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40.二日目(上)

 日付が変わって、翌、二日目会議。今日はようやく今後の“災厄”対策的なあれこれが話し合われるはずの場なのだが……

 正直、眠い。

 昨日怖くて一睡もできなかった。結局何もされなかったけど、出されたご飯だって睡眠薬か麻酔薬でも入ってるんじゃないかと思うとろくに口を通らなかったし、体力的にも非常にコンディションが悪い。

「ふあぁ……」

 あくびが出そうになり、慌てて口を閉じる。しかし、それを目ざとく見つける人物がいた。


「おや、カイル殿、ずいぶん眠たそうだが」

 噛み殺したあくびだったが、エルク陛下は見逃してくれない。

「あ、いや、そのエリューナのせいで寝れなくて、ハハッ」

 俺は笑ってごまかす。あんたがエリューナに任せたせいだ、と言いたいところだが、そんなニュアンスを出しては不敬罪でどうなってしまうかわかったものじゃない。


「美人で有名なあのエリューナ嬢が」

「寝かせてくれなかっただと!?」

「くっ、なんて羨ましい……」

 後から警備兵がぼそぼそっと言っている声が聞こえてくるが、そういう意味じゃないんだよ……説明するわけにもいかないので、放っておくしかないのだが……と、いうかあんたらエリューナの本性知らないんじゃない?皇帝の間近で警備するってことは、それなりな出自の兵士でしょ?そんなんで大丈夫なの?


「そうか、やはりエリューナ嬢に応対を任せたのは正解だったようだな」

 陛下もドヤ顔しないでください……

 こっそり溜息を吐くも、どうにかごまかせたか……と思った矢先に、その言葉は聞こえてきた。


「……ケッ、面白くもない。何が救世の英雄様だ」

 会議の参加者の一人が、露骨に敵意を俺に向けて放っていた。


「オーギュ王国のブーホ第二王子か……」

「やはりやらかしたか……」

「ありゃ、滅びた(・・・)な……」


 会場は一瞬で葬儀場のように静まり返る。そして聞こえてきた囁き声が相手の出自を教えてくれた。ってか、“死んだな”、ならまだしも、“滅びたな”、って……ちょっと悪口を言われたら、一国丸ごと滅ぼす奴だと俺は思われているらしい。

 ――そう、それが問題だ。

 どうやって収集つけよう、これ?


 俺はだらだらと流れる冷や汗をなんとか悟られないよう、ポーカーフェイスでじっとブーホ王子の顔を見る。一方の王子も、さすがに会場の雰囲気から自分がやってしまったことを悟ったか。しかしそこで止まるようなら初めから失言などはしないだろう。逆に感情的になり、更なる口撃を俺に加えてきた。


「だ、だいたい、お前みたいな下賤の出に、なんで俺が下座へ行かねばならないんだ!クソみたいな歌を歌わせやがって!挙句はあの可憐なるエリューナ嬢と一つ屋根の下だと!貴様みたいな――この平民風情が!!」

 

 エリューナのことも知ってるのか……それにしても、本当に三下っぽい王子だな……

 ――などといつまでも現実逃避しているわけにはいかない。


「な、なぜブーホ様はまだ肉塊になっていないんだ……」

「い、一刻も早く逃げたい……」

「だめですぞ、今逃げるとカイル様の不興を買うかも……」

「しかし、カイル殿はなぜ何もなさらないんだ……」


 だんだん他の参加者達が怪訝な様子になってくる。

 と、とりあえず、なんとかごまかさないと!!俺は強引に、今やっとブーホ王子に話しかけられていることに気づいたかのような表情を作った。

「……へ?なんか言った?ごめん、寝ぼけてて聞いてなかった」

 さっきまでの眠そうな様子を伏線として回収する完璧なフォロー!!どうだ!!と思うのもつかの間……そう言われたブーホ王子は、当然ながら激昂していた。

「貴様ああああああああああああああああああああああああああっ!!どこまで俺を馬鹿にすれば気が済むんだあああああああああああああああああああっ!!!!」

 叫びながら殴りかかってくる!まずい、このままだと俺が力を失ったことが周囲にばれ――


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