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13.剣士のトップもやって来ました

 帝国騎士長シャルロッテ。女性の身でありながら鍛錬に鍛錬を重ね帝国騎士長まで上り詰めた努力の人である。性別のハンデを乗り越えるために自らに課した訓練は凄まじくただでさえ厳しい訓練を受ける男性騎士の三倍。“シャルロッテには一日が三十時間あるのでは”と言われるほどのものであったとか。年齢は40前でありながら運動量のおかげかその美貌には陰りが全くないものの、全身にまとった筋肉の鎧がかつての俺にハーレムメンバー入りさせることを躊躇させた。

 とはいえマローと同じように俺の剣技にほれ込んでしまっているので、マローが来た以上彼女が来る可能性も考慮に入れていたのだが――タイミングが悪い。なぜなら、


「何しに来よった筋肉娘。今はわしがカイル師に高尚な教えを乞うていたところじゃ」

「いきなり他人の体のことに言及するとは、大した組織トップがいるものですねえ魔法使いには。規律ある騎士団にはとても考えられませんよ」

「騎士長が筋肉のことを言われて何を言うか。己の肉体に誇りを持てない騎士に守られてはさぞ陛下もご不安だろうて」

「そういう問題じゃないんですけどねえ、ちゃーんと人権講習会受けてますかあ?そう言えば年寄りはよく眠くなるんですってねえ」

「その言葉、そっくりそのまま返させてもらおう。年齢で相手の人格を攻撃するなど、大した人権感覚じゃて」


 魔法使いと騎士は犬猿の仲なのである。それにしても、帝国最強のこの二人がここで暴れ出したりしたら今の俺には手が付けられない。慌てて仲裁に入った。


「はいはいそこまでだ。そもそも人権とか言い出したら帝都でハーレム作ってた俺どうなるのって話だから」

「――これは失礼しました師匠。別に師匠の行いに不満があったわけではございません」

「そもそもカイル師のところの娘っ子たちは皆本気でカイル師を慕っておったからのう……」

 

 それはないと思うんだが、とにかく俺の言うことは二人ともよく聞いてくれて無事殺気立った雰囲気は治まった。これもかつての俺の力のおかげである。今はないけど。


「それで、シャルロッテはどうしてここに?そして――ラーニャはどうしたんだ?」


 とりあえず彼女にも聞いてみる。と、いうか実はさっきからずっとシャルロッテは顔を赤らめているラーニャを肩に抱えているのだ。気になって仕方がない。


「はい、師匠が隠居されたと聞きましたので挨拶に来ましたところ、ラーニャが死狼に襲われかけていたので死狼を切り捨てて参りました。ただ、その時にショックで腰が抜けてしまったようで……」

「ちょ、余計なことまで言わないでください騎士長!」


 ラーニャがシャルロッテの肩にぶらさがりながらじたばたともがく。


「でも言わんとこの状況に説明がつかんだろう」

「うう……騎士長の意地悪……」


 顔を赤らめるラーニャ。プシューと湯気が立ち上っているかのようだ。命を助けてもらった割にラーニャの態度が軽いのはシャルロッテが彼女の大叔母に当たるからである。シャルロッテの歳の離れた兄がラーニャの祖父という関係だ。


「だからラーニャも体を鍛えなさい。あれくらいで腰が抜けるとは情けない」

「……でもカイルは柔らかい体がいいって言ってくれたし……」

 

 何か小さな声でぶつぶつと言っているが俺にはよく聞こえない。


「あたしみたいに戦闘特化ならともかく、適度な運動は逆に健康的で体も柔らかくなるさ。今でも十分スタイルはいいけど……更に高みを目指せるかもな」


 そう言ってぽんぽん、とラーニャの頭を軽く叩くと、シャルロッテは彼女を床に下ろした。どうやら腰は治ったようで、ラーニャは小さく礼をして部屋を出る。


「それにしても……死狼か……」


 まさか死狼を倒すところまで同じとは、マローと張り合いすぎじゃないだろうか。そんな意味で呟いたのだが、マローとシャルロッテは別の意味で受け取ったようだった。


「……こんなところで二体も……少し気になりますな」

「騎士隊で周辺調査をいたしましょうか?」

「いやいや、ここは魔導師集団にお任せを」

「統制も取れてないくせに」

「策敵魔法使えない奴が何を言うか」

「はいはい!それはいいから!」


 とにかく張り合うのだから困ったものだ。とはいえ魔物が出ているのは少し気になる。折角協力してくれると言うなら、お願いしてしまおうか。


「あー、勿論俺が、その、本気を出せば死狼なんてものの数じゃないのだが……折角だ、訓練として騎士と魔法使いから生きのいいのを四人ずつくらい派遣してくれてもいいかも、しれんな……勿論忙しいなら無理にとは言わないし迷惑なら遠慮なく言ってくれていいのだけど……」


「「はっ!!我が命に変えましても、精鋭たちを連れて参ります!!」」


 めっちゃ真剣な顔で言われた。

 怖い。

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