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凡庸な己と比べるべくもなく尊いものに、本来持つべきではない想いを抱いてしまった事への後悔の念に苛まれている自分。自分の中で、とめどないない恥ずべき邪な想いをいつかその少女に俺という下衆な輩の本性までが、あっという間に見透かされてしまうのではないか、軽蔑され、その春の木漏れ日の様な微笑みを自ら遠ざけさせてしまうかもしれないという恐怖が俺を臆病にする。やるせない心を誤魔化すように俺は酒を一気に呷ると……
ゴン!
「ぐほっ!!」
酒の入ったグラスを思いっきり呷っている最中に後頭部への一撃……で机に激突。衝撃で変なところに酒が入った。
苦しい……。
「……」
チラッと見ると、酒瓶片手にジェネッタ先輩が追撃を狙って構えてる。
「ちょっとアンタさっきまで苦虫を噛み潰したような顔してたけど、また、つまんない事を考えてたんじゃないの?」
ギクッ!
「止めときなさいよ、今時そんなのウケないわよ?」
「痛いっす……」
今日の先輩は絡み酒か……。後頭部をさすりながら座り直す。考え事くらいさせて欲しいものだ。
たまには外で気晴らしに……という気分にも、ここ最近はなれないでいたが、先輩に誘われて断るのも悪いので酒場に来ている。
いつもならこの時間はミナヅキの部屋で談笑でもしているだろうか……。
「先輩、俺……」
「なによ、新人」
「この頃、ミナヅキの、無邪気な振る舞いに、俺、本当に心をかき乱されまくってしまって」
先輩はなにも言わずに聞いていてくれている。
「彼女の前では何故か上手く繕うことが出来ないんです。最近では彼女の前では情けない姿ばかり見せてしまってて、自分が許せなくて……」
異世界から来た少女。この世界に生きるものでは、思いつきもしない考え方で、驚くほどの才能をみせる水無月亨。危なげな亨を見ていると、放っておけなくなってしまう魅力的な人だ。
「めんどくさい男ねーー」
「思ったより自分の背中に居心地の良さを感じたのか懐かれすぎて嬉しいような困るような……。でも、それを満更でもない自分もいて……」
「稀に、彼女自ら俺の事をわざと煽っているような気までしてしまって」
話していて、羞恥を感じてしまい、耐えられなくて頭を抱えてしまう。
「俺自身もう……、勢いでどうにかしてしまいそうで、どうしたらいいのかわからないんです……」
聞いていた先輩が、それまで堪えていた思いをあっけらかんと言いはなった。
「それで? バカップルがなにふざけた事いってんの?」
!!
ミナヅキとは意味合いが全く違うが確実に煽られている……。
「そもそもアンタ、ミナヅキが好きなら好きって、もう言ってやればいいんじゃない?」
この人は何を言っているんだ!
「違う!! ミナヅキは守るべき存在なのだ、恋とか愛とか、そんなふしだらな目で見ていいものではないのだぞ!」
怒りで立ち上がりかけた俺の胸ぐらを先輩の腕が渾身の力で捕まえる。一触即発の睨み合いが数秒続いた後……、後ろに思いっきり突飛ばされる。
ガシャーン!!
「……」
騎士同士のいざこざなんてとんでもない面倒事に、それまでの賑わいが嘘の様に場が凍る。激しく叩きつけられ俺は立ち上がれずにいた。
「バァーカ! オマエ、思いっきり矛盾してるだろうが! さっき、勢いでどうにかしてしまいそうっていってなかったか!?」
「っ!!」
分かっているのにちっとも分かってなかった俺自身の隠せてない気持ちを先輩は的確にぶち抜いてくる……。
「ちゃんとミナヅキを女としてみてるんじゃないのか? バッカじゃないの!? 殴るよ?」
ドカッ!
そんな事いいつつ殴るんだな。この人は……。
「アンタ中ではもう、とっくに答えが出ているのに、何今更それを置き去りにして迷子になってんのよ。めんどくさい……」
「……それは」
無意識に気持ちに蓋をして見ないように隠し続けていた秘め事をいとも簡単に言い当てられて俺は、みっともなく、さもしい顔をしている事だろう。
「アンタがこのまま燻ってたらミナヅキにも愛想つかされちゃうわよ?」
そんな事があるわけ……くそ! 否定できない!!
「ミナヅキがアンタ以外のヤツの背中がいいって言い始めたらたら、どうするつもりなのよ?」
「なっ!」
ミナヅキが他の男の背中に飛び付き可愛らしくソイツに微笑みかける……ミナヅキが、他の……そんな……
「そんなのだめだ! 許さない!」
は!!
「ほんと、我が儘でイライラする男だね!!」
「それが嫌ならしっかり捕まえておけばいいじゃないの!」
「立ち直るまでその湿気たツラ……アタシに見せるんじゃないわよ!?」
「帰る……」
激しくドアを開け放ってジェネッタ先輩は居なくなった。
難しい事を考えると顔まで難しそうになるお兄さんさんなのです。色々めんどくさいキャラになりますた( *´艸`)
書いてて楽しいです。




