追放後※ラグス視点
冒険者の仕事の間隔は不定期だ。
特に、俺たちみたいなAランクのパーティだと、仕事をする間隔が空くことも珍しくない。
一回の仕事の報酬がでかいから、あくせく働く気になれないんだよな。
フィンを追放した俺は、二週間パーティを休止させることにした。
で、せっかくだから息抜きにセリアをデートに誘ったんだが――
「悪いけど、あなたとそういう関係にはなれないから」
「は?」
澄ました顔で言われて、俺はプライドを傷つけられた。
「おい、何が気に入らないんだよ」
「別に」
「不満があるなら言えよ。今までだって聞いてやってたじゃないか」
追及すると、セリアは溜息と共に吐き出した。
「フィンを追い出すこと、なんで事前に言ってくれなかったの?」
「あれは……その場のノリで決まったことだからしょうがないだろ」
「ロガンとミルトには根回ししたのに?」
――あいつら、口を滑らせたのかよ。
セリアとフィンは同じ王立魔法学院の出身だ。
学生時代から因縁があったらしく、特別に親しくはしてないようだったが、何となく言い出し辛かった。
「パーティのこと、勝手に決めないでほしいわ」
「それは、悪かったよ。謝るから機嫌を直してくれ。飯代、俺の驕りだから。お詫びに何でも驕るよ」
「そういう気分じゃないの。仲良しのロガンでも誘えばいいじゃない」
――気の強い女だ。
思い通りにならなくてイライラする。
「俺に舐めた態度取ると後悔するぜ?」
「フィンみたいに追放する気? 好きにしたら? あなたとあたし、どっちが先に見切りをつけるか楽しみね」
「うぜーな。お友達のフィンがいなくて寂しいのか?」
「フィンは結界以外の魔法にも精通してるし、剣だって使えた。私たちの誰かが倒れたときに、バックアップに回れる可能性があった。最後の保険がフィンだったのに、それをあっさり切るなんて馬鹿のすることよ」
(……本音が出てきたじゃねえか。この女、フィンを過大評価しすぎだろ)
ムキになったセリアを見て、思わず笑ってしまった。
こんな、人を見る目がない女に入れ込まなくてよかった。
「そういや、フィンの野郎グランフォードに向かったらしいぜ?」
「どうしてそんな場所に……」
「親切なギルドの職員が声をかけてやったらしい。冒険者をクビになって、野垂れ死んでなきゃいいがな」
「彼はどんな場所でもやれる人よ。他人の心配をする前に、このパーティのことを考えておいた方がいいわ」
俺はセリアと別れて酒場を出た。
往来を歩いていると、若い女の冒険者に声をかけられた。
「ラグスさん一人なんですか? 珍しいですね!」
顔も体系もそこそこで、パッとしない女だった。
声がでかくで鬱陶しいが、一人で飲むよりマシだ。
「お前も一人なら、一緒に飲むか? 俺の驕りだ」
「ええ~うれしいです! あ、フィンさんは一緒じゃないんですか?」
「は?」
空気の読めない女は一人で語り続ける。
「ラグスさんってフィンさんの面倒見てあげてるんですよね? 良かったら、フィンさんも一緒に飲めないかなって」
「……あー、一応聞くけど、どういう理由?」
「フィンさんって、Aランクパーティなのに偉ぶってなくて、紹介してって娘多いんですよ~。友達に自慢できるんでよかったらって思って~」
(あの野郎、無能な癖に冒険者の女共に粉かけてるのか? ……クソが!)
「フィンはやめといた方がいいぜ。あいつ、結界しか使えねえし」
「でも、本当は剣とか魔法も凄いって。私の知り合いに学院時代のフィンさんの後輩がいて~」
「うぜえよ」
うるさい女を黙らせるために肩を押す。
「えっ!? ちょっと、いきなり何するんですか!」
「フィンは無能な落ちこぼれなんだよ! だから、あいつは追い出した。もう俺のパーティにはいないんだわ」
「……仲間を追放したんですか?」
「そうだよ。いらねえから」
「最低」と呟いて女が走り去る。
「お前だろ。どう考えても。……フィンに騙されて俺をダシにするとか」
気が変わった。
今日は一人で飲みたい気分だ。
馬鹿女でも隣にいりゃ息抜きになるかと思ったが、馬鹿は馬鹿だったな。
フィンの野郎のゴミカスさが分かっただけ、良しとしよう。
今度ガランにも言わないとな。つーか、誘ってやるか。たまには……。




