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「おじさん、わざわざこの村の為にこんな所まできてくれたんだって……話聞いてあげたら……」
村長は声をあげる。
「これ以上守り神様を怒らせるわけにはいかんのだ! これまでがおかしかったのだジュリ分かっておるだろう!? あんた達、頼むからよそ者は帰ってくれ! わしらは守り神様に許されるまで、ここで耐え続けて行くしかない定めなのじゃよ……」
ジュリは大きな声で戒められ怯えてしまう。村長は決してミナヅキ達と目を合わせようとはしない。
ジュリを抱き寄せ、村長に向き直す。
「村長? そんなこと言ったって村の子供達に異常が出始めるなんておかしいです! 村の未来を担っていく子達なんですよ?」
「うるさい、よそ者は口を挟むな! 帰れ!」
取り付く島もない。
「そんな!」
シドがミナヅキ達を村長の厳しい目線から守るように前に出る
「……村長、俺達を受け入れてくれないならばそれでもいい。だが我々の責任で動くから、少しだけ目を瞑っていてくれないだろうか?」
「もういいですよ! そんな受け身で滅びを待つのは村長一人でどうぞ。この不幸の連鎖についてもあたしが代わりに守り神様に聞いてきてますからね……未来ある若者達の成長を邪魔するものは摘んでいかないとですからね。もう行きますね」
村長に背中を向けた時、目の前が不意にぶれてリンクスがそこに現れた。
「ここにいたんですね……おや? お邪魔でしたか」
恨めしそうにこちらを見る村長にリンクスが気を使う。
「ううん、話はもう終わったトコだよ。ジュリ帰ろっか」
ドアを締め。振り向くことなく前を向いていく。何時なら愛想笑いまでおまけにつけているミナヅキの様子で何となくを察したリンクスは村長について問う事はなかった。
「ミナヅキこの可愛いお嬢さんは?」
「この村で知り合ったお友達なの。いいでしょう?」
ふふふーんと鼻高々で紹介する。
「それは良かったですね。うちのミナヅキはホント幼稚でどうしようもないお調子者なんですがよろしくお願いしますね」
リンクスが礼儀正しく主の代わりにお辞儀する。
「ちょっと、どういう事よ? リンクス!」
「……もう忘れてる。わたしはリンクですよ? ミナヅキ、歩きながら話しますか。お嬢さん失礼しますよ?」
ひょいっとジュリを紳士的に抱き上げるとすたすた歩く。
「ドラゴンの棲家なんですが、結界が張ってあって人や物では入る事も叶わず、無理矢理にこじ開けると大樹を痛めてしまうようです」
年齢不詳の美丈夫リンクスに、抱き上げられてジュリは怖くて抱きついていたが、それに気付いて真っ赤になっている。
「おや、リンク。可愛い恋人だな。いつまでも結婚しないのはそう言う事か、お前ロリコンとか……」
「黙れこのバカ旦那。この小さなお嬢さんが驚くでしょう? これだから気の利かない下衆な男は……なんですか? その俺は育児に協力してますよ? みたいなスタイルは、貴族の癖に使用人の仕事を奪うの止めてくださいます~?」
普段とは違う口の悪さが冴える。
「ここがジュリの家だ」
優しく下ろすと跪いて掌に口付ける。
「お嬢さんごきげんよう」




