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童謡に動揺  作者: あまみ
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遺産相続人は…… ☆こいのぼり☆

「屋根よりタカイか……」

今度流れてきたのは、なんとも明るくのんびりとした情景を表しただけの曲だ。さすがにこの曲について、妙に怖い話や妖しい話には展開するまい。ホッと安堵して胸をなでおろしていると、来栖は同じ言葉を繰り返していた。

「屋根よりタカイ……タカイだよ、タカイ……ふふっ死んじゃってるよ」

「おい、今、どんな漢字想像したっ!」

なんでいきなり死ぬとかいう言葉が出てくるのか、思わずぎょっとして来栖を見た。だが、当の来栖はといえば、スマホケースから顔を上げてもくれぬまま、何か企むような嫌な笑顔でもってタカイと言っている。

「タカイタカーイ……殺」

「タカイじゃなく高いだろ?」

「だから、自殺でしょ? 死んじゃうんでしょ?」

言われて気が付いた、来栖が言いたいのは”高い”じゃなく”他界”か、つまり、死んじゃうの隠語というかぼかした言葉というか……っていうか、なんで屋根より他界! もう、飛び降り自殺しか思い浮かばないよ。

「あぁ……なるほど、他界か、ご臨終か……」

「怖いねぇ、自殺志願者の歌か」

一瞬、その言葉に頷きそうになってしまうが、目の端にうつった、ディフォルメされた鯉のぼりのかわいいイラストを見て、その変な想像を振り払った。

「いや、絶対違うから」

明らかに、来栖が故意に話を変な方向へもっていっている。童謡で他界なんて言葉が使われるわけがない。来栖の斜め上な言葉に振り回されてはいけない。

「でもさぁ、おかしいと思わない? 鯉のぼりが主人公でしょう? 真鯉がお父さんで、緋鯉は子どもたち……本人を中心にもってくれば、つまり祖父とその孫という系図が見えてくるよ」

振り回されてはいけないと、思っているのにあぁなるほどと、ついつい聞いてしまうのが私の悪い癖か。そういえば、真鯉と緋鯉の関係が親子かと思っていたが、そういわれて見るとひとり間にいるだけで、関係ががらりと変わってしまう。

「被害者のお父さんも、被害者の子どもたちも、面白そうに泳いでるってあたりで、きっと、遺産相続でもめてるね」

ふふふっと小さく笑う様を見て、葬儀の間で醜く争っている祖父と孫、そして、それを傍からニヤニヤしながら見ている家政婦の姿まで想像できてしまう。まさに、どこぞのサスペンスの世界だ。

「子どもがいるなら遺産はおじいちゃんにいかないでしょ」

「保険金だよきっと」

「自殺者に保険金でないから」

「あれ? 出るはずだよ、ほら何年入ってたらぁとか制約あったとは思うけど」

「えっ……と……あっ、でもそうか、出ないなら、保険金を当てにして自殺なんてありえないのか……」

どんどんきな臭い話になっていく……とりあえず、そんなどろどろ泥沼状態の鯉のぼり一家にはご退場願おう……と思う間もなく、短いその曲は既に次の曲に移っていた。

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