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「うぅ……気持ち悪い」

 今夜はいつにも増して飲み過ぎた……し、打撲、擦り傷、ジェネッタ先輩のパンチの痕にはご丁寧に、彼女のつけてた指輪の乙女チックなハートの痕……これはひどい……

 酒と土埃と木片とガラスまで、そこら辺擦り傷だらけじゃないか……。多めに弁償したけれど、店の店主には冷ややかな目で見られるし。



「はあ……」

 ベンチに腰掛けて、頭を抱える。

 今夜は最悪だ。自分でも無自覚で見えないように蓋をして押し込めていたいやらしい自分を、あんな形で第三者にさらけ出さされて、碌に言い返す事もできなかった情けない俺……。

「くそっ!」

 ……一体、何を言い返すというのだ俺。あの人の言っていたことは的を得ていた。的確に杭のように刺さって抜けていない。


 胸が痛い。ズキズキする……

 見た目も何も…汚れに汚れて、そのまま部屋の中にはいるのも憚られた為に、砦の入り口付近に設置された井戸でとりあえずはこれを何とかしないと………。

 脱力感でベンチに腰かけたまま月を見上げて動けないでいる。

「ははは……、こんな姿見たら誰でも幻滅するだろう……」



 何もかもが嫌だ。

 そうだ、いっそのこと遠くにいくか……あの澄んだ瞳を汚してしまう前に……とうとう現実逃避まで始めてしまっているとか、俺はなんなんだ!



「カニエール君! もう夜中なのに、こんな所に出てきたら危ないよー……」


 この声は、俺の心臓がまるで早鐘のように警鐘(けいしょう)を鳴らし続ける。……ダメだ! 今こんな所に? 頼むから……こんな俺に気付かないで!


 大の大人が消えてしまいたくて、まるでイタズラが見つかるのを恐れて震える子供の様に………

「そんな悪い子は、おーしおきですよぉ……え、怪我? ……してる!」


「やだ!!」


 ミナヅキが駆け寄ってくる。



 最悪だ……。


 硬く目を瞑り、羞恥に震える……こんな自分、消えてしまいたい!


 柔らかい布で傷が拭われ、心配そうにミナヅキが俺の事を伺っている。

「……とりあえず血とか汚れを落としますね……」

「ミナヅキ……」

 俺の目の前に、無防備に背中を向け、桶に水を注いでいてくれるミナヅキ。俺の事を心配してくれる華奢な背中……。

 そんな背中すらも(たま)らなく魅力的なんだ。俺はきっと、とんでもなくいかがわしい目を今彼女に向けているんだろうな。

 あぁ……もうダメだ……このまま側に居続けては、いけないのかも知れないと思い至る……。胸が酷く締め付けられて息が出来ない。

 苦しい。


「大丈夫ですか、シドさん……?」

「くはっ!」

「ちょっと! 何か錯乱してる? 発作? とっとにかく落ち着いて! いい子だから! シドさん!」


 叫びそうな俺をそのままぎゅっと包み込むミナヅキ……。壊れ物を扱うように胸に抱き、愛おしむように背中をさする。


「いい子、いい子、ほ~~ら……ゆっくり息を吸って……」

 ハンカチは足元に落ちてしまっている。

 俺はいつの間にか、ミナヅキにすがり付いていた。

「こんなに震えて……」

「ミナヅキ……頼むから俺の前から居なくならないでくれ……お願いだ……」

 どこまでも優しい愛しいこの(ひと)に包まれていたい……。




「あたし、シドさんの背中大好きです。大きくて、あたたかくて。いつもいつも甘えてばかりで頼りないあたしだけど、こんな自分にも出来ることがあるんだって気がついたんですよ」

 俺の背中をさすりながらミナヅキは続ける。

「知らない世界に一人きりだったあたしを、ここまで見捨てないで居てくれたシドさん。あたし、頼りないかもしれないけれど、こんなに必要としてくれる貴方のこの掌……」

 薄汚れた俺の掌を愛おしそうに頬擦りし口付ける。

「あたし、一人の女としてこの手を取って、シドさん、貴方の事を……、貴方の心を守りたい………大好き……」


 この上なく可愛らしく微笑む。愛おしい人が、目の前で俺に好きだといい、恥じらって俯いている。



「あっ新しいタオルをとってこなきゃだ……」


 咄嗟に体を離し離れていこうとするその手を俺は捕まえて引き寄せる。

 抱き寄せて、赤く染まった彼女の頬を俺の武骨な掌で撫で……、その小さな愛しい唇に求める様に執拗に口付ける。




「ん! ふっ……」

 息が出来ずにミナヅキが体をずらして唇を外す。

「かはっ……」

 苦しそうにするミナヅキを気遣う余裕もなく、彼女の胸元に抱きつき、すがり付くように言葉を絞り出す……


「ミナヅキ愛している……もう離したくない……!」



 ミナヅキはそのまま変わらず抱き締めてくれた。

 あたたかい。

 愛に包まれているような感覚に、俺は意識を手放し暗転してしまった……





「えっ? シドさん? ……寝ちゃった?」


「ど、ど、どーしよう!」

 結局俺はそのまま落ちてしまい、通りすがりの兵長とマーヤが驚いて抱えていってくれたそうだ。



 恥ずかしくて死にたい。



この表現は、アウト?セーフ?

チョット (´ε`;)ゞ ワカンナイヤー

ちょっとキスしてるだけの話に表現をプラスしたらいよいよあやしく見えて来たんです。疲れているのかもしれません。お休みなさいまし。

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