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自殺のち少女

文章力くれぇ・・・

遠賀浜岡町のとあるアパートの203号室に住んでいる独身男性が自殺に失敗してから2日後。

彼は、あれほどの体験をしたのにも関わらず、懲りずに新たな自殺計画を練っていた。

なぜ、彼はここまで自殺に執念を持っているのか。その理由は誰かに尋ねたところでわかるはずもない。

正直な話、彼は自殺を試みるような人物には見えない。自殺を考えるような人は、もっと雰囲気が暗く近寄りがたいイメージがある。そういう者たちの自殺理由は『いじめ』や『職が見つからない』などだろう。

しかし、彼は雰囲気も明るく、大学のサークルの中でムードメーカを勤めていそうな人材だ。

なぜ、そんな人材が頑なに自殺をしようとしているか見当もつかない。

そんな考えが及ばない所で、今日も自殺の計画を実行しようとする彼の姿があるのだった。

降り続く雨のせいだろうか。小汚い部屋がじめじめして余計に汚く見える。さきほどから、失礼なくらいに汚い汚いと連呼しているが、ここで訂正しておくことがある。

この部屋が汚い原因は元々の建築物の老化の問題であって、ゴミがあちらこちらに散らばっていて掃除がされていないという意味ではない。むしろ、清掃はきちんと行っているようで、目立つようなゴミは見当たらなかった。これもまた自殺しそうにない理由の一つでもある。

掃除というのは習慣だ。何ヶ月にも渡って行うことによって自然と身についてくるものであって、気まぐれでやったところでそれは続かない。大体自殺する前に部屋を綺麗にして何の意味がある。

つまり、彼は習慣によって掃除を行っているのだ。自殺にまで追い込まれているはずの人間が掃除をするという習慣を持っているとは到底思えない。彼の人格、身の回りを観察すればするほど、自殺に固執する理由の謎が深まるばかりである。

一方、そんな謎ばかりな独身男性の様子は至って落ち着いたものだった。32インチの液晶テレビに映し出されているニュースキャスターを、煎餅を片手にぼーっと見つめている。時折、バリッと軽快な音を立てながら煎餅を頬張り、携帯を少しいじるの繰り返し。

その3つの過程の中の「テレビを見る」をしていた彼はニュースに見飽きたのだろうか、付近の床に落ちていたリモコンを拾い上げ、チャンネルを変えていく。

テレビはリモコンの指示通りに次々にチャンネルを変えていき、バラエティー番組、旅番組、ドラマ、などを映し出す。

すると、ある番組になったとたんにリモコンからの指示が途絶える。テレビに映し出されていたのはさきほどとは違うニュース番組だった。

「このニュースキャスター可愛いな」

と彼はぽつりとつぶやく。

どうやらニュースに飽きてリモコンを手にしたわけではなく、ニュースキャスターの顔に飽きたらしい。

「そういえばニュースキャスターって可愛い子多いよな。なぜなんだ。これが日本のお・も・て・な・しというやつか」

など意味不明な独り言を言っていると、

「ここで新しいニュースの情報です。」

とニュースキャスターが真剣な顔つきで速報を伝え始めた。

「最近問題となっている、雨がやまないという異常気象についてです。この異常気象について専門家に聞いてみたところ『雲の動きなどからして一向に止む気配がみえない。こんなことは前代未聞だ。』などと話しており、世界各地でもこの雨によって被害が出ているところもあるため、何か対策を考えなければとされています。それでは次のニュースで」

ニュースキャスターがそこまで言いかけると彼はテレビを消した。

彼にとってはこんなニュースはどうでもいいことだった。これから地球に隕石が衝突しようが、宇宙人が侵略してこようが、雨が降り続けて陸地がなくなろうがそんなことはどうでもいい。

どうせ死ぬんだから。

そんな風に思いながら彼はふと窓の外を見た。

「雨ねぇ・・・」

彼は雨が嫌いではなかった。雨がアスファルトに叩きつけられる音や、差している傘に当たる音、子供たちが長靴で水たまりをバチャバチャと踏みつける様子。そんな風景が嫌いじゃなかった。

