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婚約破棄されたら国が壊れたので、元王妃候補の私が世界を再設計します ~外された瞬間、流れが崩壊しました~  作者: 東雲 透


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第14話:私の人生は、ここから始まる

 騎士が去った後。


 しばらく、誰も言葉を発しなかった。


 風の音だけが、静かに響いている。


 歪んだ流れ。


 不安定な空気。


 それでも。


 この場所は、どこか穏やかだった。


 王都とは違う。


 張り詰めた空気ではなく。


 ただ、少しずつ崩れているだけの、現実。


「……よろしかったのですか」


 やがて、ミリアが口を開く。


 その声は、静かだった。


 責めるでもなく。


 ただ、確認するような響き。


「戻らなくて」


 私は、少しだけ考える。


 答えは、もう出ている。


 けれど。


 言葉にすることで、それが確定する。


 そんな感覚があった。


「ええ」


 私は、ゆっくりと頷く。


「戻れば、確かに早く解決できるかもしれない」


 それは事実だ。


 王都の中心。


 すべてが集まる場所。


 そこに行けば。


 直接、修復に関われる。


 だが。


「でも、それは“前と同じ私”に戻るということ」


 私は、はっきりと言う。


 その言葉には、もう迷いはなかった。


「役割としての私」


 王妃候補。


 国家機能の一部。


 必要とされる存在。


 それは。


 確かに、価値のあるものだった。


 けれど。


 それだけだった。


「……それでは、意味がないわ」


 私は、静かに言う。


 一度壊れたものを。


 同じ形に戻すだけでは。


 また、壊れる。


 それでは。


 何も変わらない。


「ならば」


 私は、空を見上げる。


 歪んだ空。


 欠けた流れ。


 それを、まっすぐに見据える。


「違う形で、支えればいい」


 それが。


 今の私の答え。


 ミリアは、しばらく黙っていた。


 そして。


 小さく、息を吐く。


「……リシェル様らしいご判断です」


「そうかしら」


「はい」


 彼女は、わずかに微笑む。


「今までのリシェル様なら、“最適な解決”を選ばれていたと思います」


 私は、少しだけ目を細める。


 確かに、その通りだ。


 これまでの私は。


 常に最適解を選んできた。


 効率。


 安定。


 合理性。


 それが、すべてだった。


「でも、今回は違うわ」


 私は、小さく笑う。


「最適じゃないかもしれない」


 むしろ。


 遠回りだ。


 時間もかかる。


 失敗する可能性もある。


 けれど。


「それでも、これが私の選択よ」


 その言葉は。


 驚くほど、軽かった。


 胸の奥が。


 少しだけ、軽くなる。


 空っぽだったはずの場所に。


 何かが、満ちていくような感覚。


「……不思議ね」


 思わず、呟く。


「こんなに不確かなのに、こんなに楽だなんて」


 ミリアが、柔らかく目を細める。


「それが、“ご自身で選ぶ”ということなのかもしれません」


 私は、その言葉を静かに受け止める。


 自分で選ぶ。


 それは。


 今までの私には、なかったもの。


 与えられた道ではなく。


 決められた役割でもなく。


 自分の意思で、進む道。


 それは。


 不安で。


 同時に。


 どこか、心地よかった。


「……行きましょう」


 私は、前を向く。


 迷いは、ない。


 あるのは。


 ただ、進む意思だけ。


「はい」


 ミリアが頷く。


 馬車へと向かう。


 護衛たちも、すぐに動き出す。


 誰も、もう迷っていない。


 進む方向が、決まったから。


 私は、一度だけ振り返る。


 王都の方向。


 遠く、かすかに見える城の影。


 かつての自分がいた場所。


 すべてを捧げてきた場所。


 けれど。


 もう、そこには戻らない。


「……さようなら」


 小さく、呟く。


 それは。


 過去の自分への言葉。


 そして。


 新しい自分への、始まりの合図。


 私は、馬車に乗り込む。


 扉が閉まる。


 車輪が、ゆっくりと動き出す。


 王都から、離れていく。


 その感覚は。


 思っていたよりも、穏やかだった。


 私は、目を閉じる。


 深く、息を吸う。


 そして。


 静かに、確信する。


 これは、終わりではない。


 始まりだ。


 私の。


 私自身の人生の。

第14話まで読んでいただきありがとうございます。


ここで主人公は、

「最適解」ではなく「自分の意思」を選びました。


この選択が、

この物語の方向性を大きく決定づけるポイントになります。


ここからは、

“与えられた役割の人生”ではなく、

“自分で選んだ人生”として物語が進んでいきます。


次はいよいよ第1章ラストです。

続きを楽しみにしていただけたら嬉しいです。

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