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ちょっとだけ?
「ミナヅキ!」
俺は、ミナヅキの部屋に飛び込んだ!
「あ! シド君」
難しい表情のマーヤの向こうに虚ろな瞳が見開かれ、力無くベッドに横たわる愛しい人が……。
「どうしてこんな!!」
「見つけられた時にはこの状態だったみたいよ」
「見つけた人によると、鍵が壊されていて、窓が開いてて……、ミナヅキちゃん、ベッドから落ちて倒れこんで動かなくなってたのですって」
「お医者様が仰るには、外傷はないけれど、呪術的な何かが施された痕跡が見られるのですって」
「……そんな……!」
ぎゅっと握られた掌を引き寄せると、その手に爪が食いこんでシーツまで血で滲んでいる。余程怖かったのだろう、そんな時俺は側に居てやれなかった……
慎重に、丁寧にその指を解いていく。
「あぁ! 有り難う。可哀想に、さっきまでいくらやっても指が解けなかったの」
俺は彼女の手を取り寄り側に添っていることしか出来ない自分の無力さが許せないでいた。
「ミナヅキ……」
丸一日経ってもミナヅキに変化は見られない。
「ミナヅキ、ほら見てごらん。こんなに月が綺麗だ。けど、少し欠けて来てるな」
ベッドに腰掛け、ミナヅキを抱き寄せて起こし、月を見ている。首に力も入っていないので呼吸に気を付けて慎重に……。
虚ろな瞳には何も写らず、反応もない。生体反応は見られるが、此方の問いかけにはピクリともしない。
「この前一緒に見た月は本当に真ん丸で美しかったな。俺、ミナヅキに会いたくて、君のところに飛んで行きたくて必死だったんだ」
「君に呼んで貰う形になったけど、目の前にミナヅキが居た時には俺、自然と抱きしめてて、あの後、ジェネッタ先輩に連れていかれて、ホントひどい目にあったんだ。ははは……」
寄り添い優しく髪を撫でる。
「少し冷えたな。ミナヅキ」
ベッドに寝かせると今度は横向きに、寝かせてみた。マーヤ曰く、今の彼女は無意識にもピクリとも動けないから、時折こうやって横に向けたりしてやるといいらしい。昼間はマーヤとジェネッタ先輩が交代で面倒みてくれてるようだ。
「明日は、俺もミナヅキの髪に櫛を通してみようか……」




