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女子高生、水無月亨は、家が隣の幼なじみの花菜といつも一緒。
母親同士も仲が良く、小さい頃は一緒に旅行にも出掛けた間柄だ。高校も同じなら部活も同じ。この先もずっと一緒にいたいかけがえのない親友だ。
この前なんか、お互いの結婚式をそれぞれがプロデュースしてどっちがいい式だったかご祝儀の額で競おうとかいう良く考えたらなんともいえない馬鹿らしい、それでもその時の私たちからしたらこれ以上ない壮大な夢のある計画も打ち出されたところだった。
うちは代々続く剣道一家。お父さんは街にある高校の先生で、剣道部顧問。お母さんは主婦業の傍ら、おじいちゃんと一緒に道場で生徒さんたちに剣道を教えてる。
オフの時のおじいちゃんはギャップ萌えの毛の無い甘々好好爺だけど、練習中なんて……
ブルブル
なにかがみなぎってきた鬼神みたいで、変な闘気を纏わせてるって噂もあるぐらい……
うん。おじいちゃんの指導はバカ怖い。
数々の英才教育を経て、あたしも、孫のついでに?どさくさで鍛えられちゃった花菜も最近剣道をはじめましたとばかりの同い年の一年では相手にもならない猛者。部活の新人戦では華々しい結果も残せて毎日が充実しててとても楽しい。
明日からの夏休みも部活三昧の予定である。
ミーンミンミンミン……
「そこのセミ! うるさいですよ!!」
花菜がセミに指差して変な口調で文句いっててウケる。ユニークな花菜は誰が何をいおうが私の嫁だわー(笑)
相変わらずのうだるような暑さの中、学校から約二キロの道のりを家路につく。
ここはいつもの帰り道。
あまりの暑さに前方の道路が妖しく揺れて見える位の真夏日だ。
正直だるいけど、幼馴染みと部活終わりに他愛もない雑談をしながら歩く時間はとても心地よいのだ。
三叉路の先、あの林を抜けたらそれぞれの家が見えてくる。
「亨ぅー! 明日は七時にうちの前で待ち合わせて早めに部活行こっ♪ 寝過ごす予定のうちをちゃんと起こすですよーー」
振り返りざまに幼馴染みが可愛くお願い! 美少女がポーズをきめる、ポニーテールまでがかわいく揺れるとか、ほんと神様いい仕事してるなぁ
「その言葉、そっくりそのままお返しするわ花菜さん! そっちこそさっさと起きてあたくしを優しく起こしにくるのよ!」
いいお顔でお返事。
「ぷっ! あははは! ほんとうちら朝だけは弱いよね」
「ほんとだねぇーー」
実際、弱いのは朝だけでは無いがそこはご愛嬌。
「明日の夏休み最初の部活はさー、うちん所でとれたスイカ持っていって、部活終わりにみんなでスイカ割りやっちゃうですか?」
「お! いいねー! さすがスイカセレブ!」
このへんで一番の規模でおじいちゃんの代から農業を営んでる花菜んとこ。
「でしょー(笑)うちはこの時期スイカの数だけは自信あるですよ」
二人でイタズラっぽく微笑みながら世間話をはじめてみた。
「そうそうこの間、花菜んとこの畑にパトカーとまってたって、お母さんが言ってたんだけど……」
「それなー! ほんと農家舐めんなって話なんですけど!」
仕事終わりに地域の見回りで町内のお年寄りの家に野菜を持って声かけをしてまわってた花菜んとこのお父さんとお兄ちゃんが、通りかかった時に、自分たちが丹精こめて育てあげた花菜んトコの主力商品のブランドスイカを我が物顔で小脇に抱えてほくそ笑んでる犯人と鉢合わせして、そのあとはちょっとしたお祭り騒ぎで犯人を半○しにする勢いで確保。ぐるんぐるんの簀巻きにして警察呼んでたみたい。
「人様んとこの大っっ事な農作物を我が物顔でかっさらっていくとか、泥棒滅びろです!」
「うんうん。ほんとよねーー」
うん。盗みは駄目! 絶対。
いきなり真剣な面持ちで花菜がこちらを向く。
「亨! うちら白髪になって、よぼよぼのおばあちゃんになってもずっと一緒ですよ!」
不意に、明日を疑わない澄んだ目で花菜が手をさしだす。
ふふふ。その言葉わりと毎日聞いてるし、なんだか気恥ずかしいけどあたしもそうありたい! 大好きな親友と手をがっちり繋ぎたい!
「そんなの当たりま……」
突然の突風!
「にゃーーーー!」
風が二人の間を別つ……
砂が強風に舞わされ容赦なく吹き抜けていった。
「なにこれですーー!」
とっさに庇ったけれども、いきなりの突風に視界を奪われ、まだ前が見えない。
「ケホケホ……目に入った。やだぁ、ちょーさいあくぅー……」
うち涙目!
「!! とおる! 大丈夫?」
「とおる!」
部活帰りの女子高生が自宅の目と鼻の先で、こつぜんと姿を消した。
警察の捜査も空しく依然としてその行方はつかめない。
まるで神隠しだ
山神さまの祟りだ
女の子はどこか別の世界に連れ出されてしまった
色々な説がさかやかれることとなったが、この日以降、幼馴染みをみた人は誰ひとりとしていなかった。
「ちょっ……花菜! この風……危な……! い……?」
視界が段々取り戻されるけど、とてつもない違和感に襲われた。
「え?」
見渡す限りの砂浜。打ち寄せる波の音……?
ここは
どこ?
「……」
自分以外の人の姿は、見受けられないし、なんかおかしい。なんならさっきまでとは、時間も、季節すら違うんじゃない?
なんとなく背中がぞわぞわする。
こんな所に取り残されているあたし。
ざざざーーん
足元に打ち寄せる波
「ん?」
「げげげ! 靴に水入る!」
ざざざーーん
「にゃーー!!」
急に現実に引き戻された感覚に、慌てて逃げる。
「ここは……」
さっきまでの見慣れた景色と違って、青い空とどこまでみても海岸線がつづく。
「どんな冗談なのかしら。あはは」
靴にくつしたをつめ、けだるそうに木陰を目指す亨。
ゆっくりまったり熟考しながら言葉を紡いでいく予定です。




