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 二手に分かれるとミナヅキは荒事が起こり、ワイバーンの目線がその輪の中でもドラゴンに比べたら最弱なリンクスに釘付けになるのを待ってその後ろを悠々と抜けていく。



「ここかな?」

 空洞の片隅に一掃どす黒い闇を感じ取ったミナヅキは恐る恐るそこに踏み込むと無造作に積まれたがらくたを崩していく。

 半分位避けた時、その中で触れてはいけないだろうモノを発見した。


「何これ……」


 おどろおどろしい気配を放つ人形の足。

 見つけたそれを土塊(つちくれ)の中から掘り出したのに、ほつれも泥も染みも付いていない。まるで新品のハンドメイドのドール。

 ただひとつ言うとすると、満面の笑みのドールの胸元が鋭利なナイフで突き刺されている事位かな?

「うわぁ……なんだか気持ち悪い、誰よこんなの持ち込んだのは?」


 その人形を中心としていづこから()き出る妖しい負の魔力が(したた)ると落ち波紋が揺れる……。

「もしかしなくても、これが良くない事の元凶なんじゃない?」


「ちょっと怖いけど、これをなんとかしないとだわ」

 恐る恐る触ってみようかと手を差し出した時、後ろから呼び止められた。

「ミナヅキ、ストップ!」


 後ろからリンクス達が飛び込んで来た。


「あ、お疲れ様! ゴミ屋敷の主もキター♪ これなに~?」


『うぎゃぁ! そのガラクタは何なのじゃ……妾はそんなもの溜め込んでおらんぞ。失礼な……』

 自宅の荒れ具合を指摘されてその変わり果てた様にキレたが後は落ち込む一方の家主。

「これはこの人形に、この地域の不幸をリアルタイムで溜め込んで自作自演でどす黒くなっているのですから直に触るのは禁止です」

 お触り禁止。そう言われると触りたくなるのが常なのだけども、こればっかりは触りたくないらしいミナヅキ眺めていたらリンクスが手袋を付けて腰の収納袋から一枚の布を取り出す。

「これは、遥か昔に冒険者時代の報酬としていただいたものなのですが、その方が聖女様から下げ渡されたものなのですけどコレ使えそうですね?」

「えーっ聖女様ってあの?」

 嫌な記憶を思い出してかミナヅキが思いっきり渋い顔をしている。


「ミナヅキはそんな目で見ないの。後半はあんなでも、彼女は元はちゃんとした力のある聖女様だったんですから、そもそもこんな時に使わないでいつ使うって言うんですかね」

 無駄口をききながらもいつの間にか人形をその布でつつんだ、不思議なものでそれを包むと結界が薄まって消えてしまった。


「さあ、これで一旦はいいでしょう」

『そんな穢れたものは何処かに捨てて来るといいぞ。うちは断じて引きとらぬからな!』

 家主のブルードラゴンはおこである。

「結界は無くなったみたいだな。ここに入りたくても入れないワイバーン達を狩っておいたが、ミナヅキは無事だったか?」


「ドラゴンよ、子供を返すぞ!」

 育児担当のシドが卵を抱えて合流してきた。


 シドの姿を確認したが早いかミナヅキがそっちに飛び込んで行く。その頬や衣服には返り血が付いている所を見ると閉め出されていたワイバーンが来ていた様だ。

「シドさん!大丈夫でしたか!?」

「ああ、あれぐらい数のワイバーンなら平気だ」

 穏やかに微笑むシドの返り血を順にハンカチで拭って行くと、掌に甘えるように頬擦りすると離れていく。


 村が見渡せる位置にある幹の(きわ)に立つと言葉を紡ぐ。


「この地に住まう者達の未来を救う為に、小さな犠牲も残さぬ様に、傷も痛みも障害もすべて癒して消し去りたいの。弱った者をも取りこぼさないように念入りに……超エリア回復!」

 ミナヅキの髪が輝きを増し、思いが背中を貫くと翼が羽ばたく、それを起点に光のリングと羽根が広がり舞い飛び村ごと、そこに入り込んでいる大樹の根までを取り囲んで輝きを増すと一気に霧散して光の粒は儚く消える。


「何度見ても神々し、おっと」

 余韻なのか恍惚とした表情のミナヅキが振り向くと力が抜けシドの腕の中に崩れ落ちると抱き上げられて運ばれる。


 ミナヅキの意識は暗転し、ここから帰った記憶すら無く次に目が覚めた時は屋敷のベッドの中だった。

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