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近くの村にモンスターが出るらしいと報告が届けられた。その前にもその更に向こうの村から報告が届いていたが、被害が微々たる物だけなので、動くに動けなかったのだ。
共通しているのは夜中に、現れたそれが町や村の中を物色しては畑や池を少しだけ荒らして朝には消える……。余程逃げ足が早いのか、その姿を見た者は未だいないと。
従来、モンスター達は村の中までは入ってこない。それでもしも大きな被害でも出ようものなら、すぐに討伐隊が、編成され、彼らは執拗に、どこまでも追いかけて此方を害しようとする脅威そのものを蹴散らし殲滅しようとしてくるのだから当然と言えば当然なのたが……。
奴らもさすがに何世代もかけて学習したのだ。ところが、今回のそれが、日毎に移動し、まるでこちらの方を伺っている様に、次第に距離を詰め、じりじりと、それでいて確実に、にじりよってくる様だ。
そのモンスターの目的は依然謎なのだが、そのうち人的被害もあるのでは?何かされてはたまったものではない! と、恐怖はつのり住民たちは、姿の見えないモンスターを恐れ、怯えはじめている。夜になると戸締まりを厳重にし、親は子を、夫は妻を決して離さず震えて暮らしている。
さすがにこのままにしておく事も出来ず、この度新人だけで編成された先発隊が様子を見に行く事になったのだ。
「えーー、ミナヅキちゃんいかないのー? 俺ショックなんだけど」
「当たり前だろうが! 彼女は我が国が責任を持って保護するべき人なのだ。当然だ、この国の兵でもなければ騎士でもないのだ。いい加減にしないかディモニー」
馬にのり南に向かって走る。
「そう言えばシドって、最近ミナヅキちゃんと仲いいけど二人って、もうそーゆー間柄になっちゃったの?」
「ぶはっ!!」
「図星かー、ちえーっ先越されちゃったのかー。で、彼女どうだった?」
下半身の意志が体を動かしていると噂される根っからの女好きディモニーが、体全体をこちらに向けて目をこれでもかとかっぴらいて、今一番聞かれたくない問題に、一石を投じてきた。
「そんなわけあるか! お前と一緒にするな! そもそも前をむいて馬に乗れ!」
「え? お前達まだそんななの? じゃあ俺にもまだチャンスはあるのか? わぁー! やる気出てきたぁーー!! ミナヅキちゃーん!」
「呼ぶな穢らわしい! お前にだけは渡さんわ!」
「えー! 彼女でもないんだろ? 俺が立候補してもいいって事じゃん!」
そんな事、天地がひっくり返ってもさせるわけには行かない!
「だいたいシドは、ミナヅキちゃんの事ちゃんと好きなの? 嫌いなの? どっちなのさ!」
「……その減らず口を閉じないか! そして前を向け!」
「実際どうなの?」
「……きっ嫌いでは……なぃ……もう黙れ愚か者がぁ!!」
今が夕方で良かった。夕焼けの色が、俺の色々を分かりにくくしてくれて……いると……思いたい!
