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随分荒れ果てている村の入り口。そこにかつてあったであろう門も扉も現在は用を成せてはいなかった。
「柱に矢が突き刺さったままとか、生々しいですね。でも、ここって人も住んでいるんじゃ?」
「ああ、うちの領内ではないから正確には分からないのだが、確か騒動前は百五十人程が暮らしていたようだが、他に移り住んだ者もいて、今は三十人居ないくらいじゃなかったかな? 砂漠を越えていく際には立ち寄った事がある位だが……」
荒廃した雰囲気がゴーストタウンを連想させる。焼失した民家も見てとれる。
「だれも歩いていませんね」
シンボルツリーというには立派過ぎる大樹のお膝元、ここだけは緑も生い茂っている。
「まるで廃墟巡りをしているみたいですね。シドさん」
「ああ、そうだな?」
向こうを向いているシドが適当に相づちを打っているのにも気が付かずにミナヅキ。
「待って、ミナヅキあそこに」
繋いだ手を軽く引き寄せられて振り返ると、落とした何かを探して必死にかき集める少女がいた。
「これ落としたよ?」
「ひぁっ!」
十才くらいの少女はミナヅキの声かけに驚き固まってしまう。キョロキョロしながらも目は虚ろで焦点も定まっていない。多分その目は見えないのだろう。
「ああ、ごめんごめん、これね、お嬢ちゃんのよね?」
「あ……ありがと……」
少し震えながら感謝を述べる。主食の芋や雑多な野菜を両手いっぱい抱えていた様だ。
「お家まで運ぼうか? ちょっとやそっとの荷物ならうちの大きなシドさんが、どどーんと抱えていってくれるよ?」
「おう! 俺にとどーんと任せてくれ」
「あたしミナヅキ、このイケメンのお兄さんはシドさんって言うの、ちょっと不器用さんなんだけど、スッゴク優しいんだよ、いいでしょ?」
「くすっ……、わたしジュリ、お姉さんとお兄さんは冒険者さんなの?」
身構えてたのがちょっと柔らかくなった様だ。
「うん、まだ新人さんなんだけどね。なにか困ったことがあったらお役に立ちたいなーって思って来てみたの! 最近なにか変わったことは無かった?」
「あっあのね……一番最初にお母さんが病気になったの、そしたら村長さんも、隣のおじさんも皆同じ病気で歩けなくなっているの、そうじゃない人は目が見えなくなって……でも、村長さんは、この村の人が守り神様を怒らせたからこうなったんだから、それは受け止めないといけないって……」
子供ながらに見えない目で頑張って家族や回りの大人をサポートしているジュリの目から涙が零れる。
「それは辛いよ。荷物を置いたらあたし達を村長さんの所に連れていって欲しいな……。あたし色々お願いしてみるからね?」




