永い夜の終わり
野盗と自警団の戦いは熾烈だった。
どちらも一歩も引かずの戦いをしていたが、野盗の人数が多い分有利なように思えた。
しかし、それもローヤルが来てからは状況が変わる。彼女はあっという間に一人、二人、三人と倒していく。続けてカウも到着するとさらに優勢になり、野盗の数はどんどん減っていった。
そこに一人の男が現れたのだが、どうやら野盗のリーダーのようだった。
「お前ら何やっている。俺が来たんだシャキッとしろ」
リーダーは叫び、野盗たちを鼓舞すると、野盗たちは再び戦う意思を持ち始める。
「あいつやっかいだな。俺がやろうか?」
ローヤルがカウに話しかける。
「いや、自警団のリーダーである私の役目だ」
するとカウは前に出ていく。
「私は自警団リーダー、カウ・ミーガリアだ。お前が野盗のリーダーか?」
「そうだ。俺が頭目のバビリ・ロクスだ」
「なら私と一対一の勝負をしよう。お互いこれ以上仲間が減るのは避けたいだろ?」
「確かにこれ以上減るのはおもしろくはないな。で、俺が勝ったらこの村をもらっていいのか?」
「あぁそれでいい。だが私が勝ったらなぜこんなことをしたのかすべて話してもらうぞ」
カウは怒りに満ちた表情をしている。
お互いに構える。頭目の武器は斧のようだ。対してカウは拳だった。しかし、素手のままではなく、オープンフィンガータイプのグローブにメリケンサックのような鉄がついているものをはめていた。
先に動いたのは頭目だった。斧を片手で軽々振るい、その刃先はカウの首元を狙っていた。しかし、カウはそれをダッキングで避け、ガラ空きのボディーにパンチする。頭目は咄嗟に後ろに飛びパンチを躱す。
「今のを躱すなんてやるね」
「お前こそ、俺の一撃でやられなかった奴は久々だな。それじゃこれならどうかな」
頭目は再び真っ直ぐ向かってくる。今度は斧を下からすくい上げるように振るう。その途中で地面を削り、砂埃を舞い上がらせカウの視界を塞いでくる。咄嗟に後ろに飛びながらガードをするが、斧は左腕を掠めカウの腕から出血する。
「ほう左腕は切り落としたと思ったんだがな」
「私は避けたつもりだったんだけどね」
そういうと今度はカウが仕掛ける。頭目は近づかせまいと斧を振るうが、それを避ける。しかし、斧を振った後の振り返しが思った以上に早く、カウもパンチを繰り出すことが出来ない。お互いに攻め手に欠いていた。
ここで一度、カウは距離をとる。
「ちょこまか動きやがって鬱陶しい」
頭目には疲れが見え始め、苛立っていた
「あーめんどくせぇ。もうこれを使うか」
おもむろにポケットに手を突っ込み、何かを取り出す。小さい石のようだった。
「それは魔石か!?そんなもの一体どこで手に入れた」
「それは企業秘密だ。勝ったら教えてやるよ」
そう言うと頭目は魔石を掲げる。魔石は怪しく光ると頭目の周りに火の玉が無数に現れた。どうやら火の魔石のようだ。
「やはり森の火災は魔石が関係しているのか」
カウは再度怒りに満ちた表情になる。
「もうこれで終わりだ。焼かれて死ね」
頭目が手を振るうと周囲の火の玉はカウ目掛けて飛んでいく。
カウは冷静に右手に魔力を集中させ、右ストレートを繰り出す。すると凄まじい風が頭目に向かって吹き、その強風により火の玉はすべて消えた。頭目は何とか踏みとどまっているが、風によって全身傷だらけになり意識を失った。
「私の勝ちだ。野盗全員捕まえろ」
カウは勝利宣言をし、自警団に野盗の捕縛を命じた。
すると野盗たちはいっせいに逃げ始めた。しかし、自警団はそれを逃がさない。抵抗する者は斬られ、降伏する者は捕らえられた。
野盗問題は一段落したが、まだ大事な問題が残っていた。
「おいカウ、この後はどうする?火を消す方法はあるとか言っていたが・・・」
「あぁそれだが、ローヤル一緒に来てくれるか。あと手の空いている者も族長の家まで急いで来てくれ」
カウは自警団にも声をかけ、急いで族長の家に向かう。
族長の家に到着。
ここで僕はローヤルたちと再び会うことができた。
「よかった。お前たち無事だったか」
ローヤルは僕とメリーダが無事だったことに安心していた。
「ローヤルさんこそ、それから入口にいた野盗はどうなりました?」
「そいつらは全員捕まえたから安心しろ。それより火を消すためにここに来た。そうだろカウ?」
「もちろんだ。だからきみたち一緒に来てくれ」
カウの後に付いていき、奥の部屋に入る。そこには大きな石が置いてあった。
「これもしかして魔石か?こんな大きな物は見たことがないな」
「私も初めて見ました」
ローヤルとメリーダは驚いている中、僕はいまいちよくわかっていなかった。
部屋にある魔石は、先ほど頭目が出持っていた物とは比べ物にならないくらい大きかった。
「それでこの魔石にはどんな魔法が入っているんだ?」
「ここには水の魔法が封印されている。つまり雨を降らすことができるわけだが、それには膨大な魔力が必要なんだ。だから手伝ってもらう」
「それはわかったが、この部屋に全員は入れないだろう。俺たちだけでやるのか?」
「いやそこは問題ない。実は族長の家の地面には魔法陣が描かれている。この部屋にいなくても魔力を放出すればこの魔石に集まるようにできているんだ」
そう言うとカウは村人にも同じ説明をし準備が整う。
「いいかい?いくよ」
そういうとみんなが魔力を放出すると魔石が鈍く光りだす。しかし、魔法は発動しない。
「おいこれ足りないんじゃないのか?」
「これだけの人数でやってもまだ駄目なのか」
カウは想定外の出来事に焦っている。この魔法が発動しなくては、火は消せず村も燃えてしまうからだ。
そんな中、僕は違うことに焦っていた。なぜなら魔力の放出が出来ていないからだ。とりあえず手をかざしてみるが何も反応がない。また僕は何もできずに終わるのか・・・。
「・・・落ち着け」
男の声がした。僕は周りを見渡すが、みんな集中しており誰も話していなかった。どうやら僕の気のせいのようだ。
「・・・イメージしろ」
また声がする。それは僕の頭の中で響いていることに気づく。
「イメージって何を?」
頭の中で問いかけてみる。
「・・・雨が降るイメージをだ」
雨が降るイメージ?僕は火事も消えるような土砂降りの雨をイメージした。すると身体が熱くなってくる。これが魔力だと直感的にわかり、僕は思わず目を開けた。すると僕の変化にローヤルだけは気づき、その顔は驚きに満ちていた。
次の瞬間、魔石は輝き光が空に向かって伸びるとすぐに雨が降る音が聞こえた。
「やった。発動した。これで大丈夫だ」
カウは安堵の声を上げ、他の者も喜びに湧いている。
その後僕らはカウの家に戻り、また眠りについた。
雨は一晩中降り続け、朝には火が完全に消えていた。
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