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あたしの脱皮後、兵長の許可を得てシドさんと二人で出かける事になった。
「では行くよ? 感覚はまだ慣れないけど多分いける」
「うん、多分大丈夫」
あたしは、シドさんに抱き上げられ大人しく抱きつく。
頭が揺れる……
「うっ……これはいつまでも辛いな」
「うぅ……ここは? あれれ??」
しんとした空間……部屋の中かな? 恐る恐る目をあけると、貴族らしい素晴らしく豪華な部屋に私達はいる。
俗に言うお義母様からのご招待を受けたわけなのだけれども……。なんでも、なるべく早く二人で一度顔を出すように? だったかな? うーん上手くやっていけるのかなぁ……嫁姑とムチュコたん。
通常は、そこに向かうのに数日かかり、こんなすぐにはお伺いできないのだけれど、兵長が仰るに、秘密裏に動くべしとの事でシドさんが最近覚えた瞬間移動で王都のお屋敷まで来てみたのだけれど。
「あ……間違えた! 王都の屋敷の玄関に飛ぼうと思いながら、結果自分の部屋めがけて来てしまったか……すまない」
「えええ!? ここがシドさんのお部屋?」
白を貴重とした品の良い貴賓室? こんなの日本で見たとこない!
「今此方の部屋でなにか物音が?」
メイドさんによってドアが開かれた。
「お坊っちゃま! いつお帰りで!? お出迎えもいたしませんで、申し訳ございません!」
メイドさんがあわてふためいている。
「いやいや、今来たところだから気にしないで。それにマリー、もうそろそろお坊っちゃまはやめてくれと言い続けて、かれこれ三十五回目なのだが……」
「……そうでしたかぁー? お坊っちゃま、マリーちっともわかりませんわぁ……」
「ミナヅキこのマリーは俺の生まれる前からこの屋敷にいるのだ。元は気さくなメイドなんだが、最近なんでも年のせいにしてちっとも都合の悪い話をきいてくれなくなったんだ……」
シドさんは、こちらに向かって思いっきり目の前にいるご本人の、愚痴をはなしてくる。そーゆーのは返事にこまるよね。うん。
「あははは……」
「母上はおいでになるか?」
さっきより小さめにシドさんが呟く。
「はい! すぐに奥様をお呼び致しますね」
颯爽と、ドアを出ていった。
「……ちゃんときこえてるじゃないか。まったくもう!」
ふふふ。好きな人の非日常って萌える♪ どんどんやれー♪
ニコニコ見守っちゃった。
「それでは此方で、お待ちくださいまし」
マリーさんは退室していった。
「……え」
……これは、また凄い異空間。バロック調? ってなにそれ美味しいの? これはあたし、やっちまったかもしれません……。積まれた教科書の山を舐めてました。もう明日から一ミリも笑っていられないかもしれませんよ……。
「あたし、無性に切なくなってきました」
「ん? どうかしたのか? ミナヅキ……また本調子じゃないんだからあまり無理しないようにね」
積まれた書籍の山が仲間になりたそうに此方を見ている気がしてきた……。
「うぅ……無理はこれからあたしの帰宅を待っててくれますよ。きっと(涙)」
現実逃避も忘れてしてしまった……。




