永い夜の始まり
村に滞在して6日が経った。
今日もケーンケーンと鳴く声が遠くから聞こえてくる。
これは雉族特有の鳴き声であり、なにかしらの問題が起きた時の合図でもある。
最初は驚いたが毎日聞こえるので慣れてきた。ほんとは慣れるべきことではないが・・・。
そして僕は相変わらず素振りを毎日続けていた。それに加えてローヤルとの稽古も始まったが、手を抜いてくれるわけもなくボロボロにされている。
ほどなくしてカウ率いる村の自警団が戻ってくる。
それに気づいたローヤルは声をかける。
「カウ、状況はどうだった?」
「いつも通りボヤがあっただけで大きな問題はない」
「ほんとに毎日起きているな」
「あぁそれが不気味だ。それに毎回燃えている規模がほとんど同じくらいなんだ」
「というと?」
「普通燃える範囲や火の規模なんてまちまちだろ?ほんとに自然に燃えているのなら」
「誰かの仕業の可能性が高いのか」
「そう思っているが、ただどこにも誰かがいた痕跡が見つからないから確証が持てないでいる。とにかく今は見回りを続けるしかないかな」
どうやらまだ問題解決には至らなさそうだった。
「ところできみたちの稽古はどんな様子かな?」
「頑張ってはいるが戦えるまでしばらくかかりそうだ。しかし、いつどうなるかわからないからなるべく早めに仕上げようとは思っている」
二人が見る先には僕が地面に倒れている。あまり見ないでほしいものだ。
「確かにまだ時間がかかりそうだね。まぁ一段落したら家に来てくれ。みんなで夕食にしようじゃないか。もちろん彼女は連れてきてくれよ?」
カウはメリーダを見る。視線に気づいているはずなのに、メリーダは全く見ようとはしなかった。
「あぁわかった。終わったら行くよ」
ローヤルもそこには特に触れることなく答え、こちらに戻ってくる。
「もう夕食ですか?僕お腹減りました」
「用意してくれるそうだ。稽古が終わったら行こう」
「それじゃ支度しますね」
僕は立ち上がりそそくさとその場を離れようとする。が、ローヤルが許すはずもなかった。
「どこに行く?まだ稽古が終わってないだろ。あと100本は俺と打ち合うぞ」
その言葉に僕は死を覚悟した。
やっと地獄の稽古が終わり、カウの家に到着した。
すでに人数分の夕食が用意されていた。
「きみたち随分遅いな。一体どれだけ稽古しているんだ」
その言葉に僕だけは激しく同意したが、ローヤルはあまりピンときていなかった。
「いやかなり早いだろ。稽古だってまだ途中なのに来てやったんだ」
まだ途中?僕はその言葉に戦慄した。
「そんなことより彼女はどうした?」
カウはそわそわした様子で聞いてくる。
「メリーダはいつものとこで食べるそうだ。それより今日はいつにもまして豪華だな。これなんかうまそうだ」
ローヤルは話しながら料理に手を伸ばす。しかし、カウは皿を持ち上げ遠ざける。
「おい、彼女を連れてきてくれって言っただろ!これらは彼女の為に用意したんだ。きみたちなんてそっちのパンだけで十分だろ」
テーブルの端には申し訳なさそうに小さいパンが二つだけあった。それらを一瞥した後、ローヤルは皿を分捕る。
「あれだけで足りるわけないだろ。それにメリーダは来ないんだから俺たちで食う。
あとお前嫌われてるんだから諦めろ」
「そんなわけないだろ。ちょっと恥ずかしがっているだけに違いない」
なぜそう思えるのか不思議だった。この村に来てからメリーダは族長の家に泊っている。もっと言えば食事も族長の家族としており、この家に来たことさえないのだから。
食事が終わってからローヤルが話しかける。
「カウ、明日で一週間経つぞ。どうする?」
カウの顔は明らかに迷っていた。
「旅に同行するべきなのはわかっているが、今の状況で村を離れるわけにもいかないのが正直なところだ」
「確かにその気持ちはわかる。しかし、原因もわからない以上解決しようがないだろ」
「それはそうだな。明日一度族長に相談してみるよ。だから明日の昼間にまた話そう」
「わかった。いい返事を期待してるぞ。
さ、俺はもう寝るかな。明日も朝から稽古するからな。お前も早く寝ろよ」
ローヤルはそう言い残して部屋を出ていく。
カウと二人きりになったのだが、僕は正直気まずかった。
なぜならこの人からはあまり好かれていないような気がしていた。厳密に言うと、僕が【桃太郎】であることに納得がいっていない感じだ。
そんなことで特に話すことも見つからないので早めに寝ようと席を立つ。
「僕もそろそろ寝ま・・・」
「すこし話をしたいがいいかな?」
「ひゃい、・・・いいです」
僕は突然のことに驚き、変な返事をしてしまった。
しかし、カウは笑うどころかいつもとは違う真剣な表情をしていた。
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