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貴女が好き

ここまでも、これからも。

全部別人の話です。



貴女が好き。


だから羨む。

いいなぁ。

ずっと一緒にいられるの、いいなぁ。

私が違ったら、私がいれたのかなぁ。

私がそうだったら、私が選ばれたのかなぁ。


なんて卑屈になる。


「私さ、貴方が1番話しやすいんだよね。なんかさ、雰囲気? が私にあってるって感じ」


そんなこと言うから、本気にしたのに。


高校から大学まで、貴女はヒロイックだった。

恋人を見つけるのも早いし、就職を決めるのも1番。

破局も1番多いけど、ゴールインも1番だった。


「今の彼氏さ、なーんか似てるんだよ。貴方に」


なんて言うから、本気にしちゃったのに。


その人とは一年で別れて。

馬鹿みたいじゃない一瞬でも喜んだ私が。


残酷な一言だったね。

私じゃないのに、私みたいなんて。


ひどいよね。

すぐ別れたのに、私みたいなんて。


なのに貴女が笑ってくれるのが嬉しくて、傍を離れることができない。


貴女の美しさを見たくて、結婚式も断れない。


いらないよ、貴女の隣は!


そう思いながらたくさん写真を撮る。


インスタはそいつの影でいっぱい。

におわせてないのにいることがわかる。


存在が邪魔!


でも貴女の住む家を見たいから新築には遊びに行った。


貴女の住む環境にいられることが嬉しかった。


そんなことが私は嬉しかったの!

なんてひどい執着。


あの空間に貴女だけがいればよかったのに!

綺麗に片付いたそのどこからもどこからも、気配がある。


貴女のではない気配を感じる。


「今日さ、旦那、休日出勤でしかも泊まりだから。久々にゆっくりできるわぁ。夜までいるでしょ? 朝まででもいいよ」


そういうことを言うから!


私は貴女に選ばれなかったのに選ばれた気になってしまう!


嫌いなやつからお情けでもらったようなラッキーに喜んでしまう!


でも貴女といられることがこの上なく嬉しい!


‥‥嬉しくて仕方ないの。


おしゃれな料理をテキパキと作る器用な貴女が好き。

手伝うと明るい笑顔を向けてくれる貴女が好き。


貴女を独り占めできるこの瞬間が何より好き。

久々のゆっくりに私を選んでくれる貴女が1番好き。


泣きたいくらい。

泣きたいくらい。


貴女が、好き。


だからこのまま、できればこの時間が永遠になりますように。


貴女は開ける予定のなかったワインを開けてくれる。

イタズラに笑いながら、無意識に私の心を惹き寄せる。


「あっ」


メッセージへ送られる視線が私の心をズタズタにしていく。


「旦那帰ってきちゃうって。ごめん!」


私は迷う。今なら終電に間に合う。間に合ってしまう。


「後で送るからさぁ、もうちょっと飲もうよ」


貴女の甘えを、私に断れるはずがない。


でも貴女はぐでんぐでんで。

2人だけの間こんなに無防備になってくれる。


この瞬間が、愛しい。


だけど嫌いなやつから貰ったお金で乗るタクシーは虚しい。


眠る貴女のかわりに頭を下げるお前が憎い。


悔しい。悔しい。悔しい。


私から貴女を奪っていくものが全て憎い。


翌朝、メッセージが届く。


『昨日はごめんね! また誘っていい? やっぱ、貴方が1番話しやすいんだ』


その一言で、腫れたまぶたが開いていく。



悔しい。


嬉しい。


ひどい。


嬉しい。



貴女は知らずに私の心を引き裂いて、知らずにあっさり治してしまう。


太陽みたいな言葉で私を強烈に惹き寄せる。


当たり前につき放されることがわかっているのに、私は簡単に惹き寄せられてしまう。


『昨日はありがとう。楽しかったよ。また誘って!』


これしか言えない。

これしか、出せない。



貴女が好き。貴女が好き。


貴女が、好き。



貴女が選んでくれる、私でよかった。

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