表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と追放された結界師、辺境伯の娘に拾われて年の差婚する  作者: かにょん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/45

淀み

 それから数日、旅は驚くほど順調に進んだ。


 大きなトラブルもなく、天候にも恵まれた。

 予定通りに村を経由し補給もできている。


 騎士たちの顔からも最初の緊張が抜けてきた。


「この調子なら、あと二日もあれば領境だな」


 ここまで誰一人欠けなかったこともあり、皆の表情は明るい。

 ユルの咳もここ数日は聞いてない。


 空気が明らかに緩んでいた。

 ――その中で。


 俺だけが落ち着かなかった。


 理由ははっきりしている。

 瘴気の流れだ。


 白夜結界の影響がさらに薄くなっている。

 都市部から外れたことで、結界が弱まる範囲もあるだろうとは予測していた。


 だが――


 いくらなんでも瘴気が溢れすぎだ。

 白夜結界は国土防衛の要であり、魔物に対抗する最も有効な手段だ。


 それが、こんな歪な循環をしているなんて思いもしなかった。

 俺が王都にいる結界師だからこそ、気づけた点だろう。


「……なあ」


 小声でリリカに声をかける。


「少し急いだ方がいい」

「どうして?」

「魔素の浄化が追いついてない。魔物との戦闘になる確率が高い」


 一瞬眉をひそめたが、リリカはすぐに頷いた。


「分かった。騎士たちに伝えるわ」


 余計な質問はなかった。

 少し肩の力が抜ける。


 そのときだった。


 ――俺が張っている結界に、反応があった。


「魔物が来るぞ!」


 即座に叫ぶ。

 獣人の少女が馬車のなかで身を低くした。


 次の瞬間、草むらが大きく揺れる。

 そして、枝が折れる音が重なった。


「ついにお出ましか。行くぞレオン!」

「分かってる」


 騎士への警告が早かったため、魔物側の奇襲にはならなかった。


 相手は狼型の魔物だ。

 数は三――いや、遅れて四匹目が姿を見せた。


 多くはない。だが、動きが速い。

 何より統率が取れている。


「馬車から出るな! 皆、一か所に固まるんだ!」


 騎士から指示が飛ぶ。

 だが、俺は馬車の外へ出た。


「あんた、やれるのか?」

「元冒険者だ。どの道、二人じゃ守り切れないだろ」


 剣を抜いて意思表示すると、彼らは口元だけで笑みを浮かべた。


「頼もしいぜ、元冒険者さんよ」

「応援、感謝する」


 剣を構えつつ、結界を張る。

 結界の範囲は最低限。


 ――狭く、しかし密に張る。


「くるぞ!」


 騎士の一人が叫ぶ。


 が、魔物の跳躍がわずかに鈍った。

 足下が悪かったのか? あるいは――


「今だ!」


 騎士の剣が深く通る。

 一体が地に伏す。


「今のは……」

「レオン、ぼさっとするな!」


 騎士が違和感を感じたようだが、それを確認をする暇はない。


 まだ残りは三体。

 一体が、俺の方へ向かってきた。


 距離は近い。

 しかし、低級の魔物だ。

 Aランクのダンジョンで目が肥えていたせいか、物足りなく感じる。


 俺の剣が閃き、魔物を両断した。


「お見事!」

「あんたらは守りを固めてくれ」


 相手のレベルは理解した。

 俺でも対処可能な相手だと判断する。


 攻めに転じ、動きが鈍い魔物を狙う。


 数合打ち込み、喉を深く突いた。

 その隙を逃さず、最後の一匹が襲ってきたが、読めていた動きだ。

 あっさり袈裟斬りにした。


 剣についた血を払い、鞘に戻す。


 森に静寂が戻ってきた。

 荷台からリリカが走ってくる。


「フィン! 怪我はない?」

「大袈裟だな。見てのとおりだ」

「もう、急に飛び出すから心配したわ」


 獣人の少女や少年たちが、こちらを見ている。

 俺が片手を挙げると、拍手が起こった。


(……こんなの初めてだな)


 寄生虫と呼ばれパーティを追い出された俺が、戦力になれた。

 今の戦い、あいつらが見たら何て言うかな。


「どうかした? やっぱりどこかやられたの?」


 リリカに腕を引かれて我に返る。


「少し余韻に浸ってただけだ」

「そう。本当に無事でよかった」


 リリカがほっと息を吐く。


「フィン、もっと誇っていいのに」

「誇れるほどのことはしてない。弱い魔物だったしな」


 リリカは納得がいかないように唇を尖らせた。


「そういうところがあるって、覚えとくから」

「どういうところだよ」

「……フィンは知らなくていい」


 俺は追及を諦めて降参した。

 魔物なんかよりよっぽどリリカの方が手強いからだ。

 女の子に拗ねられると、俺では対処が思いつかない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