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童貞カントヤリチン説

「すまねえな」

「今日はなんだい、折り入って語りたいことがあるって」

「そうなんだよ」

「なんだね」

「まあ、そうだな」

「おう」

「なんか…」

「なによ」

「改めてってなると恥ずかしいな」

「いや、お前が呼んだんだろうよ」

「まあ、そうなんだけどさ」

「うん」

「うーむ」

「頼む、早く言ってくれ」

「まあ、そう急かないでくれ。それとも、あれかい?君は前戯もなしに挿入・・・」

「違うよ、違う。けど、今はそれでいいから、早く」

「違うけど、早くってなんだい」

「本題だよ本題」

「本題って言われると、またやりづらいじゃないか」

「やりづらいこともないだろう。何か用事があるって来て、本題がない方がびっくりするよ」

「いや、これから話すことが本題かって言われると、また、本題っていうほどでもないような気もする」

「ったく、、、ほ・ん・だ・いー!」

「聞こえてるよ」

「・・・」

「あのさ」

「おう」

「カントってのは、とんでもないヤリチンだよな」

「・・・」


「あの、カント・・・」

「聞こえてるよ」

「え、あ、cunt」

「お前それスラングだから2度と言うな」

「カントの話をしよう」

「なんでいきなり18世紀のプロイセンの哲学者の話をするんだい」

「おおう、いいツッコミをするねえ」

「人を馬鹿にしてるのか?」

「へっ、へっ」

「にしてもだ」

「おう」

「彼の性生活については、俺は正直よく知らん」

「彼は童貞だぞ」

「はあ?」

「またまた驚くねえ。君は今日オドロキの実でも食べてきたのか?」

「何だそれ。朝食はバター塗ったパン、昼飯は吉野家、晩飯は……おねーさーん」


「はーい」

「生2つと、ほっけの塩焼きとたこわさを」

「はい、生ビールお2つと、ほっけの塩焼きお1つとたこわさをお1つですね」

「ええ」

「『お』は要らないけど、それ以外は合ってるな」

「はい?」

「あ、これは彼なりのオッケーって意味だから。気にしないで」

「はい……」


「A男よ、お姉さんちょっとビビっちまったじゃないか」

「ビビってなんかいないさ。困惑しただけさ」

「ダメだよ結局」

「ビビりと困惑は違うぞ。困惑は眉間にシワが寄って、口をつぐんでいる状態だ。ビビり、すなわち恐怖は、眉が上がって、口角が横に引っ張られている状態だ。眉と目は少し似た動きをするが、口元を見れば違いがわかるぞ」

