問題2:『上半期ボーナスの、考課適格性判断』《起》
取り急ぎ、
問題2:『上半期ボーナスの、考課適格性判断』《起》
を投稿いたします。
7月に入ると、課長が今野の席に来て、業務指示を出してきた。
向かいの席からは、里山がパソコンの上から、目から上の部分だけを出して聞き耳を立てている。
課長「今野さん、じゃあ、今月中にやってほしい仕事を振るね?」
今野「はい。」
課長は、いくつかの書類を今野の席に出して言った。
その一部は、昔あった『タウンページ』なみの1000ページはあろうかという資料だった。
課長は、その1000ページはあろうかという資料から説明を始めた。
課長「これはね、珍しい書類ではあるんだけど、うちの会社のね、課別のメール送信頻度がまとめてある資料だ。」
今野「…。」
見たこともない資料だった。
課長「これは『技術課』からもらったんだけどね、これを見れば、どこの課からどこの課にそういったタイトルのメールが飛んでいるのかとかが分かるようになっている。」
今野「…。」
課長「見ての通り役職分類と、課長より下の階級の社員については番号で整理されている。」
今野は、《何だこれは》としか反応のしようがなかった。
課長は別の資料を見せた。
課長「そして、これは、それぞれの課の、重点項目、まぁ、考課をつける際に重きを置きたい項目だ。こうやって、コメントだとかそういったことと一緒に書かれている。そして、これは、それぞれの社員の、ボーナス内訳。」
今野「え?」
課長「そして、これが、うちの会社の『ボーナス』支出総額と、課別の内訳。」
今野「は?」
課長「これを使ってね。ボーナスが正しい判断で行われているかを判断してほしい。」
今野「えええええ…。」
課長「杓子定規ってわかる?」
今野「はい。」
課長「そのやり方でいい。別に、払い戻しを要求するとかそういう話じゃないもんだから。」
今野は幾分安堵の表情を浮かべて答えた。
今野「分かりました。」
課長「それを、今月中にしてもらいたい。とくに、理路整然としてれば突き返す事は無いと思うんだけど。」
今野「はい。」
里山が引き続きこっちを見ている。
課長「何か分からないことがあれば、里山さんとか僕に聞いてくれればいいから。」
今野「はい。」
課長「でも、できるだけ、自分一人でやってね?」
里山が課長の方を見た。
里山「…。」
課長「じゃあ、よろしく、頼んでおくからね?」
そういうと、課長は自席に戻っていった。
里山が、今野の席の横に来て資料を見た。
今野は、1000ページはあろうかという資料を見ている。
『件名』、所属情報付きの『送信者』と『受信者』、『本文の文字数』が不親切にも一通のメールごとに並べたてられている。
里山「大変そうでしょ?」
今野「はい。」
一条司も今野の方を見ている。
里山「『杓子定規』でいいからね?私みたいなのがするとさー、どこから聞いてか、同期とか使って文句言ってくる人がいるのよー。」
今野「ああ、なるほど。」
周りを見ると、江ノ口が怪訝そうな表情で仕事をしていた。
里山「とりあえず、何でも、分からないことは聞いてくれていいから。」
今野「分かりました。ありがとうございます。」
今野は、里山が席に戻った後、1000ページはあろうかというメールのリストを見ながら、課別の『重点項目』を照らし合わせながら見ていった。
不親切極まる資料で、メールの件名別に並べられているわけでもなく、時折別件が入っているなどしていた。
今野は『まじかぁ』と思いながら、その1000ページはあろうかという資料を、その日中に一通り目を通した。
引き続き、ご愛読の程、よろしくお願いいたします。
さやそばらすか。