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 砂浜は歩きにくいったらない。ヤシの木? みたいな木の木陰にとりあえずスポーツバックを置いてその横に腰かける。


「まずどこから整理しようか」



「そもそもさ、さっきまで夕方だったよね? 部活終わりだったし! でもって、明日から夏休みだった!」


「……今は暑くないけど……ね」

 段々声が小さくなってしまう。


 キョロキョロ


 幼なじみの花菜は……いない。しかもなんで砂浜?


 色々整理してみる。

「海水浴にでもきてたんだっけ?」


「実はドッキリでしたー!! てわけでもないよね??」


 キョロキョロ

「そもそも花菜は??」


「……いっそのこと2人で宇宙人にさらわれちゃっいましたー! ってする??」

 足で砂を蹴ってみる。

「んなわけないよねー!」




 なんとなく波間まで裸足で歩き、勢いに任せてその場で地団駄を踏んでみる。

 すっごいストレス!


「うわーーーー!!」

 バシャ! バシャ! バシャ!



「……冷たっ」


 本当は分かっているのに分からない。ただ状況が飲み込めなくて誰かに答えを聞きたくて泣けてきた。


 ここはどこなの。



 ほんと勘弁してよ。






 ざざざーーーーん


 花菜……どこ


 両手の掌をじっとながめ、スポーツバックを引き寄せ、とりあえず木陰でうずくまる。ため息もでるよ。





 ぐーー


 お腹すいた。


「おかあさんごはん……」



 ざざざーーーん


 カバンの中には筆記用具、夏休みの心得のプリント1部、夏の友という名の敵、タオル2枚、軽い着替え数着、水筒、部活終わりにいただいた部長お手製の焼き菓子と財布。

 部長のお手製クッキー。うん美味しそう。


 さくさく ホロホロ

「うま!!」


 見た目インテリなのに女子力高めの部長(非おネエなのだと本人は言う)に感謝。

 こんなに涙を流しながらクッキーを噛み締めたのは、後にも先にも人生で、一回だけなんじゃないか?と思う。


 その日はスポーツバックを抱えて木陰で休んだ。




「んー。ここどこなんだろ」





 夜が明ける。

 ここは、知らない天井……というか、まったくもって知らない空。眠い目をこすりながら空を眺めていると見たことないフォルムの大昔の鳥? が羽ばたいていく。あんなの歴史博物館かなにかでしか見たこと無いわ。

 目が覚めても実は夢でした! とはならず、かわらずどこだか分からないのどかな海岸に、何かから取り残された女子高生がひとりとか。



 あまりの空腹に素手で魚を狙うもあえなく失敗。


「もー! 今朝は塩焼きって気分だったのにぃ!」

 届きそうで届くわけない距離を悠々ぴちぴちと跳ねまくる美味しそうなお魚たちに心底むかついた。

「ガッテム!! あいつら絶対、私をからかってるよね」

 イライラむきー!


 足元を見る


「ん? カニ!!? やだなに! 美味しそう!!」

(条件反射的思考)




 バトルスタート!!


 ファイト!



 亨の攻撃。


 先手必勝、飛び付く攻撃!

「うりゃーーーー!!」

 ざざざ!!

「あう!」

 こけた。

 カニは素早く横移動でニヤリ。



「ぐぬぬぬぅ、生意気な」

 懲りずに飛び付く攻撃!!

 カニは素早く反対側に横移動。

「ぬぁー! こんの! カニぐぁー!!」


 小一時間



 のどかな海岸。そこには、制服も所々切り刻まれて砂まみれで肩で息をするボロボロなあたしと、ここぞとばかりにポーズをとった光輝く甲羅とハサミがキュートなカニ? あろうことか奴には若干どころかどこか余裕さえうかがえる。



 ぜぇぜぇ、はぁはぁはぁ


「もう無理ーーーー!」


 動けないくらい疲れ果てて、ぜーぜーいいながら、改めて眺めて見てると今度は目の前にカニ寄ってくる。が……、

「へっ? 七色??」



 もしかして……




 もしかしてぇ??




「これは新種??」




「うん。でもどこまでいっても美味しそう!」


 その後、逃げないようにカニに、食べないから! と土下座して何とか説得(おねがい)して紐をくくりつけさせていただく。


 ひょいと紐ごと持ち上げて眺めてみる。

 ぶら下がっているカニと、目が合う。

「うふふふ」

 にっこり


 カニから目線を外し極々小声で。

「うーん、このカニどうやって食べよう。焼く? 煮る? それとも」


 ごくり。

「生?」

 瞬時にカニの目とハサミがこっちに向いてキランと光る。

「やだぁ、さっきも言ったけどあなたの事は食べないわ♪ そんな目で見ないで。うんうん」


 軽く凄まれたけど、なんとか誤魔化せた。むふふーん。やっぱり美味しそう!



「そもそも火ってどうやって起こすんだっけ??」


 そこら辺から木片を集めてきたがどうやって火を付けるのかがさっぱり分からない。そもそもこれまでアウトドアをする機会がちっともなかったし。マッチ?ライター? 虫眼鏡??

「動画サイトではどうやってたっけ? うーん、ネコチュールのサバイバルチャンネル、もっとよく見ておけばよかったー!」


 見てたらカニは自由に動く、動く、動く。さすが野生。


 じたばたじたばた



 愛らしいポーズ! カニと目が合う。


「キミ、かわいかったんだね!」


 何かして遊んでる。可愛い。




「よぉーし! 今日から君はカニエール君!」


 ででーん!


 カニ、そこはかとなく流し目で自慢気に決めポーズ!




「あーーーー!!」

 やばい! 落ち込む!


「名前つけちゃったじゃない!!」

 やーーーーーーん!

「もうたべられない!! (涙)カニエール君! あんたって子は! ホントなんなの!」

 感情のままにカニエール君をハグする。

「魅力的でなんて悪い子なの!」

 圧倒的魅力をもってカニの勝利。


 でででーん!



 ぐーーーー。

 治まらない欲求と、とどまることを知らない可愛さの狭間で半ば自暴自棄になりながら体育座りでカニと戯る。

「……あははは。こいつめぇ」

 ぐぅーーーー。


 カニエール君はこっちの気もしらないでハサミを駆使して何かを取って食べている。


「カニエール君……あんたは美味しそう……じゃなかった!! 楽しそうでいいね」

 涙で前がみえない。


「カニエール君、私の分のご飯も見つけてきて。なに? 嫌なの? 贅沢な」


「自分でなんとかしろ?」


「だからむーりー」


 きゃあきゃあ♪

 ふふふ







「あの子供? ……お探しの異世界の迷い人……ですかね?」



「えらく楽しそう……だな?」


 はるか後方から眺める人影。

 


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