夜が明けて※リリカ視点
朝の光が、カーテン越しに差し込んでいた。
やわらかくて、あたたかい光。
――もう大丈夫。
そう思えたのは隣にいる彼のお陰だと思う。
ゆっくりと視線を動かすと、フィンがいた。
穏やかな顔で寝息を立てている。
昨夜、私が眠ったあともずっと傍にいてくれたのだと思うと、胸がきゅっとなった。
「……フィン」
眠っている顔にそっとキスをする。
起こさないように、慎重に。でも、たっぷりと愛情を込めて。
(大好きだよ。ずっと一緒にいてね?)
起きないから、もう一回だけ。
ちゅっと額にキスをすると、フィンの瞼が開いた。
そして、強く肩を抱かれる。
優しく髪を撫でられて、私は頬が熱くなった。
「……もしかして、起きてたの?」
「朝から可愛いことしないでくれ」
あ、バレてたんだ。勝手にキスしてるの……。
やだ、恥ずかしすぎるよ。
「いじわる。起きてたなら教えてくれたらいいじゃない」
「……可愛すぎて止められなかったんだよ」
照れる顔を見て、改めて思う。
この優しい人が私の恋人でよかった。
私は急に嬉しさでいっぱいになって、フィンの胸に飛び込んだ。
「おい、どうしたんだよ」
昨夜のフィンは、とても格好よかった。
扉の前に立ったときの背中。
迷いのない声。
私を庇うように腕を回した、その一瞬。
怖くて震えていたはずなのに。
フィンが前に立った瞬間、不思議と身体の震えが止まったんだ。
昨夜の彼のことを思ったら、今さらのように頬が熱くなった。
――あのとき、ラグスが去ったあとのことを思い出す。
抱きしめられた感触。
優しく額に触れた唇。
私を落ち着かせるための優しいキスだった。
全部が素敵だった。
(私を大切にしてくれる)
当たり前だけど、フィンの眼差しはラグスの視線とはまるで違う。
あの人は、私の身体しか見ていなかったけれど。
この人は違う。私が怖がっていることも、震えていることも、全部分かっていて――
だからこそ、傍にいてくれた。
「……フィンでよかった」
この人とならきっと何が起こっても大丈夫。
そう思える朝が来たことが、何より嬉しかった。
「ありがとう、フィン」
「何がだ?」
「全部っ」
フィンは少し困ったように笑って、私を腕のなかに閉じ込めた。
「安心して眠れたなら、それでいい」
その腕の温もりに目を細める。
怖い夜は終わった。
今日もきっと忙しい一日になる。
「お父様にお願いしよっかな。毎日、フィンが傍にいれるように」
「俺の忍耐力を試すつもりか?」
「……試してみる?」
「究極の二択になりそうだ。……とりあえず朝食にするか」
「うんっ」
今はまだ、本気にしてもらえないけど。
もう少しお肉がついたら、フィンも冗談で流せなくなるかな。
「ねえフィン」
「なんだ?」
「我慢できなくなったら、こっそりエッチなこともしようね?」
「……っ」
フィンがいきなり力尽きた。
「ええっ!? フィン、どうしたの!?」
「……こっちは必死に抑えてるんだよ」
お父様の信頼は裏切りたくないけれど。
私が一番大事なのは、フィンだから……。
「一緒に決めてこう? 私はフィンとなら何でも乗り越えられるの」
「ありがとうな。でも、リリカを大切にしたい気持ちは本物だから。焦らずいこう」
フィンは私に甘い。
でも、私だってフィンに甘い。
フィンが幸せになれるようお母様にも相談しようと思った。




