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俺がエルフ嫁(ドレイ)を買った件について  作者: 木場貴志
プロローグ~俺が奴隷を買うに至った件について
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プロローグ~俺が奴隷を買うに至った件について

登場人物


マサユキ

王族にも繋がる貴族の家の末息子

妾腹で末子ということもあり、継承権はなく、その代わり特に縛りもなく自由な身分

現在は家を出て、与えられた資産を元に交易商の仕事をしている

頭は切れるが性格は大らかでのんびりなところがある

貴族の家暮らしよりも、現在の気ままな生活が気に入っている


ジョゼ

マサユキの家の家宰


レド

マサユキと幼馴染み

現在は軍で高級士官を務める

「そうですか……今回もまた空振りですか……」

 ギルドの親方の前で、俺は大きく肩を落とす。

「まあ、そう落ち込みなさんなよ。正直言うけど、あんたの条件に当てはまる人材なんて、だいたいあんたと同じ貴族の身分の人間だよ。そうそう雇われようなんて、よっぽど金に困ってない限り、考えないんじゃないかねぇ」

「まあ、それはそうなんですが……」

 至極もっともな親方の言葉。

 だけど、やっぱり諦めきれない。

 僕は追加の金貨を出して、親方に渡そうとする。

 当然、依頼募集期間延長のためのお金だ。

 だが、親方はそれを見るなり、僕の言葉を待たずに。

「やめときなよ、ダンナ。これ以上は無駄金だよ。今回が3度目だろ? これ以上は何度続けたって同じだ。なり手がいないってわかりきった依頼をこれ以上斡旋するなんざ、俺の信用に関わるからな」

 そう言って、俺が差し出しかけた金貨を押し返す。

 見つかる可能性の低すぎる依頼で何度も紹介料を取るのも、さすがに気が引けたらしい。

 ここの親方は、そういうところは良心的だ。

 だからこそ、安心して仕事の仲介を頼めるというものだが。

 そして、取り外した依頼書を手元でひらひらさせながら。

「あんたんとこも使用人ぐらいいるだろう? そんなにこういうヤツが欲しかったら、あんたが自分とこの使用人を使えるように仕込むしかないんじゃないのかい?」

「それを言われちゃ、ぐうの音も出ないけどさ。それをやろうにも、その間俺の業務を少なくともそれにかける時間の分は止めないといけなくて。タダでさえ商売が軌道に乗ってきて俺の仕事がいっぱいいっぱいなところに、その時間まで割ける状況じゃなくて困ってるんですよ……」

「まあ、そういうことなら仕方ねえな。まあ、条件に合いそうなヤツが近隣のギルドに出入りしてるって話でも聞いたら、ダンナに知らせてやるよ。あんま、期待できねぇとは思うけどな。この仲介料は、そん時にいただくよ」

 俺はここのギルドの親方のこういうところは好きだ。

 彼がこうまで言う以上、こちらも引き下がるべきか。

「わかった。それじゃあ、もし引き受けてくれそうな人の噂でも聞いたら、教えて下さいよ。じゃあ、また」

「まいど」

 親方の声を背に、ギルドをあとにする。

 仕事場も兼ねた自分の屋敷に戻ると、掃除中のメイドたちがそれぞれ掃除の手を止めて

「お帰りなさいませ」

と、迎える。

「ジョゼを俺の部屋に呼んでくれ」

「かしこまりました」

 そう言い付けて、事務所を兼ねた自分の書斎に入り、自分の椅子に着かれた身体を沈めるように預けると。

 程なくして、ドアをノックする音が。

「旦那様、お呼びと伺いましたが」

「ああ、ジョゼ。入ってくれ」

「失礼致します」

 恭しくお辞儀をして、ジョゼが部屋に入る。

「マサユキ様、その浮かないご様子ですと、例の件、やはり不首尾でしたか」

「ジョゼにはすぐにバレるな。まあ、そういうことだ。やはり、俺の仕事を減らしてでも、今いる者の中から、俺の片腕になって仕事をこなせる者を育てるしかなさそうだ」

 そう言って、一つ溜息。

 すると、ジョゼは。

「実はマサユキ様がお出かけになられたのとは入れ違いに、ご友人のレアンドロ少佐がお見えになられまして。ちょうど出かけたところと伝えましたところ、別の所用を済ませてから、改めていらっしゃるとのことでした。かなりの急用のようです」

「レドが? なんだろう?」

 レドは俺の幼馴染み。

 代々家どうしが親しかったこともあって、何かと昔からつるんでた仲。

 今は、王国軍の士官として出仕していて、今はエルフの国との戦争の最中。

 彼も部隊長として出征していたはずだが、こっちに戻ってきたということは、配置換えにでもなったんだろうか?

