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41.二日目(中)

「ブーホ!!この愚か者がああああああああああああああああああぁっ!!」


 終わった……と思った俺とブーホ王子の間に、一人の男が割り込み、ブーホ王子を一喝した。痩身ながらどこか気品を感じるその男は、ブーホ王子の首根っこを押さえこみ、自らもまた、床にひざまずいた。


「エルク陛下、そ、そして偉大にて至尊なるゆ、唯一無二の絶対者、カ、カイル=サーベルト様……このたびは愚弟の無礼な振る舞い、誠に申し訳ございません!!!!!」


 突然の乱入者に、俺は思考が追い付かない。一体何者だと思った矢先に、押さえつけられたブーホ王子が、目を白黒させながら答えを教えてくれた。


「あ、兄上!?元来病弱だったうえに先の“災厄”では静養先で竜に襲われて心に傷を負い、自室から出ることも政務を行うこともできなくなったはずの兄上が、なぜここにっ!?」

「馬鹿者!わ、私が本当に恐怖を感じたのは、“竜”の災厄ではなく、あれらを虫けらのように屠る……」

 そこで、俺の方を向いた第一王子はガタガタと震えだし、その後は歯の根が噛み合わず言葉が続かなかった。

 変わって、一人の男が脇から進み出る。上品な格好をした、初老の紳士だった。

「エルク陛下、カイル様、ご機嫌うるわしゅう、私、オーギュ王国第一王子ルーホ様の教育係、兼守衛長を務めております、レッヘ・レッへリーニ・トリと申します。どうぞお見知りおきを」

「は、はあ……こりゃどうも」

 優雅に一例するレッへに対して、俺は間の抜けたような返事を返す。

「ブーホ様のご様子を、一部の家来が不安に思って、私のところへ報告に来ましてな。そのことをルーホ様にお伝えしたところ、心の傷を押してでもこの場に行かねば国が滅びてしまうとおっしゃいまして、先ほど入国し、守衛の方に身分を明かしてこの場まで連れてきてもらった次第にございます」

 ぼかした言い方をしているが、要は監視役をブーホにつけていた、ということか。そのどこか飄々とした態度は、かなりの食わせ物であることを示唆していた。

「さあ、諸君、ブーホ様はお身体が優れない模様、会議にはルーホ様が代わって出席なさるから、ブーホ様をお連れするのだ!」

 レッへの指示に従い、彼の部下が両側からブーホ王子を抱える。我に返ったブーホ王子が、

「ば、馬鹿!何をするか!俺は国王陛下の名代だぞ!!」

 などと言いながら暴れだしたが、誰も彼に味方しようとすることはなかった。


「今は人間同士で争っているときではない、自国の中で納めてもらうなら、そうしてもらおうというカイル様のお考えか……」

「なるほど、カイル様はこうなることを見越していたのか……」

「しかし、対応が甘すぎではないか?いつもならばあの程度では許さないと思うのだが……」

 ひそひそとそんな声が聞こえてくるが、俺にできることはただ背中の冷や汗を隠し、全て予想通りでしたよ、という表情で席に座ることだけであった。


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