別に雨が好きってわけでもないが。

彼は重い腰を上げると、少ししびれ気味の足を動かしてキッチンの方へ向かっていく。

キッチンにはいくつかの棚があり、その一つに手を伸ばして棚を開けて瓶のようなものを手にして棚を閉める。

それから、自室にある唯一の机にその瓶を置くとその付近に座った。

机に置かれたその瓶には安っぽい感じで「安楽死剤」と書かれたラベルが貼られており、彼はそのラベルをまじまじと見つめる。

この風景は以前にも見たことがある。第一回にらめっこ対決。つまり、前回自殺未遂に終わった時のロープとにらみ合った時と同じだ。

しかし、第二回にらめっこ対決は第一回のように長くは続かない。

彼は少し見つめたあとにすぐさま瓶を手にして蓋をあけると、中から錠剤を一粒取り出して手のひらに乗っける。

その錠剤はとても軽かった。手に乗せてみても、ほとんど重さを感じないくらいに。こんな軽い錠剤一粒で簡単に死んでしまう命はもっと軽い。彼はふとそう感じた。

いや、違う。彼は自分の考えを否定する。

普通の命はこんなに軽くはない。そもそも人はこんな軽い錠剤一粒で死のうとはしない。人々というのは激動の人生を歩みながら、笑い、苦しみ、悔み、喜びなどを感じながら生きていき、最後は様々な思いを背負いながら死んでいく。そんな人々と自分の命の重さを比較するなど失礼極まりない。この錠剤のように軽いのは自分の命だけだ。

彼はすぅっと大きく息を吸い込む。すってすって吸いまくって、そして止める。

今吸った空気を吐いていき、吐ききったところで錠剤を飲む。彼はそう決意した。

この行動に意味などない。ただの儀礼だ。日本人が20歳になると成人式をするように、自殺するときにも儀礼をしておこうという彼の勝手なわがままである。

そしてついに、彼の口から息がすこしずつ漏れていく。すーと音を立てながらほんのすこしずつ漏れいく息。ゆっくりではあるが確実に息が減っていく。それに伴って彼の死までの時間も近づいていく。

最初の方に比べ息を吐き出す音が小さくなっていく。だんだんと。もはや吐き出す音が聞こえなくなってくる。彼は手にぐっと力を入れて錠剤を握り締め、すべての息を吐き出すのを待つ。

そして、残りの息の量に合わせて心で数える。

3・・・・2・・・・1・・・・、

その時、彼は微かにだが何かの物音が外から聞こえた気がした。しかしそんなことは今更関係ない。

錠剤を飲むだけ。それだけの単純作業だ。飲め。飲むんだ。彼は自分にそう言い聞かせる。

・・・・・・・・・。

彼は飲めなかった。完全に手が止まっていた。

外から聞こえた物音が気になったから。そんなのは言い訳だった。

彼の必死の決意は、たかが外から聞こえたちょっとした物音に完璧に粉砕されたのだ。

彼はふぅーと大きくため息をつくのと同時に、逃げ出した自分がどうしようもなく情けないと感じる。

死ぬことを恐れた彼は、外から聞こえた物音を言い訳として使い逃げ出したのだ。

この情けない現状の後始末をどうしようかと悩んでいたが、とりあえず言い訳として使ったのだから外を確認しに行こうと考え玄関に向かっていく。

彼は玄関のドアを開け外に出た。

このアパートは二階建てで彼の部屋は二階にあるためアパートから出るには階段を下りる必要がある。

かつんと音を立てながら、少し錆び付いている階段を重い足取りで降りていくと、階段を下り切ったところに大きな長方形のダンボールが立てかけられていた。

さっきの物音はきっとこのダンボールが立てかけられた音だろうなと思いながら、彼は不思議そうにダンボールを眺める。

なんでこんなところに置いてあるのだろうか。運送業がこのアパートの住人に届けにきたのであればこんなところに置くはずないし。

もしかして留守だったからここに置いていったとか。いやいや仕事しろよ運送業。

どっちにしろこのまま放置しておくのも問題だと思い、ダンボールに届け先住所などが書かれていないか確認してみるもどこにも書かれていない。それどころかダンボールの隅のほうが濡れている。

まじで仕事しろよ運送業。たぶん運送業関係ないけど。

困ったなと思い、とりあえず濡れないようにアパートの軒下に移動させようとダンボールを持ち上げると

「重っ!!」

予想以上の重さについ口に出してしまうほどだった。

一体何が入っているのか気になるところではあったが、とりあえず軒下に置こうと思い、移動させているとダンボールの中から奇妙な音が聞こえることに気づく。

気になった彼はダンボールに耳をつけて音に集中してみると、なにやら呼吸のような音が聞こえてくる。

すーすーというような音だ。

「うおっ!」

驚いた彼は素早くダンボールから顔を離すが、少しばかり離れる勢いが強すぎたのか体が仰け反ってしまう。

そんな状態でダンボールを支えられるはずもなく体ごとダンボールと一緒に倒れてしまった。

倒れた拍子に頭でも打ったのだろうか、いてぇとぼやきながら後頭部のあたりをさする。

しかし、目の前で倒れているダンボールを見て、痛いなんてぼやいてるどころではなかった。

もはや言葉も出ない。一体何が起こっているのか飲み込めない。そこに彼の知っている常識なんてものは存在しない。

ガールズ、女の子、少女。名称なんてどうだっていい。

そこにはダンボールから少しばかり頭を出す少女がいた。

おいおい運送業。仕事しろとは言ったけど闇市場で働けなんていってねーよ。


ようやく本題に入っていけます。もっと書くスピードあげたいw

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