第8章~俺が奴隷を嫁にした件について その2
登場人物
マサユキ
王族にも繋がる貴族の家の末息子
妾腹で末子ということもあり、継承権はなく、その代わり特に縛りもなく自由な身分
現在は家を出て、与えられた資産を元に交易商の仕事をしている
頭は切れるが性格は大らかでのんびりなところがある
貴族の家暮らしよりも、現在の気ままな生活が気に入っている
献身的に尽くしてくれる秘書兼メイドのエミリアを妻に迎えることに決めた
エミリア
エルフ王国の中級貴族の娘
貴族の子女の義務として、士官として軍務に就き、捕虜となった
それをマサユキが奴隷として買い取り、屋敷にやって来る
秘書役から身の回りの世話まで、なんでも喜んで献身的にこなす娘
自ら願い出て、奴隷の自分を大事に扱ってくれたマサユキに生涯連れ添うことを選ぶ
朝になり、ふと目覚めてみると。
夜更けまで激しく愛し合って、そのままお互いに絡まり合うように抱き合って、初めて一緒に同じベッドで眠ったはずのエミリアは、もう傍らにはいなかった。
ぼんやりとする頭を二度三度揺すって意識を引き戻しながら、彼女の姿を探す。
すると、かすかにキッチンの方からカチャカチャとした物音と、エミリアの歌う声が聞こえてくる。
エミリアのヤツ、夜中遅くまであんなに激しくやったのに、今朝もいつも通りに朝食の支度してるんだな。
眠くないわけないと思うんだが、こういうとこ、ホント、手を抜かないな。
さて、せっかく目が覚めたことだし、軽く顔出して労っておこうか。
あいつ、俺に褒められるとすごく喜ぶからなぁ。
あ、そうだ、忘れてた。
昨日、Hしたまま寝ちゃってたから、素っ裸じゃないか。
どうしよう?
着替えは毎朝、朝食に呼びに来るときにエミリアが持ってくるからな……。
昨日脱ぎ捨てた下着がその辺転がってないかと思って見回してみるけど、仕事に完璧主義のエミリアが、そんなもんを放置しているわけもなく。
しっかり片付けられてしまっていた。
……着るものがない。
ん~……。
まあ、ここは俺の私室だし、いるのはエミリアだけだ。
ああ、そうか。
別にこのままでもいいのか。
エミリアはもう、俺の嫁だもんな。
裸見られたってなんの問題もない。
うん、そうだな。
アイツの喜ぶ顔を何かにつけ見たくなるのも事実だったし、これからは堂々と褒めてやればいいんだ。
よし、行くか。
ベッドを降りてスリッパだけ履いて。
エミリアが料理をしているキッチンへ向かう。
「おはよう、エミリア。今日も頑張ってるな」
「あ、おはようございます、ご主人様! ……あ、そうだ、着替えは……って………」
そこで、こっちを振り向いたエミリア。
俺の姿を見て固まった。
みるみる顔が真っ赤になって。
「な、なんて格好で出歩いているんですかーっ!」
朝からエミリアにめちゃくちゃ怒られた。
なんでだよー……。
「まったく……いくら私があなたの妻だといっても、いきなり全裸というのはどうかと思いますよ……ほんとにもう……」
あれからそれなりに機嫌は直って、朝食を済ませた俺達。
まだ、ちょっとばかりおかんむりではあるようだけど。
「だって、もうゆうべのうちに全部見ただろ……」
「ああいう時と場所とはまた別なんですっ!」
ぷいっと頬を膨らませてそっぽを向くエミリア。
そこへ。
「あらあら、どうしたんですか。喧嘩するほど仲が良いとは申しますが……」
ばあやが朝の報告にやってきた。
「まあ、たいしたことじゃない。それより、ばあやに言っておかなきゃいけないことがある」
「はい、なんでしょう、坊ちゃま」
「実は、エミリアを俺の妻にすることにした」
すると、ばあやはニコニコ顔で。
「やはりそういうことになりましたか。私もお二人が無事にまとまってくれて、これで肩の荷が下りそうです」
「まあ、そういうわけなんで、これからはばあやの仕事もエミリアにどんどん仕込んでって欲しい」
「かしこまりました。では、これからは、エミリアさんのことは、奥様とお呼びいたしましょう」
「え、お、奥様だなんて……」
どことなく恥ずかしそうな中にも嬉しそうに頬を緩ませるエミリア。
「とはいえ、奥様といえど、仕事に関しては手加減はいたしませんから、しっかりとついてきてくださいね」
「は、はいっ!」
エミリアの表情が再び引き締まる。
「しっかりな、エミリア」
「がんばりますっ!」
俺が声をかけると、嬉しそうに意気込むエミリアだった。
「ともあれ、私もどうやら安心して、引退することができそうですね……。ほほほほ……」
ばあやもなんだか嬉しそうだ。
「ところでばあや。引退後の身の振り方はどうするつもりなんだ?」
「そうですね……特に決めてはおりませんが。たった今のお話ですし。ですが、引退した年寄りがいつまでもお屋敷に居座っては、奥様もやりにくいでしょうから……少なくともこのお屋敷は離れるつもりでおりますよ」
「どこか、行くアテはあるのか?」
「それについてはまだ考えてはおりませんねぇ……」
まあ、なんとかなるでしょ……と、いつもののんびりした調子で言いそうな、そんな感じのばあや。
「じゃあ、敷地のどこかに家でも建てようか。そしたら、いつでも会えるし、何かあったら俺達が面倒も見やすい。それに、近くにばあやがいてくれたら、何かと頼りになるし」
「ご主人様! それはとてもステキだと思います!」
エミリアも同意してくれた。
「どうだ、ばあや」
「よろしいのですか?」
「ばあやは実質的な俺の母親だからな。このくらい孝行させてくれ」
「わかりました。では、坊ちゃまの好意に甘えるとしましょうか」
にっこりと笑顔で、ばあやは頷いてくれた。
「よかった……私も心強いです」
エミリアもホッとした様子で。
「あらあら、エミリアさんなら私などいなくても困るようなことなどありませんよ。そのためにも、これからしっかり、仕事を仕込みますから、しっかりね」
「はいっ!」
エミリアが頷く。
「忙しくなるぞ、エミリア」
「はい、でも、ご主人様のお役に立つために必要なことですから!」
エミリアはやる気満々で腕に力を込めるポーズを見せる。
なんかそれだけで心強く感じるのはなんだろうな。
デキる嫁というのはこんなにも心強い味方なんだな。
そんなことを感じた俺だった。
次回、最終回。
物語はエピローグへ。
最終投稿は、8/29(水)12:00の予定です。




