小池くんと小山さん ☆どんぐりころころ☆
「おいけにはまって……」
電子ピアノから響いてくる曲は、変わりましてどんぐりころころどんぐりこ。転がり転がって、山から下りて、お池にはまったところだ。
こいつのことだから、言い出すことはわかりきっている。というか、そういえば以前、池マニアって何を愛でるんだろうとか言い出したことがあるから、それをまぜっかえす気なのだろう。
「お前のことだ、あれだろ? お池マニアが水を愛するのか苔を愛するのかとか……」
「いや、お池じゃなく、小池くんだったらヤバイなと思って」
「ちょいまて、小池くんって……」
クラスメイトに小池くんという男子がいる。たしか小池啓太くんだったか……ちょっとごっついこわもて系の彼は、女嫌いというか硬派というか、今時珍しくもある人種なせいで、男色を疑われてしまっている。
うわぁ、はまっての意味が、くぼみに入るというものから、かかわりがあって抜け出せなくなる、もしくは色香におぼれるという方のはまるにぴったりはまってしまう。
「こ、小池くんにはまるのか……」
そういえば、うすい本にありがちなことを、一部の友人たちが腐臭をさせながら囁いていたことがあったか……こいつはそういうの興味がないと思っていたのに、思わず色眼鏡をかけてしまいそうだ。
「しかも、あれだ、ドン・栗……つまりは、ヤツは栗のボスだ。いや、まんまの漢字で団栗とか栗に子どもの子で栗子って苗字もあるらしいけどね」
「お前、変なとこで博識だな」
「どんぐりころころの後が、実はどんぶりこじゃなく、ドン、栗子なんだよ、ほら、ぴったりはまるでしょ」
つまりは、栗子さんというどこぞの組織のでぶったボスが、小池くんにはまるのか……ちょいまて、それはショタなのか? それともガチなのか? つきつめたくないのだけれど、とりあえずしてしまった想像は、18禁マークで隠しておくことにした。
「どじょうがでてきてとか、もうはっきりとエロイでしょ」
「マテ、ズボン下げてるよ」
「ヤラナイカでしょ?」
とりあえず発展させようとする来栖の頭を叩いておいて、どんぐりころころの曲はあぶないことが判明した為、急いで電子ピアノの側まで行き、キャンセルボタンで停止させておいた。
「小山さんも罪作りだ、泣いてはどじょうをこまらせたってことは、小池くんってばベッドの中でドン・栗子にかわいがられながら、小山さんのことを思い出して……」
「ほら、曲、変わった、もう変わったよ」
自発的に変えてきたのだが、まぁ、気まぐれな来栖のことだ、これで、きっとこの話題は忘れてくれることだろう。