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無能と追放された結界師、辺境伯の娘に拾われて年の差婚する  作者: かにょん


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33/45

違和感

 領境で魔物が発生した――

 クラウスからの応援要請が届いたのは、リリカとのデートを終えて城内に戻った直後だった。


 慌ただしい城内の空気を感じながら、騎士から渡された書状を読み終える。


 結界師としての判断は固まっていた。


「……領境まで行くことになりそうだ」


 隣にいたリリカの表情が曇る。


「フィンも戦うの……?」

「大丈夫だ。無理はしない」 


 何かを言いかけたリリカは、唇を噛んで言葉を飲み込む。

 引き止めたい。でも、立場上それができない。

 その葛藤が痛いほど伝わってくる。


 俺は外套の内側に手を入れた。


「リリカ」


 名前を呼ぶと彼女は顔を上げる。


「これを持っていてほしい」


 掌に乗せたのは、小さなペンダントだった。

 落ち着いた銀色の枠に、淡く光を宿す魔石。

 俺が昔、先生から譲り受けたものだ。


「……これは?」

「昔、俺の先生――師匠からもらったものだ。古い守りの術式が組み込まれている」

「そんな大切なもの……」

「リリカに持っていてほしいんだ」


 想いが伝わったのか、リリカが息を呑む。


「俺がいない間も、これがリリカの傍にある。それだけで、少しは安心できる」


 リリカはそっとペンダントに触れる。


「……すぐに帰ってくるよね?」

「ああ。必ず」


 ペンダントの留め具を取り、彼女の首元にそっとかける。


 冷たい金属が、リリカの胸元で揺れた。

 彼女は小さな手でそれを握りしめた。


「戻ってきたらまたご褒美あげるから」

「またデートしてくれるのか?」

「もっといいもの」

「何だろうな」


 リリカの肩に手を乗せる。

 じっと瞳を覗き込んで、気持ちを伝えた。


「じゃあ、行ってくる。城からは出ないでくれ。万が一の時は、必ず夫人の指示に従うんだ」

「わかった。行ってらっしゃい、フィン」


 リリカはペンダントを胸に抱いたまま、こちらを見ていた。


 ――後ろ髪を引かれる思いで、俺は城を後にした。



 ◇



 領境へ向かう道は妙に静かだった。

 魔素の濁りも薄く感じる。


「……おかしいな」


 魔物が発生したあとは、独特の魔力の残滓が残る。今回は、それがなかった。


 結界を広げても魔素が浄化される感覚はない。


 違和感を抱えたまま、現地へ到着する。

 そして――


「……よう、久しぶりだなフィン」


 その声を聞いた瞬間、あの夜別れた男の顔が鮮明に蘇った。


「お前は……」


 待ち構えていたラグスが、椅子代わりにしていた魔物の死体から立ち上がった。


「遅すぎて待ちくたびれたぜ」

「……ラグス。なぜお前がここにいる」

「助けてやったのにそりゃねえだろ。久しぶりの仲間との再会だろ? フィン」


 討伐された無数の魔物の死体には、何れも斬撃の痕跡がある。

 ラグスが倒したと考えるのが自然だが、これだけの討伐を一人で成し遂げたと考えるのは難しい。


 王都ならいざ知らず、結界の加護もない中でどうやってこれだけの魔物を……。


「まさか、一人でやったのか?」

「そうだよ。さすがに骨が折れたけどな」


 ラグスは大袈裟に溜息をついてみせた。


「さて、これだけの戦果をあげた冒険者を手ぶらで帰したりしないよな?」

「グランフォードには冒険者ギルドがありません。報奨金についての相談であれば、騎士団の方で話を伺います」


 小隊長が丁寧に対応するが、ラグスは首を横に振った。


「金に興味はねえよ。俺は功績を上げた冒険者として扱ってほしいだけだ」


 小隊長が困惑する。


「報奨金は辞退されると、そういうことですか?」

「ああ。その代わり、領主から直々に言葉を賜りたい」

「ラグス、無茶を言うな」

「無理なら何もいらねえ。もちろん、報奨金もだ。ただ働きになっても俺は構わないんだぜ? 辺境伯の評判が下がったところで、俺には関係ないしな」


 ラグスの狙いは明らかだった。

 ヴァルグリム家との接触。

 自分を直接売り込む為に、派手な戦果を挙げたのだろう。


 騎士たちは出世欲のために魔物を討伐したラグスに対し、軽蔑する眼差しを向けた。


 しかし、ラグスはニヤつきを更に深めることになる。


 希望が叶い、ヴァルグリム家の晩餐会に招かれることになったのだ。

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