってば! これさえあれば守られるばかりじゃなくて、あたしにまかせて! って皆に言えそうじゃないですか!」


「ふう」

 火を扱うから、気を引きしめて。

「では、まず小さいものから……」


 弾ける火薬の事を考える。創造する魔法なんだから、イメージが大事……。

「小さいけれど威力は大きめで……弾ける火花を!」


 パァーーン!


「!! ミナヅキ危ない!」

 怖くて閉じてしまっていた目をうっすら開ける……。

「へっ? ……あれれ?」


 掌を眺める……。何もない。


「もう一回! 弾ける火花を今度はたくさん!」


 すぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ……ん!!

「……うるさっ!」

 何かが弾けて煙りまで周囲に舞っている。

「……ん、これは? おやぁ??」

 あまりの既視感に(あご)に手を添え考える。なんか見たことあるような気がする。


「……爆竹? なんで?」


「取り敢えず何かは弾けたわけね、もう一回!」

 自分と向き合ってみる。一番最初の魔法は爆竹にしかならなかった。違う、そうじゃない……。



「こんなはずでは……」


 砂浜に座り込んでのの字を描きながら次の手をイメージしていく。

「……そんな、お祭りで遊んでいるつもりではないのに……」


 上手く出来ない苛立ちが込み上げてくる。

「もう! もっと火花が飛び散って弾けてきれいなやつよ!」


 指先でビシッと指示を出す!


パチパチパチパチパチパチ……。

「おー。綺麗だ!」

「ふぉふぉふぉ……。これはこれは……」


 ザシュ!

「……手持ち花火やないか……あたしのお馬鹿さんめーー!」


 あまりの酷さに砂浜に八つ当たりしちゃったわ。ちょっと悲しくなってきた。


「……あたし! ちゃんと考えるのよ。物事にはもっとデリケートで繊細な調整が大事なの! 決め細やかな……」



「そう! もっともっと……デリケートで、繊細な! そうあたしのイメージは……ミラクルファイアフラワー!」

 どビシッ!!


 指少し下向きに指示を出すと……


 バチ! バチ! バチ! ……パシュ…ファ! バチ! バチ! ……パシュ……ファ! ファ……




  ……ポチョ。


「ああ! 落ちた! なんて儚い……これは、まるで火の(はな)だ! 素晴らしい!」

 シドさんが感動して立ち上がって拍手してくれている。ううぅ……しかもこんなモノでもしっかり落ちるとか解せない……。



「おー、ミナヅキすごいじゃないか!」


 違う! そうじゃない!!

 ザシュ! ザシュ!


「ふぉふぉふぉ……」


 くそー! 兵長のはわざとにしか見えない……今に見てろ!



 気がついたら夢中になってて、もう空が薄暗くなってきてる。ヤバい、時間が!

「落ち着いて、ちゃんと考えて! イメージするの! 線香花火みたいな玩具(おもちゃ)じゃない! もっと本格的な、火薬が幾重にも爆ぜる感覚で! 弾ける爆炎!」




 ひゅーーーー……ぱぁーん!

「えええ……今度は打ちあがっちゃった~?」


「おおおー!! ミナヅキ今度のはまた、凄いな!」




「違う! そうじゃないよ!! もっともっとスケールが、大きいの! あたしが、欲しいのは高火力なの!」


 ひゅひゅーーーーっ

ドンドンひゅーひゅー……

ぱちぱちぱちぱち……すぱぱぱぱぁーーーん!


 大迫力……。砂浜でそれを貸し切りにして間近でみている。……なんて贅沢な。

「それは控えめにいってスターマインだろー!」


 そうじゃないんだよ!!


 あ、ダメだ……平和ボケした現代人のあたしの頭からは、ろくな火力が、でやしない!



「おおー! 見事なものだのー」

 兵長は、もう、特別観覧席の御客様じゃないか!


「なんて素晴らしい、芸術だ!」

 シドさん泣いてる……。



 もうやだ。


平和ボケしている亨なのです。

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