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世界中に「巨大な都市」が出現したその日を起点に、我々たちが知っていた世界は消えた。いつからか、 我々たちは「先天的な超能力を持っている人」と「自分の体を改造した者」の存在をもはや不思議に思わないようになり、「政府より強い力を持つ企業」が世界を支配することについて疑問をもたなくなった。
多分、人類は決して手を出してはいけない禁断の果実を飲み込んでしまったかもしらない。
人類歴史学者、ブライアン・ブラック
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1992年 9月 10日. 重金属が混ざった雨が『リンボーシティ』のチャイナタウンにあふれ下る。
不規則に点滅するネオンサイン。街路樹にかけておいた灯りは雨滴と当たるたびに踊る。チャイナタウンの住民たちは、久しぶりの中秋節(中国のお盆)の準備で動きが慌ただしい。暮していくだけでも力がかかる移民者たちには今日のような祭りは何よりも貴重なのだろう。
「はぁ……はぁ……。」
しかし、群衆をかき分けながら走っているどの老人にはお祭りなんて何の関係もない話だ。全身が泥だらけである彼は誰かに追われているように後を振り返って見ながら逃げていた。
距離から出てきた老人は、自分を追いついてくる人がいるか確認した後、近くにあるモーテルに入った。老人がドアを開けると濃い香りの臭いが彼の鼻を刺した。カウンターにある管理人は、出入口を寄りながら椅子に座ってTVを見ていた。 彼はTVに気をとられているように客が来たのに微動もしなかった。カウンターの前を通り過ぎた老人は早めにエレベーターに乗って上階に行った。老人の姿が見えなくなった後、管理人の腕が椅子のアームレストから落ちた。
老人は、 額に弾丸が打ち込まれている管理人の死体を 最終まで気づかずしまった。
エレベーターから降りた老人は、自分が滞在している部屋に到着した。ドアを開けて入った彼は下駄箱の中に保管しておいた38口径のリボルバーを取り出し残弾を確認した。6発の弾丸がシリンダにきっちり満たされていた。手を振り回してシリンダーを元の位置にさせた老人はベルトにリボルバーをさした。
武器を手に入れた老人はクローゼットからバッグを取り出しその中を確認した。バッグには100ドル紙幣の束と、様々な国籍のパスポートが入っていた。バッグを閉めた老人は急いで机の下にある金庫に近づいた。ダイヤルを回して金庫を開いた老人は、その中に保管したフロッピーディスクを探した。
「?!」
しかし、金庫の中にはフロッピーディスクの代わりに弾頭を黒く塗った弾丸が置いていた。慌てた老人は、弾丸を手に持って調べた。弾頭には「Dr.Bishop」という文字が荒く刻まれていた。それが何を意味するのかを老人が理解した瞬間、どこかで拳銃のハンマーを引く音が聞こえた。
- ガチャ!
「俺から逃げたところがやっとここか、ドクタービショップ」
「!」
老人の後ろに縁取られた影から冷たい声が聞こえてきた。ビショップという名前で呼ばれた老人は荒息をつきながら口を開いた。
「ラファエル……ラファエル・ザ・リッパー。君は死んだと思ったのに……。」
「そう。確かに俺は「一度」は死んだ。しかし、その程度で俺の復讐を止めることはできない。そしてお前との悪縁は今日、ここで終わる。」
影の中の男は嘲笑するように答えた。すぐに窓越しに下ろした雷が彼の姿を一瞬映した。
彼は死神のような黒い服を着た、青白い顔の男だった。
肩まで降りてくる黒い髪。身に付けた黒革のロングコートは銃弾の穴があちこち開いていた。彼の皮膚は死体のように 青白いし、火薬と血のくさいが濃く感じられた。まるで死んだ人が歩いているようだった。
影から出てきラファエルはコートから何かを取り出しビショップの前に振った。それはビショップが金庫に保管しておいた、誰にも渡してはならない情報が入ったフロッピーディスクであった。
「お前が探していたのは俺が持っている。そして、この建物には君と俺しかいない。」
「……。」
ラファエルを狙って見たビショップは歯を食いしばった。フロッピーディスクを奪われた以上、ラファエルが彼を生かしておく理由がなかった。奇襲するつもりなら今だけだった。ビショップが何をしようとするのか気づいたラファエルが口を開ける瞬間、ビショップはリボルバーを取り出して撃った。
- タアン!タアン!タアン!
フラッシュと一緒に注がれた弾丸は、ラファエルの体に次々吸い込まれた。ラファエルは額に打ち込まれた弾丸で頭が後ろに反った。四方に脳髄をまき散らした彼はフロッピーディスクを落ちて倒れた。
- カチッ!カチッ!カチッ!
「はぁ……はぁ……はぁ……。」
ビショップは、弾丸がすべて撃ったのに何度もトリガーを引いた後にリボルバーを下した。呼吸を選んだビショップは、ラファエルを足で触って彼が確かに死んだことを確認した。頭に穴が開いているラファエルは天井に向かって空虚な視線を送っていた。
ため息をかけたビショップは、フロッピーディスクを回収するに身を下げた。そしてビショップの耳に奇妙な音が聞こえたのはその時だった。
- キリッ!キリリリッ!
「!」
古い歯車がかみ合わせるような騒音が部屋に響き始めた。音が聞こえてくる方向に頭を向けたビショップは、目を大きく開いながら後ずさりをした。 彼が殺したラファエルが身から「黒い砂」を吹きだしながら起きていたからだ。
窓を汚れたラファエルの血は、黒い砂風と一緒に彼に戻り始めた。体に打ち込まれた弾丸が皮膚の外に押し出され、焦点を失った彼の目が再び不気味な気を現れた。それは現実の物理法則を根幹から無視する超常現象であった。
ビショップが圧倒されている間、ラファエルは腰に手を持っていった。その瞬間、眩しいフラッシュと一緒にビショップの腹から血が吹き出てきた
- タタァン!
「クァッ!」
ビショップは腹をコテで刺したような苦痛を感じた。ラファエルはいつ抜いたか知れないSAAリボルバーを手に持っていた。文字通りあっという間に行われたファストドロウだった。
ビショップは弾が打ち込まれた部位を手で押さえながら体を痙攣した。ラファエルはSAAの銃口から出る煙を吹いながら彼に近づいた。
「今夜、俺はお前から聞かなければならないものがある。そしてお前には拒否権なんてない。」
「く……クソッ……。」
ビショップは、苦痛のため体から力を抜けて荒く息をついた。ラファエルはコートの中から葉巻1本を取り出しながら話を続けた。
「しかし、その前に俺の話から始まる。俺たちの悪縁が始まった3年前のあの事件の話から。」
ラファエルは葉巻に火をつけた。息を吐き出したら濃い葉巻の煙が部屋を満たした。自分の運命を受け入れたビショップは何も言わずラファエルを見上げた。しばらく沈黙が流れた後、ラファエルは葉巻の煙を吹いながら話を始めた。
「じゃあ、始まろう。どの死なない無法者の長い物語を。」
韓国から日本語で小説を作っています。
文法的な誤りがあるかも知らないですがこの作品を楽しんで下さい。
(誤字があったら教えてください。)