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俺がエルフ嫁(ドレイ)を買った件について  作者: 木場貴志
第3章~年頃の少女と一日中一緒で仕事していたら、やっぱり意識してしまう件について
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第3章~年頃の少女と一日中一緒で仕事していたら、やっぱり意識してしまう件について その2

登場人物


マサユキ

王族にも繋がる貴族の家の末息子

妾腹で末子ということもあり、継承権はなく、その代わり特に縛りもなく自由な身分

現在は家を出て、与えられた資産を元に交易商の仕事をしている

頭は切れるが性格は大らかでのんびりなところがある

貴族の家暮らしよりも、現在の気ままな生活が気に入っている


エミリア

エルフ王国の中級貴族の娘

貴族の子女の義務として、士官として軍務に就き、捕虜となった

それをマサユキが奴隷として買い取り、屋敷にやって来る

几帳面でキッチリとした性格と細やかな気遣いで、秘書役や生活管理を懸命にこなす


 まあ、ちょっと時間に余裕はなかったものの、特に約束の時間に遅れるということもなく。

 エミリアはずっと俺の側を離れず、必要な時に必要な資料をすぐに渡してくれるなど、秘書としてはやはり頼りになる。

 何より今日のいちばんのヒットは……。

「それにしてもエミリア、よくあのお茶に入ってる成分が分かったな……」

「はい、人間の方よりも嗅覚が敏感ですから、この特徴のある匂いで私には分かりました。私たちの国では、これを抽出し濃縮したものが鎮静剤や鎮痛剤として一般的に使われているんです」

「だからか……。あれ、常用しちゃマズいのか、やっぱ」

「そうですね……。私たちが使っている薬のレベルですと、結構副作用があったりしますし、惑溺性も強いですので、あれをそのままお茶として常用するのは考え物かと思います」

