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フェニス・R・リンク 3

「この宝石箱(オルゴール)は、螺子を巻いて蓋を開け、中に向かって声を出しますと、それを内に籠め、再び蓋を開けた時に幾度でも同じ声を流すのでございます」


 途端、調子の外れた音楽が流れた。


 早口の南の言葉のようだが、早口が過ぎるのと、俗語(スラング)らしき言葉だらけでフェニスには意味が分からなかった。



 アルカードの様子を盗み見ても、分かっているのやら分かっていないのやら分からない。


 兄の事だ、きっと分かっているとフェニスは思った。


 次いで、弦楽器らしい音と共に、男の低い声がした。



   北を切り開きし、偉大なる初代テルニダ王の時代。


   王都からほど近い小さな村に、ひとりの少年が生まれました。


   何の力も、何のとりえもない、ごく普通の少年でした。



 あまりに驚いて、思わず立ち上がってしまう。


「アルカードお兄様! これ――北の英雄の物語ですわ! 凄い!」


 勢い込んで言う。


 とっさに口をついて出たのが北の言葉だったので、商人には意味が分からなかったらしい。


 興奮のあまり、顔に血が上っているのが分かる。


 それが分かっても、冷静にはなれなかった。


「どうでしょう? お気に召していただけましたでしょうか?」


 商人が笑みを浮かべながら言う。それに兄が尋ねた。


「他にはどんな話が入っている?」


「古今東西ありとあらゆる話を集めたつもりにございますが、何分東の片田舎にて、西の主だった話と東に伝わる伝承などを中心に五千百二十一の話が入っております」


 ――欲しい!!


 フェニスは反射的に思う。


 物語に興味があった。模様にも激しく惹かれた。何より、北の英雄の物語が聞きたかった。


 アルカードがこちらを見て苦笑する。


 それにフェニスは頬を膨らませた。


 知識欲の塊のような兄が、この素晴らしい宝石箱(オルゴール)を諦めるとはとても思えなかったのだ。


 おたがいさま! と、そう言いたかった。


 フェニスとアルカードは、かなりの値段を支払って宝石箱(オルゴール)を手に入れた。


 母は眉をしかめたが、フェニスとアルカードは満足であった。

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