去年はどうした ☆背くらべ☆
不意に、季節的にはちょっと遅い、ゴールデンウィークの曲が流れてきた。ちまきなんて食べたことがないなぁ、来栖のことだから、ちまきについて話題に出せば、おそらく食べたいとか言い出すんだろうなぁ。かしわ餅も食べてないなぁ~なんてことを考えていたら、来栖がおもむろに口を開いた。
「おととしってことは、去年は傷をつけなかったんだねぇ」
言われて見れば、たしかに、歌で去年のことについては言及していない。
「一年おきに計ってただけじゃない?」
「なんで? 普通なら毎年やるでしょ」
「まぁ、あんたん家はねぇ……」
そういえば、来栖の家では、柱の傷の代わりに、居間で全員集合の写真を毎年とっているらしい。
カメラからの距離や立ち位置はほぼかえないで撮っているので、ぱらぱらマンガよろしく、続けて見ると成長過程が良く分かる。子どもたちは縦に、親は横に成長している様がすばらしくよくわかると、笑いながら言っていた。毎年欠かさずやるというのは中々骨が折れる話だろう。
柱の傷だって、ちょっと去年は風邪ひいちゃったとか、忘れてたとか、今年の身長とそう変わらないとか、そんなとこだろう。
「実はおととしに兄が死んじゃってて、もう計ってくれないなぁ、あの時ちまき食べながら計ってくれたなぁ~なんて……去年も今年も、その傷を見て泣いてるんだったりして」
「いや、そこでそういう不幸にもって行くのはやめようよ」
「まぁ、たしかに兄は病弱らしかったし、若くして死んじゃったとかいう話だけど、作者はその兄だからねぇ……年の離れた弟を思っての歌だっていうし、まぁ、死んじゃった説は私の捏造だけど……」
またしても、無駄な知識の垂れ流しをしてくれるが、なるほど実際に死んだ説が全くの嘘だとわかって、ちょっとほっとしてしまった。
「ちまき食べ食べってあたり、なんかべたべたしてそうだよね」
「いやそれより、柱に傷付ける方が嫌がるでしょうが……まぁ、ちまきも気になるけど、柱に彫り傷なんて付けたら、出るとき大変よ」
「いや、アパートじゃないんだから……」
アパートならば、たしかに傷なんて付けた日には修復費用が大変だろう。というか、そもそもこの歌に出てきた家は、賃借なんかじゃないだろう。
「柱にもたれかかると富士山が見えるって、実はなにげにいい家だよね」
「あそっか、そうだよねぇ……家から富士山が見える家か……しかも、居間……ほぼ一階だよね? ってことは、まわりも平屋だらけとかの開けた住宅街……一等地っぽいね」
「ふっ金持ちの考えることはわからんねぇ」
一瞬、郷愁を感じていた歌が、成金趣味に塗り替えられた気がして、思わず来栖の頭を叩いていた。




