コントロールカラー
「あなたにしかこんなこと頼めないよ」
くだらない秘密を共有する唇が知らない色をしてる。
いたずらに微笑む頬が知らない鮮度を保つ。
「全然、こんなことならいつでも声かけてよ」
いつもみたいに。
いつもみたいに。
ちゃんと違和感なく言えただろうか。
大丈夫。彼女は私に興味がないから。少しの変化なんかに気づかない。
「いつもごめんね。本当にありがとう。ほんと、助かる」
そうやって申し訳ないふりをする。
でも決して美しさは忘れない。
この前まで知らなかった賢しさ。
それを披露するのは、私以外にして。
「‥‥やっぱり、悪いかな」
そうやって図々しさに気がついたふりをする。
貴女は知ってるね。微笑まれ方を。
そんなことするなら、逃さない。
「‥‥ほんと? なら、今日は一緒にやってくれると助かるかも」
「え‥‥っ」
貴女の手のひらから飛び降りた私を見て、目を丸くする。
その表情はとても好き。私だけを見てる。
これだけが、唯一。私にとっては、唯一。
貴女はこんなことももう忘れちゃったんだね。
私、貴女に逆らわないことないよ。知ってたはずなのに。
でも、警戒を忘れた貴女にしか通用しない。
いつもはできない。
貴女からは綺麗な色しただけの嫌悪感が滲み出る。
それをね、確かめたかったんだ。
私にできる唯一は、その色だけ。
唯一コントロールできる色。
困惑、不気味さ、これ以上行くと、だめなのを知ってる。
捕まえた魚を逃すために手を開く。
「もしかして、この後予定あるとか?」
「う、ん。そうなんだ。ほんっと、ごめん!」
知らない揺れ方をする髪の毛先は、整いすぎている。
「そっか」
なんて言うか迷う。
なんて言えばいいのか、迷う。
『いいよ。けどこれ、毎回1人はきついかも』
逃げないでほしい。
行かないでほしい。
私から。
でも、それは言わない。
私は貴女とのこの2人きりを壊したくない。
ここには他の誰もいらない。
貴女は私に振り返らない。見向きもしない。
だから、こうやって捕まえては逃すの繰り返し。
こんなつまんない鬼ごっこに、貴女は嫌悪してる。綺麗なだけの色で。
だから、正しい言葉を。
「じゃあ、仕方ないな。また来週。委員会で」
「ごめんね、ほんとに。うん、また来週!」
知らない色を身につけるために行く。
遠ざかる足音の先が恨めしかった。
こんな感じのばかりです。




