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無能と追放された結界師、辺境伯の娘に拾われて年の差婚する  作者: かにょん


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夢の終わり※ラグス視点

 薄暗い迷宮の中、松明の火が揺れている。

 後ろを歩くのはフィンだ。結界を張り、同時に敵の居場所を探っている。


「ラグス、右だ」


 短い指示。 俺は魔物の気配を感じて軽く剣を振るった。


 ロガンが後ろで文句を言いながら荷物を背負い、ミルトが傷を癒やしている。

 セリアはいつでも敵を焼き払えるよう魔力を溜めていた。


 完璧な布陣だ。

 俺とロガンが前衛。

 セリアが火力で、ミルトが支援。

 フィンが索敵と何かあったときのバックアップ。


「やっぱり、俺たちが最強だな」


 そう言うと、フィンが少しだけ笑った。


「お前が調子に乗らなければな」


 軽口を言われて笑う。

 今は全部が上手く回っている。


 短絡的に考えて、フィンを追放しなくて良かった。

 そう安堵した瞬間――


 松明の火が消えた。

 暗闇が広がる。

 振り返ると、誰もいない。

 俺一人だった。


「……待てよ」


 呼んでも、返事はない。

 遠くにフィンの背中が見えた。

 何度呼んでも振り向かない。

 その隣には、金色の髪の少女がいる。

 ――リリカ。

 俺は走った。


「待て!」


 だが、足が動かない。

 重い鎖が絡みついている。

 前を見ると、それは鉄格子だった。


 そこで目が覚めた。


 石の壁。冷たい床。湿った空気。


「……くそ」


 夢だった。

 いや、ただの夢じゃない。

 あれは本来辿るはずだった未来だ。


 俺は英雄になるはずだった。

 フィンは俺を隣で支える仲間だった。

 なのに――


 足音が近づいてくる。

 牢の前で止まった。


「ラグス。起きてるか?」


 その声を聞いた瞬間、胃の奥が煮えた。


「……なんだよ」


 鉄格子越しに立っているのはフィンだ。

 落ち着いた顔。 余裕のある目。


「何しに来た。勝者の挨拶か?」

「違う。最後に話しておこうと思ってな」


 最後。

 その言葉が癇に障る。


「お前だけ美味しい思いしやがって」


 鉄格子を掴む。


「領主に気に入られて、あの娘も手に入れて」


 吐き出すように言う。


「ずっと可愛がってやってたのに、俺に何か還元したか? 俺が拾ってやらなきゃ、お前はとっくに終わってただろ」


 フィンは黙っている。


「リリカを譲れよ。お前には過ぎた女だ。俺の方が――」

「やめろ」


 静かな声だった。

 怒鳴り声じゃない。


「リリカは物じゃない」

「……は?」

「譲るとか、還元とか、そういう話じゃない」


 フィンは俺から目を逸らさない。


「俺は、お前と旅をした日々に感謝している。最後に、それだけ伝えたかった」


 胸がざわつく。


「あの時間が無駄だったとは思ってない」


 なんでそんな顔ができる。

 なんで、俺を憎まない。


「……俺は?」


 声が震えた。


「俺はどうなる?」


 答えは分かっている。

 分かっているから、聞きたくなかった。


「罪を償え」

「俺は死ぬのか?」


 みっともないのは分かっている。

 だが口が止まらない。


「俺を一人にするなよ……」


 視界が滲む。

 鉄格子越しにフィンの手を掴もうとした。

 だが届かない。


「手を離したのは、お前だ」


 静かな一言。

 夢の中の暗闇が蘇る。


 フィンは背を向けた。


「さよならだ、ラグス。今までありがとうな」


 足音が遠ざかる。


「待て……」


 声が掠れる。


「置いていくな……!」


 遠ざかっていく足音は止まらない。

 牢の中に、ただ一人。

 夢の続きは、もうどこにもなかった。

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