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Remember M  作者: soto


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18/21

永い夜②

ドォーン。

僕は今まで聞いたことのない音で目が覚めた。

一体なんだ?とても大きな音がしたぞ。寝起きの働いていない頭を動かそうとする。

続けてドォーン、ドォーンと二回爆発音がした。

それは体の芯まで響く音だった。それのおかげで僕は完全に目が覚め、部屋から出ていくとちょうどローヤルも出てきたところだった。

「音を聞いたか?これはただ事じゃない。

 外に出るが何があるかわからない、俺から離れるなよ」

あのローヤルでさえ、すこし慌てていた。そのまま後を付いていき家の扉を開ける。

すると村周りの森はすでに火の海だった。

「一体なんだこれは・・・」

ローヤルと僕は言葉を失った。

そこにカウが近づいてくる。どうやら先に外に出ていたようだ。

「二人とも大丈夫か。すまないが手を貸してくれないか?」

「もちろんだ。しかしこれは一体どういうことだ?」

ローヤルが早口で質問する。

「まだはっきりとはわからない。しかし、どうやらボヤ騒ぎがあった場所が爆発しているようなんだ。もしかしたら魔法でのマーキングがされていたのかもしれない。だとしたら見落とした私の責任だ」

カウは歯を食いしばる。

「そのことは後で考えよう。今は避難を優先すべきだ」

「あぁそうだな。とにかくみんなに族長の家に避難するよう案内してくれ。火を消す方法はあるんだが、その為には人手が必要なんだ」

「わかった。それじゃ手分けして住人を避難させよう。お前は向こうに行ってくれ」

ローヤルは僕に指示を出す。しかし、僕はすぐには事態が飲み込めなかったせいで、間抜けな質問をしてしまった。

「僕ひとりでですか?」

「手分けした方が早い。それにお前ならできる、頼むぞ」

そう言うとローヤルとカウは別々に走っていった。僕はこの緊急事態の中、一人になってしまったことにとてつもなく不安になった。鼓動が速く、呼吸は浅くなるのがわかる。

「まず深呼吸だ、深呼吸をしよう。落ち着け、落ち着くんだ。まだ村自体は燃えていない。落ち着いて行動すれば大丈夫。ローヤルさんも僕にできると思ったから頼んでいるんだ。大丈夫だ」

僕は独り言をつぶやく。そのおかげかすこし冷静になり、二人とは別の方向に走り出した。


僕は余計なことを考えないように村をがむしゃらに走った。その途中で会う人全員に族長の家に行くよう伝え回った。そうしている内に森から火の粉が降り、森に近い民家が燃え始めているのに気付いた。このままだと危険だと思い、僕も族長の家に向かおうとした時だった。村の入口の方が急に騒がしくなったので見に行くことにした。しかし、見に行ったことに僕は後悔した。

おそらく野盗と思われる男たちが村に入ってきていたからだ。数ははっきりとはわからないが、かなりの人数がいるのが見えた。

野盗たちはそれぞれ叫んでいた。

「皆殺しにしろ!」

「いや女、子供は生きて捕まえろ!」

「男は火あぶりにして殺せ!」

など、とても聞いていられないようなことばかりだ。

しかし、入ってきた野盗たちに自警団の腕章をつけた雉族が立ちふさがる。

「この村で好き勝手はさせん」

「お前たちこそ全員殺してやる」

「一人は生きたまま捕まえろ。情報を引き出すために必要だ」

その姿は鬼気迫るものがあった。

とにかく僕はここにいても足手まといだと思い、来た道を引き返し族長の家に向かった。


僕はかなり疲れていた。ずっと走りっぱなしというのもそうだが、この緊急事態の中での精神的疲労が凄かった。

だがあと少しで族長の家というところで問題が起きる。誰かの悲鳴が聞こえたのだ、それもかなり近くから。僕は一瞬迷ったが、見に行くことにした。

声のした方に近づいてみる、すると雉族の女の子が野盗に襲われていた。

なぜここに野盗が?入り口で自警団と戦っていたはずなのに・・・。運よくすり抜けてきたのか?とにかく助けないと、いや僕にできるのか?人を殺すことになるのに?僕は自問自答を繰り返すが、答えが出ず家の陰から出られずにいた。こんな時ローヤルさんならあの時のようにすぐに助けられるのに・・・。

