犬 ローヤル・マリクタイ②
「まずこの後は雉の奴に会いに行く。
まぁ癖があるやつだが頼りになるから必要だろう」
ローヤルは胡坐をかきながら話す。
「やはりそれが一番ですよね」
メリーダも頷く。
僕もわかったふりをして頷く。
「まずは出発の準備をするのと・・・」
ローヤルは僕に視線を向ける。
「お前を鍛錬しなくてはいけないな」
僕はドキッとした。
どう考えてもこの人は厳しいに決まっている。
まずそれに耐えられるか不安だ。
「そんな心配しなくていい。
まずは基礎から叩き込む。
とりあえず毎日素振り一万回からだな」
感覚バグっているだろ。
一万回もやっていたら他に何もできないぞ。
「いやいきなり一万回は・・・」
「お前強くなりたいんだろ?」
僕は黙って頷く。
「いいか?お前が強くなるまで俺が守ってやる。
だが相手の数が多くなればそれも難しくなる。
その時は自分で身を守るしかない。
そうしないとお前死ぬぞ」
ローヤルの声は低く冷たかった。
それは多くの戦いを経験してきたからこその言葉だった。
僕は背筋が冷たくなり、鼓動が早くなる。
【死】が現実として起こりえることに改めて気づかされた。
部屋に重い空気が流れる。
「そ、それに関してはこれからローヤルさんが鍛えてくれますから大丈夫です。
ね、ローヤルさん?」
雰囲気を変えようとメリーダがわざと明るく振舞う。
「当たり前だろ。
俺が鍛えればこの世界で二番目に強くなれるさ。
一番はもちろん俺だがな」
ローヤルは胸を張って答える。
僕は前回鍛えた桃太郎死んでない?と思ったが、言ったら大変なことになるのがわかるので黙っていた。
僕だってそれくらいの空気は読めるさ。
だからとりあえず作り笑いをしておいた。
「それじゃ俺は出発の準備をしてくる。
お前たちも村で必要な物を用意してくれ。
店に行けば最低限のものは手に入るだろう。
準備が終わったら村の入り口に来てくれ」
そういうとローヤルは部屋を出ていく。
「私たちも行きましょう」
僕はメリーダと一緒に部屋を出た。
メリーダはこの村では有名なのか、よく挨拶をされた。
挨拶してくる全員が僕のことを聞き、桃太郎と伝えると全員が怪訝な顔をした。
なかには冗談だと思い、メリーダが冗談を言うようになったと驚く人までいたくらいだ。
それは僕が子供だからなのか、弱そうだからなのか、それとも両方か・・・。
しかし、本人を前にして失礼にもほどがある。
全員があまりに同じ反応の為、メリーダも途中から不機嫌になっていた。
「桃太郎様だって言っているのに全員疑って失礼だと思いません?」
僕の為に怒ってくれているなんてやっぱりこの人はいい人だ。
「誰が鑑定したと思っているのかしら」
前言撤回です。
残念ながら僕の為ではありませんでした。
しかし、ここまで自分の鑑定に自信をもっているということは、やっぱり僕は桃太郎で間違いないのだろう。
それは嬉しいような、悲しいような複雑な気持ちだった。
旅の準備を終え、村の入口まで向かう。
ローヤルはすでに待っていて、その背中には身長ほどの大剣を背負っていた。
また傍らにはとても大きな荷物がある。
「物凄い量ですね。
そんなに必要な物があるのですか?」
メリーダは質問する。
「あぁ雉のやつに会うにはこれくらい必要だからな」
雉のことを一番知っている人がそう言っているのだから必要なのだろう。
「ところで次の場所までどれくらいかかりますか?」
僕は荷物より一番気になることを聞いた。
「だいたい一か月くらいかな。
その間、毎日素振り一万回できるな」
ローヤルは嬉々として目を光らせた。
それ本気だったんですね・・・。
最後までお読みいただきありがとうございます。
コメントやブックマークをしていただけると嬉しいです。
何卒、宜しくお願いします!




