プロローグⅠ
私の処女作になります。
拙い箇所もあるかと存じますが、それも含めて楽しんでくださると幸いです。
俺は三十路のニート。名前は古河春斗と言う。ニートとなる前は、理系の大学を卒業し真面目に仕事をするつもりでいた。つもりでいた。ちなみに、彼女いない歴は年齢と一致する。こればっかりは仕方ない。
そしてある日、俺は夜食を買いに行った。健康的にどうなのかと言われると耳が痛いが、腹が減っては戦はできぬというではないか。ゲームをしたりマンガを読んだり、まあ色々と、頭を使うのだ。うん。
そんな苦しい御託を並べながら、コンビニへ向かった。考え事をしながら歩いていたのが悪かったのか、夜の道路で人がおらず、油断してスピードを出しすぎたドライバーが悪いのか。交差点で横から来た車に気づかず、轢かれた。いや、轢かれたらしい。
そして今、目の前にいかにも優しそうな女性が立っている。神々しい雲のような地面と、そこに建つ神殿。そしてその神々しさをも上回り、目を奪われてしまうほどの美女。半ば本能的に、彼女は女神だと悟った。
「あの・・・ここはどこでしょう・・・」
いや、なんとなく予想はついている。しかし、いきなり「ああっ女神さまっ!」などと声をかけるわけにはいかない。
「どちらさ・・・っ!! こ、ここ古河春斗!!!」
どうやら、あちらは俺のことを知っていたらしい。
さらに女神?は続ける。
「毎日毎日引きこもってゲームゲームマンガマンガと!!どういうつもりよ!!」
「お前はおかんか!」
思わずツッコミを入れてしまった。
「はぁ・・・あなたはなぜニートなどしているのですか?前世のあなたは、もっと真面目で紳士的だったではありませんか・・・」
「は、はぁ・・・」
いきなり前世とか言い始めたおかん。いや、女神っぽい女性。
「・・・ま、覚えているわけもありませんね。取り乱してしまい、申し訳ありませんでした。自己紹介がまだでしたね、私はセレスティア。あなたのような、若くして病や不慮の事故で亡くなった方に、次なる道を届ける者です。あなたたちの概念でいいますと・・・女神、といったところでしょうか。」
「つまり、俺は死んだのか・・・。まああれで生きてるわけもない、か。」
「ええ・・・」
静寂が訪れる。そして、ふと気になったことを尋ねてみる。
「えっと、セレスティアさん?俺が事故で亡くなってあなたに会ったということは、もしかして転生とかさせてもらえるんですかね?」
「その通りです。あなたには一応転生の資格があります。一応。」
「い、一応、といいますと・・・」
「さきほども言いましたが、あなたには前世があります。あなたの前世は、それはそれは立派な僧侶でした。美しい心を持ち、迷える人々を救い・・・。特定の宗派に固執せず、相手に合った方法で教えを説いていくそのお姿!ああ、思い出すだけでも胸がキュンって・・・」
再び訪れた静寂。さっきと異なるのは、セレスティアの顔がどんどん赤くなっていくこと。
「わ、わわ私は前世のあなたのことを評価しているのであって、現世のあなたのことはちっとも評価していませんからね!」
「なるほど、ツンデレか。」
「ツンデレでもありません!!」
真っ赤になったセレスティアは、さっきまでの神々しさはどこへいったのか、というほどに取り乱している。
「と、とにかく現世のあなたは評価していません!なので、もうこの世界に転生させるつもりはありません!別の、もっと文明が発展していない世界に行ってもらいます!」
「おおっ!つまりそれ、異世界転生ってことかっ!」
異世界転生。恐らくその手のマンガやノベルを読んだ人なら、一度は憧れたであろうイベント。そして異世界転生ではいつも決まって起こるイベントがある。
「転生特典とかもらえたりして、剣とか魔法が使える世界に行けるってことか!!」
「もしも前世のあなたであれば、そうしたかもしれませんね。ですが、現世のあなたのようなニートに、慈悲をかけるつもりはありません。島流しだと思ってくださいね!!」
「そ、そこをなんとか!!」
「いやです!往生際が悪いですね・・・。罰として、あなたの能力を操作しますからね!」
セレスティアの目の前に、なにやらスマホのような機械が現れた。彼女はそれを手に取り、操作していく。
「まず顔面偏差値は下げないといけませんね・・・。力は・・・ニートにあるわけないか。」
「ま、待って!ちょっと待って!」
「待ちません!知力も下げましょうね。ああ、もう私に色目を使えないよう、女性にしてしまいましょう。」
「色目?ははーん、やはりツンデレだな。」
またしても静寂。もともと火照っていたセレスティアの顔が、さらに赤くなっていく。
「もういいです!すべてのステータスを反転させます!」
「は、反転・・・!?」
真っ赤になったセレスティアは、スマホっぽい機械を操作する。
(もう、これで彼の前世の姿に振り回されずに済む。これでいいのです・・・。)
「これからは非力でおバカな女性として、生きていってくださいね!
転生する場所は考慮してあげます。女性が一人で立っていると危険な世界ですから。早めにいい男でも見つけることですね!」
勢いに任せ、転生を開始するセレスティア。気づくと、春斗の周囲に魔法陣のようなものが出現し、身体がふわっと浮く。
「では、さようなら。向こうの世界で、しっかりと反省してくださいね!!」
「ちょ、ちょっと待ったああああぁーーー!」
そんな叫びも空しく、視界は真っ白に染まった・・・。
次回はもちろんプロローグⅡとなります。
展開を予想しながら楽しんでいただけると喜びます!
また、感想やご意見などお待ちしております!