 会うのは出征以来2年ぶりくらいになるから、久々に会えるのは楽しみだ。

 今夜は酒でも酌み交わせそうだなぁ。

 ジョゼの報告にそんなことを思っていると、バタバタバタと廊下から慌ただしい足音がこちらに響いてくる。

 そして。

「マサユキ、いるか!?」

 バンッと乱暴に扉が開いて、噂の当人が姿を現した。

 随分急いでいる様子だが……。

「どうしたんだ、レド。随分慌てて」

「あんまり時間がないんだ。すぐにまた前線に戻らなきゃならない」

「そうなのか? じゃあなんで今日こっちに戻ってきてるんだ?」

「実は、数日前の戦闘で捕らえた捕虜を護送してきたんだ。任務も完了したし、すぐに戻らなきゃいけない」

「そうだったのか。今夜辺り、ゆっくり酒でも飲めるかと思ったんだが……残念だな」

「まあ、そう言うな。これも仕事だ。それよりも、おまえに伝えなきゃならないことがあって、それで立ち寄ったんだ」

「伝えなきゃならないこと? なんだ?」

「おまえさ、前々から外国語にも堪能な秘書と仕事のマネージメントができる人材探してるって言ってたろ。今回の捕虜に打って付けの人材がいるんだよ。調査書、持ってきた」

 レドは俺の机に数枚の書類を置いた。

「どれどれ……」

 書類の中身に目を通すと……。

「階級は大尉で性別は女……撤退戦を殿になって捕まったのか。踏みとどまって谷筋道の急坂の上に布陣して1個連隊の包囲攻撃を受けきって味方を逃がしたのか……すごいなこれは」

「まったく、ほとほと手を焼いたよ。道は封鎖するように陣地を作って、1個中隊で激しく抵抗してな。こっちも山肌をよじ登って周りを囲んでようやく総攻めにかかったんだが」

「うん」

「最後は、朝になって総攻撃をかけてみれば、陣地はもぬけの殻。陣地脇の洞窟に潜んで、無人の陣に俺達が唖然としてる中、自分と身近な兵10人程で奇襲攻撃をかけてきた。とんでもないヤツだよ」

「残りの兵はどうした?」

「捕らえたあとで尋問したら、洞窟が包囲網の裏側に抜けていてな。そこから夜明け前にあらかた逃がしてしまったということだ。最後の奇襲は追撃させないための時間稼ぎで、ある程度戦ったらあっさり降服してきたよ」

「優秀な指揮官じゃないか」

「確かにな。だが、おかげでこっちは一カ所に集まったところを集中攻撃されて大損害だよ……」

 レドはそう、ちょっとぼやく。

「まあ、そんなことより、用件なんだが。実はその捕虜が、近く奴隷として競売に出されるんだ。今日はその為に、こっちまで護送してきたというワケなんだ」

「なるほどね。なんでその情報を俺に? うちは奴隷は取らない主義なのは知ってるだろ」

 実際、うちはメイドのような使用人はいるけど、みんな奴隷ではなく、普通に従業員として雇った者ばかり。

 それはうちの家では代々わりと当たり前なことで、俺も独立してからも同じようにしていた。

 昔から他の貴族の屋敷に出入りすることもあったけど、その時に見かける奴隷のひどい扱いようは、見ていて気持ちのいいものでもなかったし、奴隷を買おうなんて考えたこともなかった。

 それに、基本的に奴隷制度は戦争捕虜に対する処遇であり、戦争が終わったり、捕虜交換だったりで国へ帰ってしまう。

 だから、あまり奴隷の労働力に頼りすぎると、その時に問題が多い。

 それも、うちが奴隷を取らなかった理由の一つだ。

「おまえ、言語が堪能で右腕になれるヤツを探してるけど見つからないって言ってただろ。今回の、丁度いいと思ってな」

「確かに、これだけやり手の指揮官だから申し分ないと思うんだけど、戦争捕虜じゃ一時しのぎだからなぁ……」

「それはそうだけど、しばらくの間でも、いるといないとじゃ大違いだろ」

「それは確かに……」

 少しの間でも俺の仕事を一部任せることができれば、うちの使用人に言語や仕事を教える時間も作れるだろう。

 そう考えると……確かに買いかもしれない。

「どうやら、その気になったみたいだな」

「ああ、レドの言う通りだ。で、幾らぐらいで入札すればいいかな……?」

「実は……」

 こうして、俺は初めて奴隷というものを買うことになったのだった。




というわけで、連載3作目でございます。(過去2作は18禁)

次回投稿は7/18(水)12:00予定です。

マサユキが買った奴隷……女指揮官とは聞いていたが、実際に会ってみたら……。

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