「むふぅー♪ 聞こえなーい!」
どこかに面白味を感じたのか調子に乗ってどんどん質問してくる。この場所にミナヅキが居ないのだけは幸いだ。こんな姿、彼女にだけは見せてたまるか。
川を越えたら小さな村が見えてきた。
「あ、そろそろ報告の来てた村じゃね?」
「カルトン村……、確かにここだな」
夕暮れも過ぎて村に帳が降りる。さすがにもう村は静まり返りひとっこひとり外にいる気配もない。
余程、姿を見せないモンスターを恐れているのだろうな。
「二手に別れて探すか。俺は村の奥側を探すから、ディモニーはこの辺から川の所までを見回ってくれ」
「了解。ちゃちゃっと済ませてこの村で運命の人を探さなきゃだな!」
剣を抜刀する素振りをみせつつ口を開く。
「怪我したくなければその減らず口は閉じて行け!」
「はーい♪ モンスター探しからお嫁さん探しまで、俺ちゃんにお任せ~♪」
舌をわざとらしくみせたふざけた敬礼をしつつ走って逃げた……。
「アイツいつか痛い目みればいいのに……」
村の奥は畑が広がっていた。
「中々広いな」
この地域で育てられていた麦だろうか、刈り取られた穀物の畑が一面に広がっている。先日収穫祭も終わり、今は畑に目立つ植物はなく、住民の食べる分だけを育てるだけの雑多な畑が所々に見受けられるくらいだ。辺りを見渡すが風の音がするだけだ。取り立てて怪しいものも見当たらない。
探し歩くがお目当てのモノは今夜は出ないのか……。集落の家の間を注意深く観察しながら歩く。一瞬何かが輝いたような気がしたが、外を気にした村人がランプを片手に外を伺ってでもいるのだろう。
村の真ん中辺りでディモニーと落ち合うことができた。
「怪しいなにかはいたか?」
「それがさー、ちっともなんだ。しかもちょっと変なんだぜこの村?」
「なにがだ、なにかあったのか?」
村自体に予期せぬ何かが起こったのか?!
「普段ならお風呂上がりに女物の下着位干してあっても悪くないのに一枚もなかったんだ! 最悪だろ?」
剣を抜かず鞘ごと振り抜く!
「ふん!」
「うぎゃ!」
「真面目に聞いた俺がバカだった!」
「じ……じ……人生にはユーモアも大事なんだぞ?」
「まだ言うか!」
「せんせーい! シド君が固くて痛いですぅー!!」
「しっ!」
「どこかで子猫の泣く声が聞こえたような?」
にゃー……にゃー
「なんだ本物のネコじゃーん。つまんね」
ドカ!
とりあえず一発食らわせて黙らせて鳴き声の方に進む。
ふしゃーーーー!
「えらく興奮してるな」
井戸の縁に茶トラの子猫が立って興奮してふんぞり返っていた。
「なんだ、ただの子猫か……」
「危ないぞ。落ちたらどうするんだ?」
子猫を持ち上げる。
にゃーん
首にリボンが結んである。飼い猫だな。ほかには……。
「ディモニー。持ってろ」
「へ?」
子猫をディモニーに渡す。
「良かったな。そいつメスだぞ」
「えー。メスでも猫じゃん!」
「言っておくが、子猫は襲うなよ」
「凄い失礼なやつだなー! まあいい。いくら俺でも子猫はストライクゾーンには入ってないさ!」
不満げなディモニーは放置する。
「俺としては、コイツの飼い主が素敵な未亡人だと信じているんだ! そう考えるとこの子猫相手ですら萌えるな♪」
「五月蝿い、変態」
井戸の中か…覗き込むも今は夜。
「暗くて見えないな……ライト」
生活魔法の1つであるライトで手元を照らす。
「……いた」
「へ? いた? なにがなんだ……?」
それは、子猫に追い詰められて井戸の中に逃げ込んでいた。
「この騒動の犯人はコイツかー」
井戸の底から出てきたのは、月に照らされ七色に輝くレアモンスターしおまねき。ご丁寧に紐も付けっぱなしになっている。
「これが謎のモンスターなのか。でもなんでこんなところに?」
「……ミナヅキのしおまねきだ」
海辺や水辺にごく稀にみられる生物で七色に輝く甲羅とその身の旨さ、そして倒すと得られる経験値の高さが有名でやたら逃げ足が早いが、乱獲され過ぎて今ではほとんど目にする機会がなくなったヤツだ。
「もしかしてミナヅキの魔力を嗅ぎ付けてここまで来たのか? あの時連れてくれば良かったか……」
しおまねきはハサミをフリフリするだけで答えはしない。
これ以降、モンスターの被害はパタリと止むことになる。
書いててちょっと楽しくなってきました。
読んでくれてありがとうございます。
゜+(人・∀・*)+。♪




