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俺がエルフ嫁(ドレイ)を買った件について  作者: 木場貴志
第4章~人使いの基本は信頼していることを示すことだという件について
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第4章~人使いの基本は信頼していることを示すことだという件について その1

登場人物


マサユキ

王族にも繋がる貴族の家の末息子

妾腹で末子ということもあり、継承権はなく、その代わり特に縛りもなく自由な身分

現在は家を出て、与えられた資産を元に交易商の仕事をしている

頭は切れるが性格は大らかでのんびりなところがある

貴族の家暮らしよりも、現在の気ままな生活が気に入っている


エミリア

エルフ王国の中級貴族の娘

貴族の子女の義務として、士官として軍務に就き、捕虜となった

それをマサユキが奴隷として買い取り、屋敷にやって来る

几帳面でキッチリとした性格と細やかな気遣いで、秘書役や生活管理を懸命にこなす


 明けて翌日。

 昨日、夕方近くに宿に戻ってから、約束通りにエミリアがもらってきたお茶のサンプルでテイスティングを実際にやってみた。

 甘い香りの強いもの、ハーブと合わせたフレーバーティーが多く、紅茶の茶葉に固有の癖が強いものは避けたセレクト。

 その辺を指摘してみたところ。

「私が女の子だからかもしれないですけれど、甘いお茶とか、甘い香りとか、大好きなんです。お花みたいな香りとかも」

 そう言われて、ああ、なるほど……と思った。

 わりと貴族階層向けや軍士官階層向けの商品がこれまでうちの主要な客層だったけれど、彼女は新たな顧客層を開拓してくれそうな気がした。

 そして、今日は、午前中は昨日の商品を引き取る作業があるだけで、それは運搬部隊に任せるだけなので、俺は時間が空いている。

 午後にはまた移動が始まるので、それまでは身体を休めておこうと、起きてからもパジャマ姿のままエミリアが用意してくれた朝食をとり、ベッドに転がって読書しながら時間を過ごす。

 そんな俺を横目に、エミリアは。

「ご主人様。私は午前中、少し出かけてこようと思うのですが、よろしいでしょうか?」

 そんなことを言ってきた。

「ん? 出かけるのか? 今日は午後から移動だぞ?」

「はい。もちろん昼食もありますから、その準備までには戻ります。ちょっと、この町を歩いてきたいんです。せっかく来ましたので」

「そうか……。わかった。時間には気を付けてな。あと、知らない土地だから、迷子にならないように」

「はい。フロントに地図が置いてありましたから、大丈夫です」

 そう言って、深く一礼して部屋を出たエミリア。

 そういや、昨日は夜中に目が覚めたけど、まだ起きて何やら書き物をしていたようだけど。

 たぶん、大方、何しに行ったかは想像が付く。

 あいつ……真面目で能力も申し分ないんだが……嘘は下手くそだな。

 まあ、だからこそ信用できるとも言えるわけだが。

 ま、とりあえず、しばらくは黙って放っておくか。




 昼食の準備をしなければならない時間が近づいてきた頃に、エミリアはきっちりと食材の買い出しも済ませて帰ってきて、すぐに昼食の支度を始めた。

 特に、変わった様子はないので、そのまま特になんということもなく。

 そもそも、咎め立てる気もないからな。

「どうだった? 町中は」

「すごく賑やかな町ですね。王都と比べても引けを取らない町ですよね」

「まあな。ここは東方連邦と通じる街道の、こちら側の最後の拠点だからな。経済に関してはこっちの方が中心と言ってもいい」

「なるほど……。だからなんですね……」

「これから、2日ほどかけて、北の国境地帯へ向かう。さすがにそっちの方にはこんなでかい町はないかなぁ……」

 北の国境地帯……という言葉に、一瞬エミリアの背中がビクッと固まったのがわかった。

「これから向かうのは、そこの戦場……だったところさ。おまえが捕まった……。昨日のあの、大砲を持ってな」

「わ……わかりました……」

 静かに、努めて平静に、エミリアは頷いた。

「ああ、一つだけ言っとくが、あの後、エルフ軍も撤退が済んでてあの辺はもう戦闘地域じゃないから、うっかり戦闘に巻き込まれるようなことも当面はないし、戦後処置も終わったから、仲閒の捕虜にバッタリなんてこともないからな」

「はい……わかりました……」

 それだけ言うと、俺は読んでいた本に視線を戻し、くるっと椅子を回して後ろを向く。

 エミリアも昼食の支度の作業にもどっていこうとする。

 が。

 俺の背後で足音が一瞬ピタッと止まる。

「あの、ご主人様……」

 エミリアがこちらに向いて、声をかけてきた。

「ん? どうした?」

 くるりと椅子を正面向きに戻して、エミリアの話を聞く。

「ひとつ、お願いが……」

「なんだ? 言ってみなさい」

 静かに、落ち着かせるように、エミリアを促す。

「あの……もし、私の守備していた場所の近くを通った時は、部下の弔いをさせて欲しいのですが……」

「ん? そうか。予定に入れといていいぞ。行き方はあの一帯に来れば分かるな?」

「はい」

「それだけか?」

「はい、それだけです」

「よし、じゃあ、決まりだ。具体的なスケジュール調整はおまえに任せる」

「え? これは私の個人的な用件ですから、空き時間に私が一人で行って参りますので、調整というようなことは……」

「何を言っているんだ、エミリア。俺も行くんだよ」

「ですが、何をしに……?」

「戦闘は終わったが、あの辺おまえ一人でフラフラさせたらヤバいに決まってんだろ。こっちだってあの戦いで相当な被害出てんだ。おまえの姿見て気が立った兵隊が何するか保証の限りじゃないな。ましてや、大半がおまえの率いた部隊との戦いで出てる。おまえの顔覚えてるヤツだって、いるだろうさ。そんなとこに、おまえ一人ノコノコ出せるか」

「あの……ごめんなさい、やっぱり……」

「やめるなんて言うなよ。この機会逃したら、あんな山の奥に足を運ぶ機会なんて、二度とないかもしれないぞ」

「ご主人様……」

「だから、しっかりと齟齬のないようにスケジュール調整、しておくよーに!」

「は……はい……!」

 エミリアは嬉しそうに微笑んで、いそいそと料理作業に戻っていく。

 昼食の準備をする彼女の背中が、少し弾んでいるような、そんな感じだった。


次回投稿は8/10(金)12:00の予定。

次の移動先は、エミリアが戦い、捕まった辺りの地域。

エミリアの顔にも、やや緊張が……。

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