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彼女の家の前でジュリに別れを告げるとリンクスは二人を掴んで大樹の結界部分まで移動する。
『来たか』
かなり立派な枝にブルードラゴンが小鳥の様に大人しくとまっている。
「中々にシュールな絵面だな」
シドは卵を撫でながら辺りを見回す。
大樹の上部の幹を抉りとってベランダを作る要領で器用に自宅をつくったようだ。
「随分大胆にカットしてお家を作ったんですね。この最初の家作りの作業からして大樹は大丈夫だったんですか?」
『そうだろう! 立派であろう? ん、大樹? これしきではビクともしなかったぞ?ちょっとばかり削ったとて、その幹は十分に太く、その他の部分がちゃんと役割を果たしておるからな』
その立派な住居部分とやらを眺めてみると確かになにか壁のような膜がドーム状に張り巡らされている。
「この結界は昔からなんですか?」
『いや、妾はそんなものは作らぬ。家主の妾自らが中に入れぬ仕掛けなど、どこの物好きが施すというのじゃ、問題はどうやって中に入るかという所じゃな。壊してしまっては元も子もないわけじゃし……』
「触ると弾いて呪われる仕組みとかただのワイバーンに出来るんですかね」
呪われると痛そうなので結界に触れずに観察していたら、ごく普通に風がそよぎ木の葉は揺れている。
「完璧に別空間という訳ではないならあたし多分いけます。呪いは怖いですけど」
散々試して壊す以外の選択肢を見付けられなかったここの家主ブルードラゴンとリンクスが、ミナヅキの口走る信じられない発言に驚き目線だけがそちらに釘付けになる。
「え!」
「こうやって……」
ふぉん
『なぬ!』
結界の内側に鏡に写したように全く同じミナヅキが佇む。所謂ミラーと名付けたモノだったが、初見の二人(一人と一匹)は驚きを隠せない。
「シドさんは、そこで卵を何者にも絶対傷付けさせないでね! よろしく。それでこれを……」
「おっおう!」
外側のミナヅキが二人(以下略)を触ると三人がぶれた。次の瞬間三人で結界の中にいた。
ぽひゅ
「えーとミナヅキ……今のは? そんな特技? 聞いたことないんですけど?」
ドラゴンは困惑して戸惑い、リンクスは眉間に皺を寄せて苦悩していた。
「あれ、そうだっけ? ……あぁ、聞かれなかったから忘れてたのかな♪」
目の前の、自分より下に見ていた少女が思っていたよりも三倍位は規格外だったので汗が止まらないドラゴン。
『攻撃力なら負けていないのだぞ……!』
「ぷっ」
ドラゴンはキッとリンクスを睨み付ける。
「ここ空気悪いですね。木葉や湿気は外に出られていないみたいでカビたみたいな? 嫌な臭いが充満してますね。ドラゴンさんて、お片付け苦手系女子でしたか? もしかして住居は糞だらけとか?」
ジト目でミナヅキが家主を見る。
『は、妾の管理はバッチリだったに決まっておろうが! 失礼な! ……だって! えっとその……妾は他の者から綺麗好きだ! などと有名だったのだぞ!』
「ふっ」
女子力低めの二人のトークは続く。
『なんじゃ! その残念な者を見る目は! 断じて違うわ!』
「じゃあ二人は敵の駆除をお願いします! あたしこの汚部屋を作った元凶を探してきます。こんな汚い汚部屋にあの子を置いていかれませんから!」




