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うまく転生できません  作者: 紫野 月
3/12

悪役令嬢になるつもりはなかったんです

 祝福の鐘の音がここまで聞こえてくる。

 今日は大神殿で王太子様の結婚式が執り行われているのだ。

 あの悪夢のような一日から一年が過ぎた。

 私はあまりのショックから立ち直ることが出来ず引きこもり生活をしている。というか、世間でアノ件が色々取り沙汰されていて、恥ずかしくて外に出られないのだ。



 今になってお妃選びの全容が見えてきた。

 王太子様とあの伯爵令嬢は、もうずーっと前から相思相愛の仲だったらしいのだ。なので、そのまますんなりお二人は結婚するつもりでいたのだが、そこへ「待った!」をかけたのが、我が侯爵家を含む有力貴族達だった。年頃の娘を持つ貴族なら「あわよくば我が娘をお妃に…」って考えちゃうわよね。そこで王族と有力貴族を巻き込むスッタモンダがあり、なんとか二人の結婚話を白紙にさせお妃選びプロジェクトを発動させたというのだ。

 国中にお妃選びをすると布告し、自薦他薦を問わず名乗りを上げた女性は全て国の役人が審議し、基準をクリアした者達は最終選考の日まで王太子宮に召し上げる。私が14歳の誕生を迎え、お妃候補の資格を得て王太子宮へ上がった途端その布告が取り下げられたというから、お父様が裏で手を引いていたに違いない。

 私はそんな裏事情など一切知らされずに… それどころか、両親からは私が一番王太子様に相応しいとか、候補者の中で一際美しい私の事を王太子様もきっと好きになってくれるとか。なんだか、もう私がお妃に選ばれるのが決まっているように言われていたから、私もその気になっちゃって…


 今思うと王太子宮で過ごしていた頃の私は、女王様気取りの物凄く嫌な奴だった。

 王太子様の前では猫なで声で甘え、虫も殺さぬか弱い淑女を演じた。

 他の候補者には、その方々の身分や容姿を貶めてあげつらったり、少しでも無作法があった時には皆の前で批判し恥をかかせて笑っていた。

 生活習慣やお部屋の調度品それにお食事のことで結構我が儘を言っていたし、王太子宮の使用人からもきっといいようには思われていなかっただろう。

 私が候補を降ろされた途端、王太子宮で行った数々の悪行が全部暴露されて、私はとんでもなく意地悪で高慢でどうしようもない女だと噂された。

 そんな私に苛め抜かれながらも一途に王太子様を想い続けた伯爵令嬢エミーリアは、一躍お妃最有力候補に躍り出て、そして本日めでたく二人は華燭の典を挙げたのだ。


 おそらくどんなに年月が過ぎ去ろうが、地に落ちた私の評判は浮上することはないだろう。

 社交界デビューする前から絶世の美姫と讃えられていたのに、今では結婚したくない令嬢No.1だ。

 こんな私に良い縁談など期待できない。とんでもない格下に嫁ぐか、事故物件と知りつつ嫁ぐか、人質同然で他国へ行くか… それともまさかの修道女コース。

 どれもいや!!

 もういいじゃん。このままでいいよ。

 どうせどこにいったって白い目で見られちゃうんだから、このまま引きこもってた方がまだいい。そうだ、王都を出よう。こんな醜聞にまみれた所から離れて、田舎の領地に引っ込んで静かに暮そう。そうだ、それがいい。



 あーあ。何がいけなかったんだろう。

 どこで間違えたんだろう。

 前世の私は恋を知らずに世を去ることに後悔し、美しく生まれ変わって恋がしたいと願った。それが叶った現世では素敵な恋をしようと頑張っただけなのに。

 どうしたら好きになった人に愛されるんだろう。どうしたらいいんだろう?

 あの伯爵令嬢……

 王太子様に愛され、宰相の御子息や護衛騎士に守られていた。

 あの伯爵令嬢エミーリアのように皆から好かれたい。

 君が好きだよって、抱きしめてもらいたい。

 そうしたらどんなに幸せな気分になれるだろうか…

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