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童謡に動揺  作者: あまみ
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うさぎ美味しい ☆ふるさと☆

「うさぎって美味しいのかなぁ?」

まぁ、ふるさとの曲が聞こえれば、なんとなくその話題をつぶやきたいと言うところなのだろうが、まず出てくるセリフがそれといういのがなんとも来栖らしい。

 ”うさぎおいし”の歌詞を、うさぎ美味しいと理解していたのだろう。

「あれは、”追いし”だろ? 追っかけてるだけだ」

呆れが顔に出てしまうのはしょうがないこと、でも、来栖はスマホケースに夢中になっているのか、こちらにちらりとも目を向けないから関係なかろう。

「いやぁ、小ブナも釣ってるし、やっぱ食ってるよ、追っかけて獲って食ってるって」

いやまぁ、確かに釣りはしている……小さな子がきゃっかうふふとうさぎを追いかけているような、牧歌的な雰囲気ががらがらと崩れ落ち、狩猟的な雰囲気に彩りを変える。

 ついうっかりと、頭の中では焚火の前で串刺しにされた魚と、皮をむかれたうさぎの丸焼きが転がってしまう。ついでに、丸焼きうさぎを前に、来栖が涎を垂らしている姿までセットでついてきた。

「そういやぁ、うさぎおいしいってあれ、なんて歌だっけ」

そもそも、タイトルすら怪しかったらしいが、すでに私の想像の中の来栖は、それを凌駕しているから問題あるまい。

「ふるさと、だろ……おぉ、野うさぎは筋肉質であまり美味しくないんだって」

「なにっ!」

丁度手にスマホを持っていたものだから、思わず検索してみたら、案外いろいろな感想がひっかかった。まぁ、たしかに、イノシシしかりクマしかり、野生の生き物の肉は堅いものだから、うさぎも野にいれば堅くもなるのだろう。

「食用に飼育されたものは、やや臭味があるものの淡白でおいしいものだそうだ……ジビエとして売ってるけど、買ってみる? 200gで千円程度だって」

スマホ画面に、捌かれて露骨にピンクの肉片だけになったうさぎの憐れな姿があった。

「……いやでも、母に渡したところで、調理嫌がりそうだな」

そりゃそうだ、ジビエ好きな母を持つ私ならともかく、おそらく普通の部類に入るであろう来栖の母に、そんなものを見せたら卒倒しそうだ。私なら、カエルだろうとワニだろうと、食えるチャンスがあるのなら食ってみたいと思うが……来栖の母は、虫嫌いだからエビもハチミツもダメというお方だ。

「自分で調理って発想はないのか」

「お願いっ! ライ、料理してちょうだい」

「無理」

そもそも、味がわからないのだから調理しようもない。そりゃ、ネットで探せば調理方法はいくらも見つかるだろうが、肉じゃがだって上手にできない私に、未知の調理は遠慮したいところ。

「ってか、フナの味もわからんよ、シャケやアジはよく食卓にものぼるけど、フナって食ったことないね、まぁ、和食料亭ぐらいじゃないとでないんでない?」

とりあえずそんな危ない調理から逃げるべく、話題をそらそうと言ってみると、来栖はフナにも興味をそそられてしまったらしい。

「そういえば……んじゃ、うさぎ料理とフナの料理……小遣い足りるかなぁ」

「そんな無駄遣いの仕方やめい」

思わずその頭を叩いてしまったが、来栖はそんなもの気にもせず、財布の中身と、うさぎ肉&フナの代金の検討をし始めてしまっていた……。

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