いい日旅立ち
「これは・・・お前の魔力か?」
ローヤルは驚いた顔のまま言う。
「そう・・・みたいです」
僕の身体から出ている以上、僕の魔力のはずだが・・・。
「そうか・・・」
この時ローヤルが薄っすらと笑った気がした。
「しかし、この量は並の獣人ほどはあるな。あの時、魔石が発動したのも納得できる」
並の獣人?これでもまだ四分の一らしいが本当なのか?しかし、僕にはローヤルもあの男も嘘をついているようには思えない。
「それじゃこの魔力を抑えられるか?」
「抑える?とは何ですか」
「今、魔力はほぼ全開で出ている状態だからもう少し抑えた方がいい。でないと死ぬぞ」
「し、死ぬ!?」
僕は思わず大声を上げた。
「心配するな。抑えればいいだけだ。やってみろ」
簡単に言ってくれる。今、魔力を知ったところなのに・・・。でも出来ないと死ぬらしいから早くやらなくては。
僕はもう一度目をつぶり集中する。さっき魔力が封印されていた箱を思い浮かべ閉じるイメージをする。
すると段々魔力の放出が減っていくのを感じた。
「いい調子だ。もしかしたら才能があるかもな」
こっちは必死だというのに、そんな事気にもせずローヤルは嬉しそうに話す。
「さて、一旦村に戻ろう。あいつに確認したいこともあるからな」
ローヤルは僕の返事も待たずに歩き出す。確認したい事というのは旅の事だろうか?それとも昨日の野盗たちの事だろうか?いや両方か。
村に戻り、一緒に族長の家に行く。するとカウたちはいた。
「おはよう、丁度呼びに行こうと思っていたところだ」
カウは僕たちに気づくと声をかけてきた。
「そうか、まぁこちらも確認したいことがあってきたんだ」
「旅の事だろう?結論から言うと、一緒に旅をするよ」
二人の会話はとても速かった。全く無駄なことがなく、これは長年の付き合いがなせることだろうか。
「それはよかった。だが、昨日は迷っていただろう?それにあんな事があったのにいいのか?」
もちろん村襲撃の事だ。確かに僕も気になるところではある。
「だからこそだ。それに実は昨日捕まえた野盗たちを尋問しようとしたんだが・・・」
カウは歯切れが悪かった。
「死んだのか?」
ローヤルは察して先に答える。
「あぁ、全員だ。野盗が襲撃した理由を答えようとした瞬間、全員が燃えた」
全員・・・。僕は息を呑む。
「野盗のリーダーは魔石を持っていた。それをあいつらに渡した奴が首謀者だ。間違いない」
カウは力一杯拳を握り、怒りに震えている。
「確かにただの野盗が手に入れられる物ではないな。しかし、また襲撃される可能性があるだろ?」
「いや、可能性は低いと思う。毎日ボヤ騒ぎがあっただろ?あれもすべて襲撃の準備に違いない。だから昨日でこの村を潰す予定だったと思うが、本人が現れなかった事を考えると初めから失敗してもいいと考えていたのかもしれない」
「確かに念入りに準備するような奴が現れないのも不自然だな。それに昨日の規模での襲撃をまたすぐ行うのは難しいか・・・。それで、その犯人について心当たりがあるんだろ?」
ローヤルが鋭い目つきでカウを見る。
「ハッキリと誰かまではわからないが、ここまで火の魔法を使えるなら十中八九、馬族だろうな」
カウはローヤルを見返す。
「まぁそうなるよな」
ローヤルは視線を逸らし、頭を掻く。
あまり会話に入れるような雰囲気ではないが、僕は質問をした。
「あの・・・馬族は悪い種族なんですか?」
二人が同時に僕の方を向く。
「悪いというより、いけ好かない奴らだな」
「悪いわけではなく、嫌な奴らかな」
言い方は違うが二人とも同じ答えだった事に思わず笑ってしまった。
「二人してなんですか。でも、あまり関わりたくないってのはわかりました」
「まさかきみと同じ意見になるとはね」
「あいつらに関しては全員同じ気持ちになるだろ」
「まぁ確かに。つまりどんな種族かを言うなら、傲慢でお金に汚く他者を見下しているってとこかな」
カウは笑いながら教えてくれたが、あまりの印象の悪さに僕は苦笑いする。
「全然いいところがないんですね」
「まぁ強いていいところを言うなら、お金さえ払えばきちんと仕事はやってくれることかな」
「それには同意する」
それを聞いても僕の中で特に印象は良くならなかった。
「で、話を戻すけど私は一緒に旅をする。だから早速出発をしよう。移動しながら今後の事は話していこう」
カウと隣の部屋に行き荷物を確認する。どうやらすでに僕たちの分も準備されているようだ。なんて仕事が速い、こいつはできる男だ。と思う僕の隣で、ローヤルはメシが少ないと文句を言って揉めていた。やっぱりこっちはトラブルメーカーのようだ。
僕たちは族長や村の人たちに挨拶を終え出発しようとする。
そこに女の子が駆け寄って来た。それはあの時僕が助けた子だった。女の子は改めてお礼言い、小さなお花もくれたのだが、僕はそのやり取りをみんなに見られ気恥ずかしかった。
馬車に乗り移動中、ローヤルに話しかけられる。
「出発の時、駆け寄って来たあの子供は何だったんだ?」
「いや、あの子は・・・」
僕は自慢するのも違うような気がして言い淀み答えられずにいると、代わりにカウが自慢げに答え始めた。
「知らないのかい?実はあの子が野盗に襲われているところを彼が助けたのさ。目の前に颯爽と現れ、いとも簡単に倒したようだ。どうだ、素晴らしいだろ?」
「それは凄いです!流石桃太郎さんですね!」
カウはとても喜び、メリーダは驚いていた。しかし、僕としてはあまり大袈裟に話さないでほしいのだけど。
「と、それについてまだ感謝を言ってなかったね。自警団のリーダーとして、私からも深く感謝する」
カウは深々と頭を下げるのを見て、僕は慌ててやめさせようとする。
「いや、そんな、や、やめてください。助けられたのは偶々です。相手も一人だったので・・・」
僕の言葉を聞いて、ローヤルは怒ったようだ。
「前にも言っただろ。あまり自分を卑下するなと。相手が何人だろうが、弱かろうが、そんなのは関係ない。お前は人を護った、その事実は変わらない。もうすこし自分自身を誇ってもいいだろ」
誇っていい・・・。そんな事言われたのは初めてだった。僕はいつも自分自身を否定してばかりなのに・・・。
気づくと僕は泣いていた。
「あ、あれ、変だな。こんなつもりじゃ」
僕は何度も涙を拭うが止まる気配がない。
「なんだ、そんなに俺の言葉が嬉しかったか?まぁでも、俺から褒められて嬉しくない奴なんかいないか!」
ローヤルは乱暴に僕の頭を撫でる。
突然泣いた僕を変な目で見たり、笑わないでいてくれる事が嬉しかったし、とても心地よかった。
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