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応接室に通されたあたし達はいかにも作りの良さそうななソファーに腰かける。出されたお茶も茶器からして一流の職人の手仕事だろうか……。生粋の庶民代表のこのあたしはこのハイソなお素敵空間に落ちてた百均グッズ……なんじゃこりゃ?
「もしかしてシドさんって凄いお家のご子息様……とか?」
無駄に肩に力が入っててさっきから肩が凝ってきたんだけど…
「……うーん、凄いと言えば凄いのかもしれないけど、俺自身はただのしがない平の騎士なんだけどな。……そこ! 固くならないの。俺は俺なんだから!」
「はっはいぃー! あたしこそ、ただの平民でごめんなさ~い!」
ついつい、敬礼してしまった。
「ふふ……やだ!その困った顔! シドさんって面白い」
「ぷっははは! ミナヅキこそ変なこと言うの止めて! そもそもミナヅキは国のお客様で、いわゆる国賓と言っても過言ではないんじゃないかな? 十分凄いと思うけどくっ……ふふふ……ツボ入った!」
「! こっ国賓? こんな庶民的な? ふふふっ……」
ふたりでシドさんのお義母様が来るまでクスクスわらってた。楽しい♪
「こほん」
ご婦人の咳払い! いつの間に?
「あ、シドさん!」
「貴女がミナヅキさん? ようこそ我が家へ」
「わたくしはこのシドニールの母親でエマニュエラ・アヴァルトですわ。エマとでも呼んで頂戴ね」
「わっわたくし! 水無月亨と申します! シドさんのお義母様にお会いできてとても嬉しいです!」
「この世界で一人きりになったと聞きました。どうぞわたくしを母と思って下さいね」
「あ、はい! お義母様! エマ義母様ですね! あたしの事もトオルと……呼んで下さい!」
エマ義母様が輝く笑顔で、にこやかに微笑む。
「夫のグランは仕事で昼間はおりませんの。とても残念がっていましたわ」
凄く素敵なお義母様でちょっと安心したけれど、お顔はにこやかなのに、不思議と目だけが笑っていないというか目だけは殺気に満ちているというか……。
うぅ恐い……あたしが怯えているとシドさんが手を握って抱き寄せてくれる。ご好意に甘えて寄り添ってみた。
「奥様、ミナヅキ様が怯えていらっしゃいますよ? 笑うならちゃんと微笑んでくださいませ」
横から聞き覚えのある声が聞こえた!
「あっ。あなたは! 匂い袋をあたしにくださった、猿のお屋敷にお勤めの紳士さん!」
「さる? ……ふふふやっぱりユニークなお嬢様ですね♪」
リンクスさんがにっこり微笑む。
……褒められた??
「あー! その人物はリンクスだったのか。その節はミナヅキが助かったよ。感謝する!」
「なんのなんの。シドニール様の大事な方がお困りでしたので、不肖私めが趣味で製作たものでしたが、お役に立てて光栄でございます」
リンクスさんが、跪く。いきなりの事でかなり恐縮したけれど。
「そうか猿のお屋敷って想像するくらい気になっていたのだけれど、本当はここだったんだね」
「えへへ……みたいですー」
「ふふふ」
「猿のお屋敷が家だったとは! ミナヅキって♪ ふはははは!」
むぅ、何かシドさんのツボに、はいっちゃったみたい。
笑う笑う。
「ん? エマ義母様の指先……光ってる?」
エマ義母様の指から輝く金糸を発見。ずいぶん長い糸だなぁと感心してた。
「ん? トオルはこれが見えるのね? 凄いわ……」
「とてもきれいな金糸のようで……でもどうしてそんなところに……」
「?? おかしなことを言う子ね」
「それならあなた達にもちゃんとあるじゃない」
不思議そうに目で追って見てたら義母さんに自分にもあるじゃないかと指摘される。
「え? うそ!」
「ミナヅキ何の話し?」
ようやくシドさんも参加してきたが、自分の回りを確認すると掌に桜色に輝く糸が結び付いてた! ……これなに? びっくりなんですけど?
これは私のやつ?? はじめて気が付いた……この世界、侮れない!
「この糸は、余程良い目をもっているか、経験をつんだ有資格者にしか見えないらしいわ。わたくしも、これのお陰でここに嫁ぐ事ができたのよ。初めて見付けたときにはビックリしたものよ」
「何があるって?」
シドさんは話しに入ってこれなくて何かを探してキョロキョロしてて可愛いけれど、今はまだ糸は見えていないみたいだね。あとで感覚を共有してみよう。そしたら見えるようになるかもよね?
「これも、人によっては断ち切ることの出来ない呪いだったり嫌がらせの様なものみたいなのだけれど、それを大事に慈しみお互いの絆を深めた者達の元には、何らかの形で豊かな恵みを与えてくれるのです」
エマ義母様は穏やかに話す。
「わたくしの生家は古くから続く家で、血縁者の中には、嫁いで家を出たのにこうやって絆の糸を持つものが希に生まれるのです」
私から繋がる糸を辿っていくとその先にいるシドさん。自然と手を繋ぐと、糸が絡まりあって……なんだか幸せが滲み出てきてるみたいでとても嬉しい気持ちが後から後から出てくる。
「あなた達を見た時には既にしっかり絆が結ばれていて、反対も何も、こうなってはどんな貴女でも受け入れる選択肢しかなかったのだけれど」
すんなり受け入れて貰えた理由はこれなのかー。ほうほう……納得。
「これは一度繋がると死が二人を別つまで決して離される事はなく、先祖の意向とでもいえばいいのか、不実は許されないからそこだけは気を付けてね」
少し心細くなる話題に戸惑っていると、シドさんが抱き寄せた手を更に強くしてくれ、あたしもこの手は離さない。二人でいるととてもあたたかいね。
エマ義母様は我慢しきれずに話し始める。
「こんな仲睦まじい二人にケチ付けようとする愚者がいるというのが信じられない事だわね」
「息子をよろしくね。うちの愚息を選んでくれたトオルを我が家は歓迎いたします」
嫁姑のあれこれを良い感じにあれこれやりたかったのに、ちっともでしたぁヽ(´Д`;)ノ




