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「ミナヅキ! できたかい?」

「あ、はーい!」


 自室のドアを開けると、髪をポニーテールにリボンで結わえて、新人冒険者ミナヅキが出来上がっていた。

「どうですか? おかしくないですか?」


 照れながら上目遣いで遠慮がちに聞いてくる仕草にやられてシドはミナヅキを抱き寄せる。所謂(いわゆる)、浮かれた新婚冒険者(ばかっぷる)である。

「シドさんの旅装束も凄く素敵ですね! て、これじゃあシドさんのカッコいい衣装が全く見えませんよ!?」

「大丈夫、今ここにあるのがそうだから、気にしないで!」


「……」

 リンクスの目など気にすること無くシドは

ミナヅキの抱き心地を満喫している。

「シドさん、今日凄く甘えん坊さんですね♪」


「うん、俺が甘えるのも、甘えられるのも気を許すのも全部ミナヅキだけなんだよ!?」

 抱き締める腕に力がこもる。

「なのに、なのにだよ? ハニートラップ紛いの罠を行く先々で配置されるんだ、あいつら裏で手を組んで全力で俺を潰しに来てるとしか思えないんだ! 職場の同僚(なかま)とは名ばかりで、あんなの……敵しかいないじゃないか!」


 王族の縁者(しんせき)だと自慢するようで不粋だから王族以外は本来は殆ど現れない絆の持ち主は貴族間では公表しないのが慣例なのだが、それを知らない貴族達はそれが無いのを当たり前とし、我が娘、いや孫を愛人に! と推して推して推しまくってくる。もし、薬でも盛られてなにかイタす事となると即死が約束されているだけに、それを仕掛けられ続ける本人のストレスなどはお構い無しだ。


「あははは……なんだか辛いことがあったんですね。気の毒に……よしよし偉いですよ♪」

「俺はミナヅキと一緒にいたいだけなのに……」

 シドでそれなら王太子ルディオなどは更に酷い状況なのかもしれない。




「シドさん、忘れ物はありませんか?」

「もし忘れ物があったとしても取りに戻れば良いだけだからね♪」


 ハネムーンと言われたら浮かれてしまうのもやむ無し。

「では行こうかミナヅキ!」

「そうですね、シドさん」



「お待ちください! このリンクスをお忘れなくですよ!?」



「よろしくお願いします」

 情報を上書きさせ、不必要なものを全て隠してある冒険者カードを門番に渡す。

「ふむ、三人組の冒険者のパーティーで、リーダー、シドとその仲間のリンクとミナヅキだな。この先は厳しい旅路になる故、気を付けて行くがよいぞ」

「ありがとうございます」


 ミュースラントの西側の門から外に出ると気温が上がりはじめ、如実に木々が数を減らしていく。峠を越えたら砂漠地帯を遠くに望むミュース平原に差し掛かる。


「シドさん角ウサギですよ!」

「今夜の晩餐ですね。リンクスさん頑張って!」

 小さく応援する声を背に弓に矢を三本つがえると狙いを定めて……、矢を放つと二本は目の前の獲物を仕留め、もう一本は大きく外れて上にめがけて弾かれていく。

「惜しい!」


「……はい?」

 バサバサ! ドサ

 振り向いた瞬間、瀕死の鴨がミナヅキの足元に落下。

「ひえっ!」


「さあ、血抜きして解体しますよー」

 意地悪そうに微笑む。


「ミナヅキそっち持って」


 焚き火で調理をしている間に、シドとミナヅキはテントを三つ設営する。




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