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「おーい! カニエール君!」

「ふぉふぉふぉ。カニはどこだのー?」

「なんかすいません! 兵長が、あたしに着いてきてくれるなんて」

 カニエール君の事を気が付いた昼過ぎに、ちょうど兵長が帰宅してきたのだけど、それなら是非に! とピクシーたっての希望で兵長がソロで着いてきてくれる事になった。なんて豪華な!


「構わんよ」

 急ぎだったので、あたしの瞬間移動でここまで飛んできたけど、良かったのかな? 兵長はさして驚かずにノーリアクションで当たり前のように着いてきてくれている。初めて瞬間移動に耐える人を見た気がする。

「あの後うっすら雪降ったんですね」


「今年は珍しくいままで以上に冷えるのかもしれんのぅ。ミナヅキは嫁入り前の大事な体、風邪など引かぬようにな」

「よっ嫁入り!? そんな!!」

 ぼん!

「きっ! 今日はあ……あ……暑いです、ねぇ!?」

「ふぉっふぉっふぉっ……」


 カニエール君のアジトの辺りを見に行こうと奥に足を、進める。


「カニエール君、この奥の大木の根元に巣を作ってて、もしかしたらそこで寝てるかもですね」


 あたし達はゆっくり足取りを進めていく。



 いつもより少し奥まで行くと、(くだん)の大木が見えてきた。

「あ、あそこです。あの辺でピクシーにも出会ったんですよ」




 その時、大きな岩と花畑が見えた。周りはうっすらと雪景色なのに、その花畑だけ雪が避けているみたいに、ぽっかり雪が無く、なんなら蝶まで飛んでないか?


「花が……」

 兵長が自然と足をそちらに向けていく。


「ここ、この前も思ったんですが、不思議と青々とした草原だったんで……この前お花植えちゃったんですけど、どうしてここだけ雪がないんでしょうね……?」


 大きな岩の前で岩に向かって兵長が拝むように(ひざまづ)く……。


「へ? それって……」




「ここって、もしかして……」


 あたしは、暫くの景色を見守る。



「この場所は、常に自然現象なぞに隠されないようにしたのだよ。いついかなる時でもわしが妻を見失わないようにと……」

「え……どうやって?」



 兵長は立ち上がると、すぐ近くだけど、あたしの所にやってきてあたしの前にスッと跪くとあたしの手を取る。

「……兵長……?」

「わしは、わしの命に再び灯火を与えてくれた君に、残りの人生をかけて忠誠を誓おう。我レオナルド・バーマンは、君の剣となり、どんな敵からもミナヅキ、君を守ろうぞ」




 ……え? こんな時どうしたらいいんだっけ?

「えっ……? よっよろしくお願いしま……す??」


 え?違うだろっ! ……や……やっちまったー!! 流石にこの雰囲気は冗談で流してはいけないと思っていたのに取り敢えず受け流しちゃう癖が最悪のタイミングで炸裂したよ……! なんなの……この口の馬鹿! あたしのバカぁ! 暫くワナワナ震えていた。

 兵長は、小さく何か呟くとにっこり微笑み立ち上がる。瞬間に光の輪があたし達を通り抜けて消えていった。兵長曰く、さっきのリングは、あたしと兵長の縁のようなものを構築したと……。



「ミナヅキ様……いやいっそのことトオル姫様とでも呼ぼうかの……。困った時にはいつでもこのじいを呼ぶと良い」

「うぎゃ! 勘弁してくださいよぉー!!」

 逆にあたしが秒で土下座してた。

「ふぉふぉふぉ」



「とりあえず……、お茶でも飲みましょう!」


「ん? こんなところでか?」


「もう無理だと思うので兵長には隠しませんが、あたし創造魔法が使えるようなんで、それで……」

 ポケットからいつもの簡素な椅子とテーブルセットを取り出すとお菓子と紅茶を取り出す。

「おお、それは便利だ……」


「最初はリンゴをもっと沢山詰められないかと思ってたらいつの間にか出来るようになってて……えへへ」

 ついでに出したリンゴもテーブルの上に置く。


 椅子に腰掛けてリンゴを眺めていた兵長が不意にリンゴを掌に乗せると、乗っていたリンゴが目の前で消える。

「ふむ、こうか……」

「え?」

 一瞬何の事か分からなくて、カップに注いでいるのを忘れて溢れでる量の紅茶を注ぎながら注目してた!

「兵長?」

「ん? 言ってなかったか?わしも創造魔法を少しばかり使うのじゃよ?」


 その種明かしはどうなの?

「! もしかして、あの時も! 割りと前から瞬間移動も使ってましたよね?」

「そうだのぉ、そんな事もあったような気もするのぅ。ふぉふぉふぉ……」

 この人黙ってたよ、ホント侮れない!


「ふはははは……面白ーい……」



 温かいお茶を飲みながら、あたしはこの前の経緯を一つ一つ話した。ここにきたとき、草原に草しか無かったから花を咲かせた事から順番に。そこから世間話まてずいぶん長い間話してた。


「娘婿の親がのぅ、ピクシーをミヌエットの母だといくら言っても、ひたすらにわしの新しい愛人だ! とか抜かすのだ。酷いと思わんかのぅ?」

「あー、そこのトコは難しい問題ですよね~。一度は死亡で決着してるものですし、まあ本当に知っていて欲しい相手にちゃんと伝わったら、その他には多少誤解して貰ってた方が都合良いこともあるかもしれませんよね? ふふふ」

「ふむふむ……。グランにもその様な事を言われたが、やはりそうなるか。わしゃそんな軽薄な男では無いのだかの」


「……兵長って基本わしが、一人称ですけれど、実はそんなに年取ってないですよね? どうみても三十~四十代のナイスミドルな気がしますけど?」

「これか? ミヌエットが嫁ぎ、イジアンを身籠った時にわしは素敵な"お爺様"にならねばと心に誓ったのだよ」

「え! そこ?」

「何事もまずは形からじゃよ。そもそもわしら魔力の高い者は他より老けるのが遅いであろう? いつまでも若いと己が勘違いしないように(わきま)える為に、気分だけでも年寄りにじゃな……」

「……そうなんですか? 寿命とか知らなかったですが」

「あぁ、基本的過ぎて、まだそこら辺はしらなんだか」


「あたし前に夢でスッゴいお爺さんに会った事があるんですが、あの人ぐらいだと、一体幾つ位だったんだろう。あたしその人に変な術をかけられたみたいな悪夢を見たんですけど」

「あー、それは多分あやつは魔力が弱すぎるんじゃな。(よわい)60をこえてはおった気がするが」

「へ? お知り合い?」

 ……

 あ、向こう向いた!

「……気のせいじゃのぅ。ふぉっふぉっふぉっ……」

「ずるい! そんな時だけ知らんぷりとか!」


「もう! 好好爺(こうこうや)って呼んであげませんよ?」

「ぬぅ、それはわしにとっては極めて大事な称号の一つではないか…なんとかならんのかのぅ。トオル姫よ」

「だーめーでーす。って! あたしは姫じゃあありません! しかも今さりげなくからかってきてるじゃないですか! もぅ!」

「何の事かのぅ、最近随分耳が遠くなっての」

「兵長、口調以外はくっそ若いですから!」

「ふぉふぉふぉ……」




 兵長に聞いたら、この場所はこのまま置いておいて、いつか自分が死ぬときにはここに埋めて貰うつもりなんだって。

 探したけど居なかったカニエール君はさっさと砦に帰っててお布団でぬくぬくしてた。

気分的には必殺技をゲットしたようなものでしょうか。

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