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うまく転生できません  作者: 紫野 月
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これって転生ですか?

 侍女の呼びかける声でハッと我に返った。

 あら、私、今までどうしていたのかしら。まさか立ったままで眠ってた?

 なんだかまだ頭がボーっとしている。

 ボンヤリしている私に侍女の一人が鏡を見るよう促がしてきた。どうやら仕度が整ったようだ。


 あら、私、こんな顔だったかしら? 確かに見覚えのある顔だけど、なんだか違うような…

 自分の顔に違和感を覚え姿見から目が離せない。そんな私を侍女たちは怪訝そうに見守っていた。だがしかし、いつまでたってもただジーっと鏡を凝視して動こうとしない私に痺れを切らしたのか「そろそろお急ぎになりませんと」と、声をかけてきた。

 そうだ、急がなければ。

 お妃候補として新しく王太子宮入られた、侯爵令嬢ベアトリーチェ様のお披露目を兼ねたお茶会がこれから開かれるのだ。ベアトリーチェ様はお妃候補の中で一番身分が高く、そして国一番の美姫だと噂されているお方で___

 ……えっ? ベアトリーチェって私のことじゃなかったかしら。ちょっと待って。えーと、新しいお妃候補って、確かもう候補から降ろされて引きこもり生活を送っていたはず。いやいやいや、ちょっと待って。ここ私の部屋じゃないし。それにこの顔、ベアトリーチェ(わたしじゃない! これ、これは、このプラチナブロンドに菫色の瞳のこの顔は、あの伯爵令嬢エミーリア。

 

 ……なんで?

 私は、今、夢を見ているの?

 思わず自分の頬をつねってみた。……痛い。

 これは現実? 今が現実?

 それじゃ、さっきまで見ていたのが夢? 

 私、夢の中でベアトリーチェ様になっていたの?

 そんなわけないじゃない。あれは現実だった。でもこれも現実。ダメ。理解不能。誰か私にちゃんと分かるように説明して。

 すると膨大な量のデータが頭の中に流れ込んできた。いきなりこんなに処理出来ないわよ! という訳で、私の意識はブラックアウトしてしまいました。




 それからまる三日寝込んだ。

 傍目には眠っているように見えただろうが脳内は忙しく働いていたので、今凄く疲れている。

 どうやら私は伯爵令嬢エミーリアとして生まれ変わったようだ。

 これって転生? 時間が巻き戻って、しかもなりたいと願った人間に生まれ変わるなんて、そんな都合のいい転生なんてあるんだろうか?

 なんか、おかしい。そう思わないでもなかったが、エミーリアとして生まれ変わった。それが大前提だとデータにあるのだから、そこは深く突っ込まないことにした。それにいくら考えても分からないしね。




 コホン。それでは改めまして。私、エミーリアと申します。

 私、少しだけ前世の記憶があるんです。

 前世の私は自己チューで回りが見えない凄くイタイお姫様でした。自分が好きになった人は当然自分の事を好きになると思い込んでいて、そのせいで哀れな結末を迎えました。

 失意の私は女神様に祈りました。

 好きになった人に愛されたい。みんなから愛されるアノ人のようになりたいと。


 私、エミーリアは没落しかかっている伯爵家の娘として生まれました。温かい家族に囲まれて、貧乏だけど何不自由なく暮らしておりました。

 15歳で社交界にデビューする時、仕度に必要な物を用意するお金が勿体無くてお姉様のお下がりで行くことにしました。ハッキリ言って流行遅れの物ばかりでしたが「どうせ王宮に行くのは今日だけなのだから別にいいや」なんて軽い気持ちで参加したら、なんだか異常に目立ってしまい、とても居心地の悪い思いをしました。みんなの視線を凄く感じていたたまれません。

 こんなに悪目立ちするんならドレスだけでも新調するんだった。そう後悔していたら、どういうわけか王太子殿下にダンスのお相手を申し込まれました。踊っている間、殿下は色々お話をして下さいました。とても楽しくて周囲の目も気にならなくなり、ラストの曲までずーっと踊り続けていました。

 その翌日。王宮から御使者がやって来て、王女殿下のお話し相手として参内するようにと申し付けられました。そして私の楽しい王宮ライフが始まったのです。


 王宮での生活は、目に映るもの口に入るもの全てがゴージャスでデラックスでまるで夢のようでした。

 お仕えすることになった王女殿下も優しく接して下さいますし、仕事仲間も皆気のいい人ばかり。そして、なによりも王太子殿下ととても親しくなれたのです。

 ある日殿下は私にこう仰られました。「このたび私の妃を選ぶため、国中の姫君に布告を出すことになった。エミーリアも候補として私の宮に上がってはもらえまいか」と。これはつまりアレですよね。上流階級特有の持って回った愛の告白ですよね。私は殿下のお言葉に感激し「喜んでお受けします」と応えた。

 

 それから有力貴族の令嬢が多数妃候補として王太子宮に上がられました。

 もちろん私も王宮から王太子宮へと移りました。こっ、候補者の一人として。

 そしてつい先日、侯爵令嬢ベアトリーチェ様が王太子宮へやって来られたのです。私はそのお披露目会の日にぶっ倒れ、意識を失っている間に前世を思い出し… いや、どちらかというと、ベアトリーチェだった私が何故かエミーリアに成り代わっていて、エミーリアの基本データを脳内にインプットされた…みたいな。

 とっ、とにかく前世を思い出した私はエミーリア心に誓いました。今度こそは間違えない。皆から愛される明るく優しい… そう『天使のような女の子になる!』と。


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