その時、カウに言われたことを思い出した。

「今度はきみが誰かを護ればいい」

僕は気づくと家の陰から飛び出していた。


「やめろ」

僕は野盗に向かって叫ぶ。

すこし声は上ずっていたかもしれない。でも今の僕にはそんなこと関係なかった。

野盗がこちらに気を取られた隙に女の子が走ってくる。僕は女の子に後ろに隠れているよう伝える。

「おいおい、人の獲物を横取りはよくないなぁ。俺が先に見つけたんだぞ?てか、お前見ない顔だな。俺たちの仲間か?」

男はにやにやと気持ち悪い笑顔で話してくる。

「お前たちなんかと仲間なわけないだろ」

僕は余裕がなく焦って答える。

すると男はさらに笑顔になる。

「なぁーんだ。それはよかった。どんな理由であれ、仲間同士の殺し合いは禁止されているんだ。でもお前は殺しても問題ないな」

男は殺せることを喜んでいるようだった。そしてハッキリとこんな人間と分かり合うことは無理なことを感じ、僕は刀を抜く・・・はずだった。

ところが稽古で使っていた為、刀が抜けないよう紐で縛ったままなことに気づいた。

「あーなんだそれ?抜けないようになってるじゃないか。そりゃ子供が持ったら危ないからな。親の物を勝手に持ち出したら駄目じゃないか。くっくっく」

男はバカにしたように笑っていた。

しかし、僕にとっては逆に良かった。鞘のままだったら殺してしまう可能性が少ないからだ。だから僕はそのまま構えた。

「本気か?そんなんで戦おうだなんて。まぁいい面倒くさいからもう殺すわ」

男も構えをとる。

僕は初めて本気で殺しにくる相手を目の前にした。しかし、男にはあまり恐怖を感じなかった。それは普段稽古しているローヤルの殺気が凄まじく、それに比べると全くといっていいほど感じなかった。そのことが僕をさらに冷静にさせた。

僕が構えたまま動かないことに男は痺れを切らしたようで一直線に向かってくる。その動きはまるでスローモーションのように遅かった。普段どれほどの人と稽古をしているのかがその時わかった。

僕は冷静に男の攻撃を避け、首元に後ろから刀を振り下ろす。男は防御も出来ず僕の攻撃をくらい地面に倒れた後、男は動かない。殺してしまったのかと不安になったが、どうやら気を失っているだけのようで安心した。しかし、この時僕の鼓動はこれ以上ないくらい速かった。

「や、やれた・・・僕は強くなっているのか・・・」

実感なく独り呟く。数秒立ち止まっていただろうか・・・僕は女の子のことを思い出し辺りを見渡す。どうやら家の陰に隠れていたようだ。女の子を再び族長の家に連れて行こうとする。

しかし、気を失っているとはいえこのまま野盗を放置していいのか悩んだ。が、すぐには目を覚まさないだろうと思いその場を離れた。話しを聞くと避難の途中で親とはぐれてしまったらしい。

親が族長の家にいてくれと思いながら向かう。


到着して家の中に入ると族長が声をかけてくる。

「よかった、きみも無事だったか。その子は・・・確か母親がさっき家に来ていたはずだ。ちょっと待っていてくれ」

そういうと族長は家の奥に行って母親を連れてきてくれて再会できた。母親と女の子にとても感謝されたことがなにより嬉しかった。

すると後ろから女性に声をかけられる。


「桃太郎さん無事だったんですね」

それはメリーダだった。無事に会えたことに安心しているようだ。


「あ、メリーダさんこそ無事でよかったです」

僕は思ったことを言った。

でも、ごめんメリーダ。僕はきみの顔を見るまで完全に忘れていたよ。

けど、それは黙っておこう。

最後までお読みいただきありがとうございます。


コメントやブックマークをしていただけると嬉しいです。


何卒、宜しくお願いします!

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