第7章~素知らぬ顔で奴隷を策に使ったら、なぜか本人に感謝されてしまった件について その1
登場人物
マサユキ
王族にも繋がる貴族の家の末息子
妾腹で末子ということもあり、継承権はなく、その代わり特に縛りもなく自由な身分
現在は家を出て、与えられた資産を元に交易商の仕事をしている
頭は切れるが性格は大らかでのんびりなところがある
貴族の家暮らしよりも、現在の気ままな生活が気に入っている
エミリア
エルフ王国の中級貴族の娘
貴族の子女の義務として、士官として軍務に就き、捕虜となった
それをマサユキが奴隷として買い取り、屋敷にやって来る
秘書役から身の回りの世話まで、なんでも喜んで献身的にこなす娘
翌日。
一緒にエミリアが作ってくれた昼食をとり、片付けも済ませると。
「ご主人様、では、しばらく行って参ります」
「お、いってらっしゃい」
恭しく一礼して、部屋を出て行く。
それからややあって。
コンコン……と、ドアがノックされる。
「マサユキ様、私です」
「ジョゼか」
ドアを開けて、ジョゼが姿を現した。
「ご指示通り、監視を付けておきました」
「ああ、ご苦労さん。行動確認だけでいいってことは伝えてあるな?」
「もちろんです」
「俺の読みが正しければ、今日のあいつは、出かける先で、繋ぎを取るはずだ。それさえ確認できればいい」
「しかし、よろしいのですか? もしそれが本当なら、彼女は先日見た一部始終を……」
「それでいい。あいつが俺の見抜いた通りの指揮官であれば、本国へ報告するなら、アレの配備が完了して攻め込まれたら相当厳しい、無理だって所見を付けて報告するだろう。それを期待してる」
「わざわざ敵国に教えてやるのですか」
「そうだ。戦況もそろそろ全体の形勢は決しつつある。なるべく余計な戦いはせず、さっさと手打ちになってくれた方がお互いにとって得だし、うちにとっても利がある。戦争が終われば、またあの国と商売できるようになるんだからな」
「なるほど……確かに」
「まあ、向こうの中枢が我を失ってないことを祈るよ。とりあえず、今日はエミリアと見張りの帰りを待つ」
「わかりました」
ジョゼが下がっていった。
さて、どうなりますかね……。
2時間ちょっとした午後の昼下がり、エミリアは帰ってきた。
それと前後するように、窓にコツンと石が当たる音。
ジョゼか。
「エミリア、ちょっと外すぞ。すぐ戻る」
「はい」
仕事部屋を出て、ジョゼの部屋へ向かう。
「ジョゼ、見張りは戻ってきたか」
「はい、戻りました。どうやら、マサユキ様の予想は当たっていたようですね」
「そうか。そのまま、泳がせたな?」
「はい、ご指示通りに。こちらが報告書です」
「よし、それでいい。どれ……」
報告書に目を通す。
おいおい、接触した場所って、サウスエンド地区かよ。
まあ、敵国と裏で繋がりを持とうなんて輩が集まる場所ったら、そういうとこしかないか……。
いくら個人的な武術でも腕が立つとは言え、女一人でそんなとこ行くなよなー……。
不用心にも程があるだろう……。
思わず呆れてしまった。
軍人上がりだし、国への忠誠心だってあるだろう。
それにしてもなぁ……。
「今後も、同様のことがあれば、同じように対応しますか?」
「そうだな。そうしてくれるか。エミリアに危ないことがありそうだったら、守ってやるように指示しといてくれ。これからも接触を続けるとなると、あの辺はちょっと危険な地域だし、それとなく護衛してやらないとな……」
「わかりました。そのように命じておきます」
「ああ、頼む」
ジョゼにそのように指示を出して、また自分の部屋に戻る。
部屋に戻ると、エミリアがテキパキと机周りを掃除していた。
「あ、ご主人様!」
俺が戻ってくるなり、エミリアは掃除を中止して、ササッと、机を元の状態に戻す。
「どうぞ、ご主人様。お茶でもお入れしましょうか?」
「ああ、頼む」
「はぁい!」
いそいそとキッチンに向かうエミリアの背中が弾んでいる。
なんか楽しそうなんだよなぁ。
なんだろうな。
「どうぞ! 今日、先日発注したお茶がさっそく入ったので、少しご主人様用にいただいてきました」
「そうか。どれどれ……ん、うまいな……」
「そうですか! ありがとうございます」
エミリアは褒められたのが心底嬉しそうに笑う。
が、そこからその表情が引き締まる。
「あの……ご主人様」
「ん、なんだ?」
その表情から、真面目な話と分かる。
こちらも身を乗り出すようにして、話を聞く。
次回投稿は8/22(水)12:00予定。
外出の目的がバレたことで、殺されると観念するエミリア。
だが、そもそもマサユキの方がそれを知っていて利用していたわけで……。