「そうか……。勿体ないなぁ。エミリアに指摘される前に一口だけ飲んだけど、香りも良くて美味しかったぞ、あの新種のお茶は」

「解毒処置ができれば問題ないかと思うのですが、さすがにその方法を知る者が私の配下の者にもおりませんので……」

「まあ、その危険を教えてくれたのは助かったよ。そんな危険があると分かれば、商品化するわけにはいかないからな」

「申し訳ございません……」

「謝ることじゃない。俺達が知らない問題に気付いて指摘してくれたんだから、むしろこっちが感謝するべきことだよ。これからも気付いたことはきちんと教えてくれ」

「はい、かしこまりました」

 そう頷いたエミリアの表情は、少し嬉しそうな感じに見えた。

 それから、実際に買い入れる商品を検分に倉庫へ案内される。

「わあ……良い香り……」

 エミリアが心地よさそうにくんくんと鼻をひくひくさせる。

「さっそく鼻をヒクヒクさせてるな」

「はい、とても素敵なお茶の良い匂いがしますので……」

「そうか。じゃあ、お茶好きなエミリアには、これからの仕事は楽しいかもしれないな。いろいろなお茶との出会いがあるぞ」

「それは私も楽しみです」

「いずれ、目利きの仕事も担当してもらうから、今のうちから様々なお茶との出会いを大事にしておくといい」

「はい」

「せっかくだ、ここの倉庫にあるお茶をいろいろ見て、気に入ったものがあったらサンプルをもらってくるといい」

「いいんですか?」

「ああ。やっぱり、きちんとテイスティングをしないと、お茶の評価はできないからね」

「わかりました、何種類くらいなら大丈夫でしょうか?」

「そうだな……ここだったら、10種類以上とかでも、普通にくれるよ」

「そんなにいただいても、すぐには飲めそうにありません……」

「ははは……それもそうか。じゃあ、5~6種類くらい、厳選してみたらどうだ? 俺もエミリアの好みが知りたい」

「はい……がんばります……」

「じゃ、順に一緒に見て行こうか。欲しいお茶の茶箱の番号を控えておくといい」

「はい……」

 それから、ゆっくりと時間をかけて倉庫内を巡る。

 お茶の香りを味わいながら、ゆっくりと一つ一つの箱を丁寧にのぞき込んだりするエミリア。

 香りを確かめる度に、表情がころころ変わるエミリア。

「エミリア、楽しそうだね」

「はい! だって、こんなにたくさん、素敵な香りのお茶があって……5~6種類って、それでもちょっと多いかもと思ってたんですけど、選び抜くの大変です!」

 エミリアの少し興奮を含んだ笑顔。

 すごく新鮮さを感じるなぁ。

 やっぱり、慣れてしまうとこういう興奮って忘れてしまいがちになってしまうからね。

「ゆっくり時間をかけて選ぶといい。宿に帰ったら、それぞれ二人でテイスティングしてみよう」

「はい!」

 そして、エミリアはあれこれ選び抜くのに頭を悩ませながらも、見て回った最後にはしっかりと自分の感覚で5種類を選び出して。

 うち、4種類は普段うちでも扱っているものだったが、1種類だけ、仕入れていない種類があった。

「ほう、それを選んだのか……」

 サンプルをもらい、ほくほく顔のエミリアに、そう感想を漏らすと。

「ふわっと甘い感じの香りが印象的だったので……」

「実際、それは、甘味が強いからな」

「やっぱりそうなんですか。もしかしたらと思ったんですが」

「ちょっと人を選びそうなんでな……今のところ、うちでは扱ってない。実際、あんまり市中では見かけないしな」

「そうなのですね……。でも、女の子はこういう甘いお茶も好むと思いますよ」

「そうか……なるほどな」

「すみません、いきなり差し出がましい物言いをしました」

「いいんだ。そういう意見が聞きたかった。まあ、帰ってからゆっくりその辺の話はじっくり聞くとして……あと1カ所、見て行くところがあるから付き合ってくれ」

「はい」

 お茶の倉庫を後にして、今度はまた別の倉庫へ向かう。

 そこは……。

「あそこですか? 随分物々しいような……」

「まあな」

 俺が頷いた時、ふと、エミリアの鼻がひくひくと動く。

「硝煙の匂い……」

「まあ、そういうことだ」

「そう言えば、ご主人様は武器関係も扱ってらっしゃるんでしたね……」

「こっちはわりとついでな感じだけどな。今、こういうご時世だから、うちみたいな嗜好品を扱ってるようなところでも、軍関係が大口の顧客だったりするんでね。調達を頼まれたりもするんだよ」

「ああ、そういうことは私の国の方でもよくありますね」

「だろ? そんな感じだよ」

「そんなところへ、私を連れて行って良いのですか?」

「ん? 秘書を連れてったらおかしいか?」

「いえ、そういうことじゃなく……私は仮にも敵国の士官です……」

「ああ、そう言えばそうだったな。だが、以前はどうあれ、今の君の職業は私の秘書だ」

「は……はぁ……」

「どのみち、戦争が終わるか、俺達の住んでいる都がエルフ王国軍の手に落ちるかするまで、きみは国へは帰れない。となれば、知られて困ることもないだろう」

「……そうですね………」

 曖昧なエミリアの返事。

 表情には、少し後ろめたさの陰があった。

 エミリアはこういうとこ、とことんクソ真面目だからなぁ……。

 嫌いじゃないけどな、そういうとこ。

 それに、エミリアのそういう背景を分かった上で連れて行くのは、一つの目的があってのことなのだ。

「じゃ、一緒に来なさい」

「はい」

 入口で入場の照会を済ませて、二人、中へ通される。

 エミリアのエルフ耳に、ちょっと警備員が怪訝な顔をするが、正式な申請をして許可が出ているので、特にとがめ立てもなく、通される。

 が、エミリアは少し居心地が悪そうだ。

 まあ、無理もないか。

 その耳だけで、ここでは監視対象ではあるからな。

 一応、首にはうちの奴隷であることを示す、当家のエンブレムの付いたチョーカーを付けているし、入口でもらった入館証も首から下げているので、捕まったりすることはない。

 そして、目的の品物の場所へ辿り着く。

「これか……」

「これは……!」

 大型の大砲が10門。

 綺麗に並べられている。

「ご主人様、これは、ご主人様が買い付けたものでしょうか?」

「これな、買い付けはうちじゃないんだけど、引き取りと搬送を依頼されていてな。一応、今日の段階で支払は済んでいるはずなんだけど……」

 傍らにいた担当者に尋ねる。

「もう決済は済んでますよね?」

「少々お待ち下さい……」

 俺達二人を案内している担当者が、書類の束をめくり始める。

 半分くらいめくったところで。

「あ、ありました。決済は既に済んでおります」

 そう言って、そこの部分の書類を見せてくれた。

 品名の入った売買契約書に、決済済みの判の押された送金書が貼り付けてある。

「じゃあ、これ、もう引き取ってもいい状態ですね」

「はい、よろしゅうございます」

「では、明日、担当を寄越します」

「かしこまりました」

「よし、じゃあ、帰ろう」

 エミリアにそう告げると。

「はい」

 エミリアは少しホッとしたように、頷いた。

 居心地悪そうだったからなぁ。

 退場の手続きをして、武器倉庫を後にすると。

「それにしても、すごい大砲ですね……」

 エミリアが溜息交じりにそう呟いた。

「あれな、最近東方連邦で開発された新式の重砲でね。北部山岳戦線の前線部隊が導入を決めたようだ。その搬入を……ほら、エミリアたちを護送してきたあの士官を通じて、うちに依頼があった……ということさ」

「そんなことまで私に話してよろしいのですか?」

 エミリアがそう訊ねる。

「どのみち、こういう関係の書類の処理も、これからエミリアの所へ回るし、品物の出入りの管理も任せるわけだから、まあ、隠すだけ無駄だな」

「はあ……」

 エミリアは一瞬、少し呆れたような顔をする。

 すぐにその表情を隠すように、普段の顔に戻すと。

「では、これで宿に戻るのですね?」

「ああ、帰ろう。宿に戻ったら、さっきのお茶のテイスティングだ」

「はい」

 エミリアは頷いて、俺の半歩後を付いてくるようにして、一緒に宿への道を歩く。

 うん、なんか、いいな、こういうの……。

 ……って、今俺、何考えた?

 なんか、ちょっと、変に意識してしまっているかもしれないな……。


次回投稿は8/8(水)12:00の予定。

次への移動前の午前中、外出するエミリア。

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