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最近、あたしは皆の稽古に混ざって朝から軽く体を動かしてた。秋の穏やかな日差しがとても気持ちいい日だった。
「ミナヅキちゃん、頑張って~」
「あ! マーヤさん!」
頭上からよく知る声が応援してくれてた。笑顔でぶんぶん手をふるあたし。
「はぁーい♪」
あたしの視界に見えてるのは二階部分にマーヤさん、その上の階のバルコニーから兵長さん。
「兵長さんも、おーい♪」
にっこりしてくれた。今日は秋晴れで天気もばっちり。こんな平和な日がずっと続くといいのに♪
この砦も中々の年代物で所々ひび割れてて、その都度改修しながらも、外側の全体的な修繕の計画も立っているらしい。後は予算的な問題? 難しいよね、そーゆーの。
「ミナヅキちゃーん!」
「あ、シドさん達もやってきた」
勤務の関係で後から参加する人たちが来た!
「おーい! 皆こっちですよー♪」
マーヤさんがベランダの手摺を掃除中に体を乗り出していた時…
パキパキ……!
「え? 何?」
怪しい異音が耳に届いた瞬間、経年劣化で老朽化していた二階のベランダ部分が崩れ落ちる。彼らの上にレンガや石垣が降りかかっていた。
瓦礫の下にシドさん達を下敷きにして……
「きゃ!」
ドカ!
「うわ!!」
ガラガラ……
「ぎゃっ!」
突然の事で呆然と見守ってしまった。今は土埃で前が見えない!
「みんな! 大丈夫か!!」
「けほっ、けほっ!!」
土埃が晴れたそこには、マーヤさんをお姫様抱っこした兵長があたしの目前にいた。
「え?」
「おい! 皆助けろ!」
「持ち上げるぞ!!」
場は騒然としていて、兵長とマーヤさんの事に誰も気付かない。
「あ、ありがとうございますバーマン様!」
「なぁに、レディを護るのは騎士の務めだよ、マーヤ。ははは。」
ストンと、マーヤさんを前に下ろすと兵長は、瓦礫の方へ向かっていく。
「あ! 兵長!!」
兵長が現れた瞬間騎士達がざざざっと退いていく
「みんな引け! 兵長だ!」
剣に手を添え、構えて……抜刀した直後、兵長の後ろ姿がブレたのは確認できたが、次の瞬間にはこちらを振り向き、にこやかに剣を鞘に納めていた。
「………」
早過ぎて何が起こったのか全部は目で追えなかった。まるでおじいちゃんの動きみたいだった!
「よし! お前ら、掘り起こせ~!」
さっきまで瓦礫だったり大きな板だったものがみんな極微小サイズのそれに変わってた。
ほえーっ、兵長さんって、おじいちゃんみたいなとんでも超人さんだったんだね。たまげたもんだ!
でもあの時、あたしマーヤさんに声をかけられたからしっかり覚えていたのだけれど、兵長さん、三階のバルコニーから中庭の様子をのほほんと眺めていたはず……。
なのに、気がつくと落ちたはずのマーヤさんを、兵長がなに食わぬ顔でお姫様抱っこをして事なきを得るとか、ありえるの? 確かに兵長は三階だったじゃない??これはどういうこと??
「えっえっ? あーうー、……ありえなくも……? 無いけれど……」
考え込む。
一瞬、兵長も実は自分と同じく瞬間移動が出来るのでは?? と疑い始め、ついじーと見たら目が合った。
「ん……何かあったか?」
「なっなんでもないです……」
まるで瞬間移動してるみたいって言おうと思ったけどそれは聞けなかった。
「ミナヅキ、わしは人よりちょっとばかり早く動けるだけなのだよ。ははは」
何も言ってないのに考えていることを読まれた! 兵長何者?!
「そうなんだ! そんな早さで動けるなんて兵長さん凄いですね……」
と、一応は口に出して尊敬してみるが、あたしの胸には未だ、モヤモヤするものが燻り続けてる。
確認する術も無く、あたしはただ兵長の背中を見送った。
下敷きになった人達は皆軽傷で、運悪くあの何とかという同僚の人だけが足を骨折してたみたいだった。
ギィ……
「あ! じじ!」
愛らしい幼女が大好きなおじいちゃんの姿に喜び駆け寄る。
「おお、イジアン! 今日も良い子にしておったか? ……ははは……」
「まあ、お父様! 昨日もいらっしゃったのに……!」
「なぁに、ミヌエットよ、わしは、イジアンに、会う為ならば、何時でもどこからでも飛んでくるのだぞー♪ かわいいのぅ! わしの孫は世界一だのぅ!」
「イジアンもじじが、いっちばぁーん♪」
「おぉーそうか! そうか! かわいいのぅ!」
孫大好き、じじの包容祭り好評開催中!
動きもアホ程早いが、バーマン兵長、瞬間移動を会得している。昨今の使い道は、愛しの孫への直通専用に使われているのだ。あっぱれ好好爺。
先行して投稿しておきますた♪
引き続きストックをせっせと作りまふ
まったりのんびりいきます( `・ω・´)ノ