「・・・」

「何だよ黙って」

「俺の顔を見ろ」

「困惑だな」


「で、なんだっけ」

「ああ、ええと、日銀の長期金利操作の話なんだが」

「待て、A男よ」

「なんだね」

「そんな話したか?」

「してないが」

「話題変えたろ?」

「まあ、困惑でオチがついたし」

「そこじゃねえよ、その前の話に整理がついてないんだ」

「じゃあ、つけてくれよ。待ってるから」

「待てよ」

「待ってるよ」

「違う、違う。一緒に整理してくれよ。ってか、A男が言い出したんだろ」

「ん?」

「カントヤリチン説」

「おー、それ俺も思ってたんだよ」

「お前が言い出したからな」

「彼って哲学界隈では結構人気なんだよ」

「まあ、俺も名前は聞いた事ある」

「彼は『自由意志があることが人間の本質で、人間の道徳を考える時はそれをベースに考えよう』って言ったんだ」

「うむ」

「その考えは結構多くの人たちに広まったんだよ」

「うむ。まあ、割と今でも通じる考え方だよな」

「それはつまり、ヤリチn」

「お待たせしましたーっ、生2つでーす」


「・・・」

「・・・」


「タイミング」

「それな」

「まあ、最近の若い子、こんなことじゃ恥じらわないだろう」

「だろうな」

「どうせ、あの子も彼氏とヤりまくってるんだ」

「やめろ」

「バイト帰りとか、『トモきゅーん、ぃま、バイトぉゎったょぉ〜〜』みたいなLINEとか送ってさ」

「そりゃA男、お前個人の妄想だろ」

「で、そのあとめちゃめちゃSEXするわけだよ」

「知らねえよ」

「でも、『あ、やべ、コンドーム切れちゃった』とか言ってさ」

「ん、それはトモきゅんのセリフか?」

「ま、なくてもいいよねとか言って」

「よくないぞ」

「中出しするわけじゃん」

「おい」

「感触が、いいねと君が言ったから、9月3日は中出し記念日」

「最低だよ、お前は」

「んで、望まない妊娠とかするわけだろう」

「ひどいね。君は。ビール持ってきてくれた子にセクハラすんなよ」

「でもさ」

「なに」

「そうやって子供ができたとしてさ」

「話続けんのかよ」

「やっと遺伝子を1個コピーしただけなわけじゃん」

「まあ、ねえ」

「でさ、遺伝子がコピーされた子供がいたとして、それが自分の思う通りに育つわけではないだろう?」

「そりゃそうさ」

「むしろ、新聞やテレビ、学校で習うこと、友達から聞くこと、そういったことの方がその人を形作ってると思わん?」

「でも親に顔とかは似るだろ」

「顔はな」

「おう」

「でも、顔だけじゃん」

「うーん、まあ、でも大事だろ」

「女は化粧できるし」

「まあ」

「男もイケメンは多少有利かもしれんが、そこまで顔ってこともないだろう」

「まあ、そうかもな」

「だから、こうやって脳の中身がどうプログラミングされてるかの方が大事なんだよ」

「うーむ」

「遺伝子の支配より、脳を、考え方を支配する方がより人格を支配していると思わん?」

「ちょっと待て」

「なんだ? 何か間違ったか?」

「いや、そうじゃなくてさ」

「おう」

「まず乾杯しようぜ」


ゴクリゴクリ…

「で、だ」

「日銀の…」

「いや、だから話そらすなよ。まだ終わってないから」

「つまりだ」

「おう」

「哲学者カントは、一度もSEXをせずに、それでいながら彼の思想ザーメンを現代人の脳にぶっかけたトンデモ汁男優だったんだよ!!」

「…」

「ふぅ…。真実とは、明らかにしてみると、実に素っ気ないものだな」

「賢者モードかよ…。それじゃあよ、世にいるたくさんの人々がヤリチンになっちゃうじゃないか。後世に影響与えた人ってことでしょ?」

「ま、そうだな」

「じゃあ、例えば…夏目漱石」

「ヤリチンだね」

「福沢諭吉」

「あーヤリチン」

「織田信長、豊臣秀吉、徳川家康」

「ヤリチンかける3だ」

「じゃあ、逆に宮崎駿とか、村上春樹とか」

「うわーヤリチンばっかじゃねえか」

「お前直近ヤリチンしか言ってねえぞ」

「ヤリチン」

「お待たせしました〜っ、たこわさでーす」


「…」

「…」


「ヤリチンだな」

「ちげーよ。女の子なんだから、百歩譲ってヤリマンだろ?」

「ヤリマン」

「いや、ちげーから。やめろよ。店でセクハラすんな」

「でも、トモきゅんと…」

「それ、お前の妄想だから。トモくん実在するかわかんねーから」

「(タコワサウメー)」

「しかし、カント氏はなんで童貞だったのかね。哲学者ってのはモテないのかな」

「あーモテ度は知らんが、どうも彼は、女は一般的にアホでバカで理性的な話ができない動物だと思っていたらしい」

「お待たせしました〜っ、ほっけになりまーすっ」


「…」

「…」


「これさ…」

「おう」

「逆にセクハラされてる可能性あるぞ」

「は?」

「セクハラさせた、と思わせるセクハラだよ」

「え?」

「俺たちが、セクハラ的な話をしてしまった、と罪悪感に苛む様子を見てニヤニヤする、という店員側の嫌がらせだ」

「高度なプレイすぎるだろ」

「トモきゅん仕込みだな」

「だからトモきゅんはいねーよ」

「ということでさ、」

「なんだよ」

「俺もヤリチンを目指す事にしたわ」

「やれやれ…お前しがない社畜だろ?」

「否定しない」

「じゃあ、どうやって?」

「Webに小説投稿するんだよ」


本日のお会計:1650円也

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